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会員ロイヤル化は「己を知る」ことから始まる 心地よい体験を届けるためのデータ分析4ステップ

 多くの企業では認知から購入を促す施策がデジタルマーケティングの主軸となってきた。しかし、ターゲットとなる人口には限りがあり、新規顧客獲得やそれに基づいたビジネスの成長には限界が迫っている。そのなかロケーションバリューでは、「グロースマーケティング」という手法を提唱。その実現のために新たに2つソリューションの提供を開始し、会員のロイヤル化に向けた支援を大幅に強化した。本稿では、同社の代表取締役である河野氏から、ロイヤル化への理想的なパターンの見つける方法とそれを支えるデータ活用についてうかがった。

新規獲得の段階から「ロイヤル化」を見据える

――近年多くの企業では、ユーザー行動データを使い、認知から購入を促す施策がデジタルマーケティングの主軸となってきました。しかし、ターゲットとなる人口には限りがあり、新規顧客獲得やそれに基づいたビジネスの成長が困難になっている企業も少なくありません。御社では今後のデジタルマーケティングがどのように変化するとお考えでしょうか。

河野:簡単にいいますと、新規顧客獲得に偏重した戦略では立ち行かなくなり、「顧客をいかにロイヤル化するか」がより重要になると考えています。

河野:弊社がその手段として考えるのは、一人のユーザーが新たに顧客になってからロイヤルカスタマーになるまでの過程を1つのフローとして把握することです。企業がその理想的なパターンを見つけられれば、その流れに乗せることを前提とした各段階での軌道修正が可能になります。

――理想的なフローがどのようなものなのか、具体的な事例を基にご説明いただけますか?

河野:たとえば某飲食店では、ユーザーの行動データを分析したところ、年間売上でお店に貢献している顧客は、平日と週末との利用金額にほぼ差がなく、1週間を通じて恒常的に利用している方だとわかりました。そこでどのような利用をしている方なのか調査をしてみると、平日週末を問わず毎朝の食事に使っている方々ということが判明しました。

 当然このような利用者を増やせば、それがロイヤルカスタマーになり、さらに売上アップにつながります。そういった利用者がどんな方なのかをペルソナに落とし、そこへリーチするための広告はどのようなものか考える――というように、最初からロイヤルカスタマーになりそうな方にリーチする施策が、具体事例として実際に見えてきています

企業の段階に応じた使い分けが鍵

――なるほど。そのような戦略を進めるにあたって、現在の企業はどのような課題に直面しているとお考えですか。

河野:デジタルマーケティングにおいては、既に世界中で便利なツールが生み出されており、すべて導入すれば環境はきれいに整えられます。しかし、当然コストがかかります。そこで、その企業のステージを見極め、それに応じて段階的にツールを導入していくという判断が必要です。

 システムを構築しても明確に売上という数字で返ってくるのは、早くても1、2年後。本格的な導入に向け、経営層を説得するのにすこし苦労が必要なものです。そのため弊社では、現状で足りていない機能を補って、まずは成果を実感することが重要だと考えています。

コストをかけずにID統合ができる「Blue Base」

――御社では、ID統合基盤「Blue Base(ブルーベース)」とスマートフォン向けエンゲージメントSDK「Dear One(ディアワン)」を新たに開発し、11月に提供を開始しました。これまでのソリューションと合わせてどういった流れで活用が可能になるのか、ご紹介いただけますか。

河野:まず、デジタルマーケティングの流れを大まかに整理すると、データを貯め、それをユーザーのIDベースで整え、分析し、施策に使うという大きな4ステップがあると捉えています。今回開発したBlue Baseはデータの整理、Dear Oneは施策に使う部分に当たります。

河野:これまで弊社では、データ分析が大きなハードルになると着目し、それを解決するためのユーザー行動分析ツール「Amplitude(アンプリチュード)」を国内代理店として提供してきました。データ分析には、これまでは専門職の方を雇ったり、外注したりする必要がありましたが、それらを機械学習によって解決しているツールです。

 しかし、Amplitudeを活用するには、分析のために取り込むデータが整っている必要があります。一方、コストをかけるのは非常に難しい。データの整理とコストが課題の企業が多いということがわかりました。

 そこで、低コストでデータ整理を実施できるID統合基盤としてBlue Baseを開発しました。Amplitudeと一緒に利用いただくサービスとして、ほぼ費用無しで提供しています。

 既に簡易データ基盤をお持ちの企業は多いですが、リアル店舗のカード会員とECサイトの会員が別IDになっているという問題が起こっています。実際は同じ人なのに、別の人として扱っているのでは正しいデータ分析ができません。Blue Baseを使っていただくと、リアル店舗のカード会員とECサイトの会員といった異なるIDの上位概念になるIDを払い出すことができるため、一個人のIDとしてオンラインデータとオフラインデータを融合することができます。

Blue Baseでは、店舗会員・EC会員・アプリ会員など分断されている様々な顧客IDを「PID」を活用してIDを統合。アプリを利用(オンライン行動)したあとに、店頭で商品を購入(オフライン行動)したデータを一連のセッションとして管理することが可能になる
Blue Baseでは、店舗会員・EC会員・アプリ会員など分断されている様々な顧客IDを「PID」を活用してIDを統合。
アプリを利用(オンライン行動)したあとに、店頭で商品を購入(オフライン行動)したデータを
一連のセッションとして管理することが可能になる

行動をトリガーにメッセージを発信できる「Dear One」

河野:一方、Dear Oneは、企業公式アプリでメッセージを送れるソリューションです。大きな特徴は、ユーザーの行動をトリガーにしてリアルタイムにメッセージを表示できること。これにより、ユーザー行動分析の結果をより素早く、施策に利用することが可能になりました。

Dear Oneでは、アプリ利用者のアプリ内行動に即して最適なタイミングで伝えたいメッセージをリアルタイムに表示できる(左)。また、アプリ利用者の利用状況、行動分析をもとにプッシュ配信できる(右)
Dear Oneでは、アプリ利用者のアプリ内行動に即して最適なタイミングで伝えたいメッセージを
リアルタイムに表示できる(左)。また、アプリ利用者の利用状況、行動分析を基にプッシュ配信できる(右)

河野:たとえば、某飲食店では、アプリのトップ画面のバナーを1ヵ月の間に4回以上タップすると、その人の来店率が上がるという分析結果があります。従来のシステムでは、バナーを4回タップした人を月間データで見つけられたとしても、その方に実際にアプローチするのは翌月になってしまいます。

 それがDear Oneでは、1ヵ月の間に4回以上タップするという行動をトリガーに設定することで、実際にその行動が起きたとき、リアルタイムに広告やメッセージを表示できるようになりました。

 いずれのソリューションでも弊社が一番提供したい価値は、リテンションが高まるということ。なぜかというと、既存ユーザーの方々にとって心地よいコミュニケーションを提供できるということが一番だからです。わかりやすくいうと、東京在住、東京勤務の方に、北海道の店舗オープンのお知らせはいらない。そういったお知らせを続けていると、既存ユーザーに「コミュニケーションが心地よくない会社だ」という認識を潜在的に植え付けてしまうことになりかねません。

 弊社では、店舗で食事をするといったサービスに限らず、アプリの使い心地やメッセージングといった体験も含めた一連の流れをプロダクトだと捉えています。体験を含めたプロダクトをより良くする手法を「グロースマーケティング(Growth Marketing)」と呼んでおり、それをこれらのツールで支援できればと考えています。

社内の共感を得る「攻めのDX」を支援

――ユーザーにとって心地よいコミュニケーションを通じて、ロイヤルカスタマーを増やすということですね。システム面以外ではどのようなサポートをされているのでしょうか?

河野:データを整えるのもすべて機械がやってくれるというわけではなく、人間の手で行わなければならない作業は当然あります。そこで、データマーケティングのすべての工程で、人的支援も提供できる体制を整えました。それぞれの工程に応じ、クライアント企業内の必要な部署とやり取りをします

河野:DXには「攻めと守り」があるとよくいわれています。「守りのDX」は、人がやっていたことを自動化することでコスト削減になるもので、わかりやすく取り組みやすい。一方、弊社で提案するのは、新たなコストをかけて、それ以上のリターンを得る「攻めのDX」です。

 組織内の分断によってDXのための連携ができていない場合、マーケティング部のみならず、経営戦略部、もしくは経営層そのものに働きかけることもありますが、もっと攻めましょうと提案して共感を得ていくケースが多いです。

「なんとなく」をデータで証明できる

――最後に、今後の関係構築において、これらのソリューションをどのように活かそうというふうにお考えなのか、展望としてお聞かせください。

河野:今回ご紹介したデジタルマーケティングの4ステップをたくさんの企業様に味わっていただき、その先にいる生活者が心地よい体験を享受できる社会を目指したいです。

 付け加えると、私はそのなかでも「己を知る」をきちんとやるべきだと思っています。自分たちのファンがどんな人で、どう使ってくれているのかを知ってほしい。それがデータで読み取れるのだとしたら、こんなに幸せなことはありません。感覚だけで「なんとなく」理解していた利用者の実態をデータで証明できるという感覚を味わってほしいと思います。

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この記事の著者

水口 幹之(ミズグチ モトユキ)

ライター・インタビュアー。取材、インタビューを中心に記事を執筆している。 ビジネス、働き方改革、地域活性、教育、書籍紹介など幅広い領域に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/01/14 10:00 https://markezine.jp/article/detail/35076