社会課題×共通の悩み×自社の強みを重ね合わせた先に「パーパス」が見えてくる
自社のルーツでもある、お客さんとの対話に臨むチームメンバー。まずは今の自分たちができる最大限のおもてなしを行い、お客さんたちの価値を問いかけることから始めたのですが、どうやら少し、想定とは違うことが発生したようです。その理由は、ニュースなどでしか知らなかった「子ども食堂」という場所に対する、一方的な思い込みにあったのかもしれません。
今、「子ども食堂」のようなコミュニティは日本にたくさん存在します。そこで行われているのは決して、いわゆる経済的に困窮した家庭への支援だけではありませんし、それだけを目的にしてしまうと、困っている人も困っていない人も、誰もが足を運びにくくなってしまうという事態になりかねません。ですので、多くの子ども食堂は「子ども」がいる、もしくは「子ども」のために何かしたいという共通項があれば、誰もが利用できるという、地域の交流の場として機能していることが多いのです。
そこでは、小さい子どもがいるとゆっくりご飯も食べていられない、とか、なかなか外にも出かけられないので人と食事ができて楽しい、子どもが好き嫌いをして困っている、などといった声をたくさん聞くことができます。「マインドフルネス」という言葉がありますが、まさに前提や思い込みを手放し、その瞬間に没入することが、これら日常にあるニーズに気づく方法なのかもしれません。
そして日常に触れ、困りごとを聞くという体験と、自らの想いの原点となる経験に立ち戻りながら、「パーパス」について考えた結果、おぼろげながら見えてきたひとつの社会課題、それが「フードロス」というものでした。
「フードロス」とは、食べられるのに廃棄されたり、捨てられたりしてしまう食品にまつわる問題です。農林水産省によると、日本におけるフードロスは量にして年間約600万トンに上り、一人当たりに換算すると毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てていることに等しいということです。
これは、回りまわって食糧危機や飢餓問題につながる可能性が高く、生産や廃棄にかかるコストや排出されるCO2などの温室効果ガスを考えるとばかにできない問題です。いかにロス、つまり無駄を減らしていくかということが、ひとつの社会課題と考えられています。
「パーパス」は必ずしも社会課題をベースにしている必要はありませんが、それが単に自分たちのやりたいこと、実現したいことで終わらず、お客さんも含めた関わるすべての人たちの価値になることが求められるという性格上、個社を超えた、社会にとっての課題に挑むことと相性が良いのは間違いないでしょう。
子どもを想い、その成長のために「良質な栄養」を求める大人の気持ちは、世界のどこでも共通しています。そして、現代の親が抱えがちな「忙しさ」という共通の悩み、そして素材の味を活かし、大人も子どもも惹きつける「おいしさ」を作るプロであるという自社の強み。これらを重ね合わせた先にある、社会にとっての共有価値「パーパス(大義)」とは何か。
それはお客さんに共感され、応援され、その行動を変えるきっかけとなりうるのか。次回、いよいよパーパスドリブンな新規事業づくりが本格的に動き出していきます。