365日連続のInstagramライブ行動で本気度を伝え、人を巻き込む
――ブランド立ち上げ時期に、大変だったことは?
洋服の製造体制を整えるのに苦労しました。ツテが何もなかったので、縫製のパートナー探しが難航したのです。知り合いに紹介してもらい、最初の生産は中国の工場と直接やりとりをして生産パートナーを探すなどしました。マーケティングについても、思いつく限りの施策をすべてやっていました。今思うと遠回りも多かったのですが、実績がなかった私たちを仕事相手として信頼してもらうためには、とにかく行動して、本気度、熱量を示すしかないと考えていました。たとえばお正月もお盆も休みなく、365日続けてきたInstagramライブの配信は、「ブランドを大きくしていく覚悟がある」と関心を持っていただき、協力を得られるポイントになりました。現在は、お客様が増えたおかげもあり、安定した供給ができるようになっています。次は、商品のバリエーションを増やすこと、そしてブランドの成長に応じた適切な在庫投入に注力していきます。
――2020年9月、COHINAは東京ガールズコレクション(TGC)にも登場しましたね。
TGCのステージは、私たち以上にお客様が喜んでくださり、それがとても嬉しかったです。一緒にブランドを育ててくださっている方にとっては、「こんなに大きくなって。頑張ったね」と、まるで親戚の子どもを見守っている感覚になるのだと思います。「ステージを見ながら泣きました」とコメントをくださる方もたくさんいて、お客様に恵まれたなと実感します。COHINAはD2Cブランドに分類されますが、一般的には製造業の初期は利益を我慢し、体力勝負です。その段階でお客様に自分たちのメッセージをしっかり発信し、理解していただくこと、関係性の基盤を作っていくことがポイントだと思います。
また、TGCは2005年から続く日本最大級のファッションショーです。そのような場所に、いわゆる「不特定多数の大衆向け」のブランドではない私たちが立てていることは、世の中へ新しい価値観を提唱し、時代の動きを作っている感覚がありました。COHINAのコンセプトは、「あなたに陽が当たる服」。私たちがこだわり続けるのは、「かわいい洋服」「サイズが合って、お気に入りの洋服が選べる」など、まず服としての価値を提供することです。小柄であることのコンプレックスを刺激し、その解消手段として売っていくのではなく、純粋に服が楽しめる喜びを知ってもらうブランドでありたいと常に思っています。
オンオフ両方で認知を広げる
――ブランドを作っていく上で大切にしていることを教えてください。
大前提は、お客様を大事にし、お客様を見続けることです。お客様と一緒に喜び合えることは何より嬉しいですし、Googleで営業をしていた時代、上司から「お客様はどうしたいのか?」を問われ続けたことで身についた姿勢でもあります。
COHINAは継続率が50%程度とリピーターが多いブランドなので、そのことを意識し、いくつかの指標を追っています。1つは顧客満足度です。Instagramライブ配信の継続はもちろん、ロイヤルユーザー限定のライブ配信では、関係性があるからこそ盛り上がるトークをするなど、お客様とのつながりを大切にした施策を引き続き行っていきます。また、COHINAとお付き合いいただく中で、一度でも「感動した」と感じてくださったお客様は、その後も高い好感度を持ち続けてくださいます。そのため「このブランドを人に勧めたいと思ってくれただろうか?」といったNPSスコアもKPIとして重視しています。今のスコアは、20から30を超えていて、高い水準を保てています。
これからブランドをより大きくしていく上で、新しいお客様との出会いも必要です。2020年11月には初めてのテレビCMを放映しました。YouTube個人チャンネル(「おちびチャンネル」)の運営にも力を入れています。今まではInstagramが中心でしたが、それだけでは出会えない方もいらっしゃいますし、接触媒体の拡大は、オンラインマーケティング中心のブランドには欠かせません。これまでCOHINAは自社ポップアップ以外の実店舗を持たず、自社ECとSNSなどオンラインのみで認知を広げてきましたが、現在はオンラインとオフライン両方のマーケティング施策を考えるフェーズに入りつつあると考えています。
しかしお客様を「マーケティングの対象」とは見ません。1人の人が存在していると認識し、ビジネスを続けることは、自分のコアにしたいです。私にとって、お客様は友達のような存在。友達と一緒にブランドを作り、友達がフィードバックしてくれて、一緒に良くしていくような感覚でやってきました。COHINAが大きくなることは、友達や仲間が増えていくことと同じです。友達を裏切ることって、絶対にしませんよね。だから、お客様をがっかりさせたくない。もし、がっかりさせてしまったとしても、挽回できるように頑張りたい。ブランドは1人の人格を持っていますから、その発信やふるまいが誰かを攻撃したり、傷つけたりすることは避けたいですし、施策の1つひとつをお客様がどう感じるか考えることを、忘れないように心がけたいです。ブランドの規模が大きくなるにつれ、見えにくくなってしまう部分ですが、「優先順位を間違えない、魂を売っちゃだめだぞ」と自分自身に言い聞かせています。