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「withファン」レポート

店舗は“売る”から体験提供、“個客理解”の場へ PARCOが取り組むOMOとは

渋谷PARCO・心斎橋PARCO オフラインをさらにデジタル化する試み

唐笠:次に、渋谷PARCOの店頭のデジタル活用の事例を紹介したいと思います。2019年11月に渋谷PARCOは「世界へ発信する唯一無二の次世代型商業施設」というコンセプトでリニューアルしました。今回、約180の個性あふれる魅力的なショップに出店いただいています。特に大きな話題となった「ニンテンドートーキョー」「ポケモンセンター」や、国内外の高感度なファッションブランドたち、地下の飲食フロア「カオスキッチン」などエッジの効いたリーシングに注目が集まりました。

 デジタル・テクノロジー面でも新しい取り組みを数々導入しています。まず、電子化したレシートをスマホアプリに届ける「電子レシート」です。

 対象ショップはまだ多くないのですが、今後増えていく予定です。電子レシートによって個客の詳細な購買情報を収集し、AIを使って分析・学習させることで、お客様それぞれの好みにマッチするショップや商品・サービス・コンテンツ情報を配信する新たな仕組みを開発する予定です。

 次はECを併設した“オムニチャネル型売り場”「PARCO CUBE」です。渋谷PARCOの5階、約130坪のエリアに11店舗の小型ショップに出店いただいています。それぞれが小型のショップですので、店頭では戦略アイテムや限定商品を中心に揃えてもらい、その他通常商品や在庫の奥行はECで在庫管理し、PARCO ONLINE STOREで販売してもらうという、従来の売場より小さなスペース・在庫でお客様の求める商品に出会える店舗ゾーンにチャレンジしています。

 共有部やショップ内に設置されたサイネージを使ってお客様に商品を探したり選んだりしてもらうことができ、お客様ご自身のスマホとサイネージを連携させ、選んだ商品をECカート内に保存することもできます。

徳力:まるでSFのようですね(笑)。しかしこれ、店頭で売上が上がらないしくみとも言えますが、テナント側から好意的にとらえられるのですか。

唐笠:リアルの場でフロアのスペースをお貸しするのと同じように、デジタルの売り場もお貸しし、活用していただくイメージです。「オンライン~オフラインをシームレスに行き来してお買い物するお客様」に対応できるプラットフォームを提供しているわけです。

徳力:ショッピングセンターはそこまでやる必要があるの? と驚いてしまいました。

唐笠:次に、XRを活用した「SHIBUYA XR SHOWCASE」です。3DのクリエイティブコンテンツをARゴーグルや専用スマホアプリを使い、あたかもその場にあるように体験いただけます。非常に多くの方に興味をもっていただいています。

 先日(2020年11月)オープンした心斎橋PARCOのオープンでも、3Dスキャンカメラを使った360°3Dコンテンツ「バーチャルツアー」を実施し、オンラインで心斎橋PARCOを体感できる取り組みを行いました(2020年12月で終了)。

 渋谷PARCO1階では、実証実験型のショールーム「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE」を展開しています。世に出る前のユニークなデジタル最新製品やアイデアを展示し、天井のカメラで製品に関心をもって触れた人数や属性、店舗内の行動パターンなどの「お客様の行動データ」を製品の出展者にフィードバックし、製品開発をサポートするショールームとなっています。こうした「店頭物販をしない、実証実験用のスペース」を1Fの好立地に展開する、というのも新しい取り組みですね。

 「売るだけでない」「出会いや体験を提供する」店舗へと変わっていっているのがわかってもらえると思います。

徳力:ありがとうございます。話を聞けば聞くほどSF感がすごいですね!

 ところで心斎橋はコロナ後のオープンということですが、計画が変わってしまったみたいなこと、ありますか。

唐笠:密にならないように、感染拡大防止策を講じながら、という点は多分にあります。

 心斎橋PARCOのプレオープン~グランドオープン直後のご入店は、オンラインでの予約制となりました。さっきお話したバーチャルツアーも、こうした状況に応じた対応です。

徳力:ショップ側での変化などありましたか。

唐笠:中には、ECチャネルを自社でもたないテナント企業さんもいらっしゃいます。PARCOのデジタルプラットフォームを使えば、自社ECがなくてもいますぐECが始められるということで、力を入れてくださったショップさんも少なくありません。

徳力:OMOでいうお客さんにとってのリアルとデジタルという面と、テナントのリアルとデジタルのプラットフォーム提供という2つの面がある、未来型ショッピングセンターになっているんですね。

唐笠:そういうところもPARCOの価値と考えてもらえたらいいなと。

オフラインでの体験の質がデジタルに影響する

徳力:確かにPARCOに関するSNSの反響を見ると、アパレルが多いのはもちろんですが、PARCOがキーワードでも各ショップの話題が圧倒的に多いですね。このお店でこういう体験をした、こういうものを買った、とか。

唐笠:PARCOに行くと面白そうとか、楽しい体験ができそうっていうことは、PARCOから発信していくのも重要ですが、お客様たち自身にSNSなどで盛り上がってもらえたらいいですよね。

徳力:「PARCOに行くとなんか楽しそう」というのはまさにキーで、なんでも検索できてしまうお客さんにとっては、オフラインでもオンラインでも、セレンディピティを演出してくれる人を好んで選ぶようになっていくのかな、と思います。

唐笠:おっしゃるとおりだと思います。

徳力:それに、オフラインの記憶というのは、デジタルの体験より、人の印象に残ります。オフラインの記憶をもとにオンラインでもコミュニケーションできると、デジタルの深みが変わってくると思います。たとえばD2Cがやるポップアップストアしかり、メーカー旗艦店のテーマパーク化もしかり、リアルでの体験をデジタルとどうつなげるかが重要になってきていますね。

唐笠:店頭の役割は変わってきていますね。OMOの取り組みだったり、渋谷PARCOもそうですが、店頭は「売る」だけでなく、出会いや体験を提供したり、個客理解を深める場に変わってきていると思います。

 ブランドや商品・サービスに対するお客様のリアクションやニーズを面と向かって把握することだったり、対面でしかできないハイタッチな部分のコミュニケーションやカスタマーサポートであったり、オンラインではできない体感・体験だったり、店頭はそうした役割にシフトしていくように思います。

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Q&A:OMO時代にメーカーや小売が取り組むべきことは?

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この記事の著者

吉田 朗子(ヨシダ サエコ)

アジャイルメディア・ネットワーク株式会社 マーケティング部

広告代理店とカナダでのワーキングホリデーを経て、2018年アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)入社。AMNでは、マーケティング部に所属しながら”寄り添う企業として”をスローガンにしウェビナー、イベントなどを開催中。個人では保護犬のボランティアなどを行いながらより良い未来を模索している。

アンバサダープログラム事業部:https://agilemedia.jp/ambassador-program

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宮崎 綾子(ミヤザキ アヤコ)

編集者。編集プロダクション勤務を経て2009年に独立、“ひとり編プロ”アマルゴンを運営。PC・スマホ・ウェブ関連の技術&カルチャー書籍編集制作を中心に、PRコンテンツ企画など幅広く関わる。電子書籍の導入期にはImpress QuickBooksシリーズに参画。実績は https://amargon.net

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田口 和裕(タグチ カズヒロ)

タイ在住のフリーライター。ウェブサイト制作会社から2003年に独立。雑誌、書籍、ウェブサイトなどを中心に、ソーシャルメディア、クラウドサービス、スマートフォンなどのコンシューマー向け記事や、企業向けアプリケーションの導入事例といったエンタープライズ系記事など、IT全般を対象に幅広く執筆。著書に『できるfit メルカリ&LINE&Instagram&Facebook&Twitter 基本+活用ワザ』(インプレス・共著)、『ゼロからはじめるテレワーク実践ガイド ツールとアイデアで実現する「どこでも仕事」...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/03/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/35662

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