マーケティングスキルは、場数を踏んで伸ばす
安成:では、セッションの後半に入ります。前半の内容を受けて、聴講者の方からの質問に答えていきます。まずは「自分の仕事を、わかりやすく社内外に伝えるスキルを伸ばす方法を知りたい」です。
塩見:場数が必要です。マーケターは日々、ターゲットに伝えたいことを発信し、反応をいただくことを仕事にしています。つまり、日々の業務が自分のプレゼン力に直結するんです。ラッキーだと受けとめ、仕事の中で磨いていくといいですね。
安成:この質問には、「自分のキャリアをマーケティングする」ためのヒントが詰まっていますね。「わかってくれない」ではなく、「どうやったら伝わるか?」を考えて、何度もトライすることが、突破口になると思います。
実は私も、伝えることが苦手なほうです。でも、伝えたいことはたくさんあります。どうすればうまく伝わるかを考えながら、時に失敗をしつつ、何百回も取材を繰り返し、仕事の面白さや媒体の魅力を何度も伝えていくことで、周りの方々にご理解いただけていると思います。塩見さんがおっしゃる通り、場数を踏むことが大切だと感じました。
マーケターの専門性とマネジメント力。両方を選んでもよい
安成:続いては、「マーケターの専門性を深めるべきか、経営やマネジメント領域までスキルを広げるべきか」という質問です。中堅キャリアの方は、悩むところですね。マネジメントの仕事は、やってみないと向き不向きがわからない傾向もありますが、まずは「自分の方向性を定めること」でしょうか。
塩見:永遠のテーマですが、僕の場合、なるべく2つが同時に手に入る方法を考えてきました。仮にマーケティング専門役員を目指したいのならば、経営の知識も必要です。つまり、どちらの知識も経験も欲しい。マーケティングの仕事と経営の仕事があったとき、どちらか1つだけを100%やるのではなく、両方やってみる。普通にやれば50%+50%ですが、うまくやれば55%+55%になるかもしれません。同じ時間と情熱を費やすのであれば、うまくいけば総量が増えるやり方を探すのがよいと思います。
すると、「両方できるのか?」と聞かれますが、できるときはできる。二刀流のスポーツ選手が証明してくれていますし、「マーケティングと経営、両方やれなくはないでしょ」のほうが、エキサイティングでおもしろいですよね。
安成:「どちらかを選ぶのではなく、両方できる方法を考える」ですね。では、最後の質問です。塩見さんにとって、マーケティングとは何でしょうか。
塩見:わからないです。難しすぎます。しいて言えば、「自分の中の定義が変わっていくもの」でしょうか。若い頃は集客やプロモーションの意味で捉えていましたが、今は広義な意味で捉えています。
安成:おっしゃる通り、人によってマーケティングの定義が異なりますよね。経営そのものをマーケティングと語る方もいらっしゃいます。
塩見:実際に、私の中でも、経営とマーケティングの距離は近づいています。経営の立場から従業員や株主をマーケティングすると言えるし、経済活動全般がマーケティングに着地するとも感じます。
また、フレームワークの3C、「自分・競合・市場」を使って「自分のキャリアをマーケティングする」と、キャリア戦略がもっと明確になります。年を取れば取るほど、マーケティングのフレームワークは、あらゆるところで使えると実感します。
安成:マクロとミクロの目を持ち、視野を広くして「マーケティングとは何か?」を考えたいですね。専門領域のスキルも磨きつつ、マーケティングを大きく解釈していくと、チャレンジの幅も広がるのではないかと感じました。ぜひ、キャリアの構築にMarketoユーザー会のような機会も、活用していただきたいです。本日は、ありがとうございました。