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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

マーケティングの本質を探る

マーケティングの本質は市場創造、そのために欠かせないカテゴリーの再定義とは


再定義のための2つの手法

 1つ目に紹介するのは、生活や仕事の中の「(1)達成したい事柄」と「(2)様々なモーメントでのそのブランドが使われる可能性」を大きく捉える手法だ。具体的には、ユーザーの顕在化されたインサイトのうち、そのカテゴリーでは解決できないと思われているものを、自社のブランドで解決できるかどうか考えてみるとよい。

 例を挙げてみる。「お金持ちになりたいが、成金とは思われたくない」という顕在化されたインサイトがあったとする。そのインサイトを清涼飲料水で解決できるか? と考えてみよう。たとえば「海外セレブがよく飲んでいる、ミネラルが通常の10倍の水」を開発して、その水をさりげなく持っていること自体がセレブであると思われるようなベネフィットを提供する。このように考えると、清涼飲料水のカテゴリーの価値を「セレブになったような気分にさせてくれる飲料水カテゴリー」と再定義できそうな気がしてくるのではないだろうか。もちろん成金とは思われたくないというインサイトがあるが故に、実際のコピーやビジュアル、もしくはインフルエンサー施策などは工夫する必要があるし、飲料水カテゴリーとして重視される「喉を潤す」ことから離れすぎてはいけない。

 2つ目は、ブランドが持つベネフィットを、カテゴリーを飛び越えて考えられるだけ考えてみることだ。清涼飲料水で何ができるかを50個ぐらい考えてみてはどうだろう。喉を潤すものだけでなく、パーティーを盛り上げるもの、人にいたずらするもの、何かを濡らしたり、浸したりするもの、人を助けるもの、などなど。特にそれぞれのベネフィットが提供される場面にどんな人がいるのかをイメージすると、情緒的なベネフィットが相まってより関与度が高い価値を創造できる(たとえばパーティーを盛り上げるものであれば、周りに家族がいるのか会社の同僚がいるのかで、関与度や情緒的なベネフィットはより具体的になるはずだ)。こちらは、カテゴリーとして重要視される「喉を潤す」ことから離れすぎるリスクを秘めており、ニッチな再定義になりかねないので、注意が必要だ。

 なお、この新しい定義は現状のブランドから大きく離れすぎずに、現状のブランド自体を強めるものである必要がある。そうでないと、そのブランドの独自性にならないし、ひいてはブランドの売上は上がらない。つまり、そもそものブランドの定義がしっかりとなされていなければ、再定義は上手くいかない

 たとえばトヨタがシルバーアクセサリーブランドのクロムハーツとコラボした車を販売すると、ユーザーはどう思うだろうか? ブランドが本来ある定義を強めず、ただ差別化を目指して他と違うことだけをしようとすると、ユーザーには違和感ばかりが残る。再定義では、カテゴリーでユーザーが重視している点を変えずに期待をシフトさせると共に、そのブランドの定義を強めてアップグレードし、カテゴリーを拡大していく必要がある。Google Play Musicで、音声でそのまま検索する機能を打ち出したように。

まとめ

 このように、マーケティングの定義を「狭義の広告宣伝」と捉えず、ビジネスを新たに創出するために、ブランドそしてカテゴリーを再定義し、消費者のカテゴリーへの期待をリフレッシュする。すべてではないが、これこそが市場創造=カテゴリーの拡大、新しいカテゴリーの創出、新しい価値の提供につながる「広義のマーケティング」なのである。

アドビ 里村氏による連載「マーケティングの本質を探る」の過去記事はこちらから
【第1回】消費者の無意識に入り込み、行動を変えたブランドが市場を制する
【第2回】消費者の無意識に残り続け、第一想起をとれるブランドが大切にしている「カテゴリー理解」とは

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この記事の著者

里村 明洋(サトムラ アキヒロ)

アドビ株式会社マーケティング本部 常務執行役員/シニアディレクター。兵庫県尼崎市出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。新卒でP&Gに入社。営業からマーケティングまでP&Gとしては異色のキャリアを築き、日本とシンガポールにて営業から営業戦略やブランド戦略、コンセプトや広告開発などに従事。Googleに転...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/24 13:40 https://markezine.jp/article/detail/35474

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