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1stパーティデータ活用で「料金プランがお得になる人」を狙いうち!ドコモの1to1コミュニケーション

 2019年6月からスタートしたドコモの料金プラン「ギガホ」と「ギガライト」。従来は複数の料金プランが存在していたが、定額と従量課金の2つとシンプルでわかりやすい料金プランに生まれ変わった。料金プランのデジタルプロモーションにおける広告配信では、1stパーティデータを活用し「料金プランがお得になる人」を対象とした1to1コミュニケーションを実現。NTTドコモとD2C Rの担当者4名に、取り組みの背景とその狙い、成果について取材した。

シンプル2択な料金プランに変更

――まずは、皆さんの自己紹介からお願いします。

宮:NTTドコモの宮です。主に料金まわりのデジタルプロモーションを担当しています。料金プラン全体の認知・ブランディングのマスプロモーションはプロモーション部で実施しておりますが、私たちマーケティング部はお客様の状況にあった1to1でのコミュニケーションを実現する取り組みを行っています。

堤:NTTドコモの堤です。宮と同じく、デジタルプロモーションを担当しています。私は主に広告運用において、クリエイティブPDCAや全体の運用を見ています。

伊藤:D2C Rの伊藤です。今回D2C RではNTTドコモ様の料金プロモーションにおけるメディア運用、データを活用した広告配信、クリエイティブ制作などを担当させていただいたのですが、私はその統括をしておりました。

樋口:同じくD2C Rの樋口です。伊藤とともに、今回NTTドコモ様のWebプロモーション施策を担当させていただきました。私は実際の運用やディレクション部分を担当しておりました。

(写真左から)株式会社NTTドコモ 営業本部 マーケティング マーケティング戦略担当主査 宮太郎氏/株式会社NTTドコモ 営業本部 マーケティング マーケティング戦略担当 堤治範氏/株式会社D2C R 営業本部 マネージャー 伊藤真二氏/株式会社D2C R 営業本部 樋口瑶子氏
(写真左から)株式会社NTTドコモ 営業本部 マーケティング部 マーケティング戦略担当主査 宮太郎氏
株式会社NTTドコモ 営業本部 マーケティング部 マーケティング戦略担当 堤治範氏
株式会社D2C R 営業本部 マネージャー 伊藤真二氏
株式会社D2C R 営業本部 樋口瑶子氏

――「ギガホ」「ギガライト」について教えてください。

宮:NTTドコモはこれまで複数の料金プランをご用意しておりましたが、2019年6月から基本的なプランは「ギガホ」「ギガライト」の2つとなりました。「ギガホ」は毎月30GBまで使えて料金定額、「ギガライト」は使用したデータ通信量によって1GBまでから7GBまで段階的に料金が上がるという従量課金型のプランです。

「料金プランがお得になる人」を対象とした1to1アプローチ

――では、料金プランのWebプロモーションについて教えてください。

宮:今回の料金プランは、端末割引適用期間が終了された方は基本的に毎月のお支払い料金を押さえることができるものです。ドコモを継続的に使ってもらうために、お得な料金プランへの移行を促したいと考えておりました。

 先程もお話ししたとおり、テレビCMなどを使ったマス訴求は別チームのほうで行っていたのですが、マーケティング部ではメールやダイレクトメール、ドコモのご利用額やデータ通信量・dポイントなどの情報を手軽にご確認いただける公式アプリ「My docomoアプリ」上のアプリプッシュなどを活用し、対象者に限定して訴求していきました。

堤:その際、いきなり新プランへの移行を促すのではなく、「まずは料金シミュレーションをしてみませんか?」と料金シミュレーションを促すようにしていきました。

 ただ、ドコモのオウンドメディアの接点ではドコモユーザー全員にアプローチできないため、足りない部分をD2C Rさんご支援のもと広告で補っていた形です。

膨大なデータを分析し、対象者に向けた広告配信を実現

――広告配信はどのように設計していったのでしょうか?

宮:まずは「ご利用料金がお得になる方」に向けて広告を配信したいと考えました。そこで、ユーザーの契約プランやデータ通信の利用状況、料金シミュレーションをしたか/していないかというデータをすべて統合・分析し、「料金プランが安くなる」かつ「シミュレーションをまだしていない人」に向けて料金シミュレーションや来店を促す広告配信を行っていきました

伊藤:D2Cグループにはデータ分析のスペシャリストが集まった専門部門がありますので、こうした膨大なデータを細かく分析し、適切な配信リストを作成していきました。

 またターゲットセグメントを過剰に細分化してしまうと、配信ボリュームが小さくなり、各媒体の最適化が掛かりにくくなってしまうので、データ分析チームと連携してある程度の母数を担保しながら、広告配信をしていきました。

樋口:難しかったのは、ドコモ様のような事業形態の場合、Web広告を見て乗り換えようと思った方も、実際の乗り換えは店頭で行う方が多く、またドコモ様のマイページ上でプラン変更が行われたとしても媒体上では追えないため、広告上でのKPIと最終的なKPIであるギガホ・ギガライトの契約数の増加が同じにならないという点です。また広告接触と実際の乗り換えまでには1~2ヵ月のタイムラグが生じるという課題もありました。

伊藤:各広告媒体上では、広告接触と実際の成約までの計測は難しいものの、「広告に接触した」「料金プランを変更した」というデータはドコモ様側で取得できているため、データ分析チームによりこちらも分析し、広告配信リストから成約した人を外していくように調整し、広告の精度がより高くなるようにしていきました。

1年目の移行目標は初年度で達成

――取り組みの成果はいかがでしたか。

宮:新プランを発表したばかりの2019年度はまず「ギガホ」「ギガライト」への移行を促していたのですが、D2C Rと週次でデータを細かく分析し、PDCAを回していった結果、1年目に目標として掲げていた1,700万件申込みは、初速では達成不可能な数字でしたが、初年度で達成することができました。また、ギガライトでも利用が伸びて、大容量プランでご利用いただいたほうがお得な方も増えてきました。

 そこで、2年目である2020年度からは、ステップ2として、5Gの料金プランも含む大容量プランである「ギガホ」「5Gギガホ」への料金プラン変更を中心に訴求していくことにしました。こちらもD2Cに分析を依頼し、「ギガホ」「5Gギガホ」プランに適した方に向けた広告配信ができるように設計していきました

堤:毎月7GB以上を使う方にとっては「ギガホ」のほうがお得になるプランですので、こちらから特にアプローチせずともプランを変更される方は一定数いらっしゃいます。そういった方々に対しては、調べていただくとすぐに情報が手に入るよう、オウンドメディアの情報を整えていくことで対応していきました。

 一方で本当は「ギガホ」プランのほうが適しているのに、何かきっかけがないとプラン変更を行わないユーザー様もいらっしゃるので、広告では主にこの層をターゲットにしていきたいと考えていたのです。

「ギガホになるモチベーションが高い層」を対象に広告を配信

――能動的にプランを切り替えるユーザーとそうでないユーザーに分けて、アプローチ方法を変えていたのですね。後者に対してはどのようにアプローチしていったのでしょうか?

伊藤:まず、D2Cのデータ分析チームとユーザーの過去のパケット通信量の利用傾向からモチベーションスコアを作成し、「ギガホになるモチベーションが高い層」を割り出しました。そして、モチベーションが高い人を対象にした配信リストを作成し、集中的に広告配信を実施していきました。

宮:最初は広告効果が見えてくるまでタイムラグがあるので少し不安だったのですが、最終的には目標の数字を達成できるようになっていったので、モチベーションスコアの精度を実感しましたね。

堤:またありがたかったのは、クリエイティブ面でのサポートでした。ドコモではマス広告でタレントを採用しているため、Web広告においてもそちらを転用する形でクリエイティブを作っていました。ただそうすると、クリエイティブがどうしても摩耗し、飽きられてしまう恐れがありました。

 D2C Rさんとは本プロジェクトを進める際に毎週のようにミーティングを行っていたのですが、毎回様々なクリエイティブを提案してくださって。クリエイティブのトライ&エラーの方針を定めながら、クリエイティブをメディアごとの特性にあわせて配信していくことができたからこその成果だと感じています。

広告で得た知見を広げていく

――最後に、これからの展望をお聞かせください。

樋口:広告成果の可視化が難しいというお話をしましたが、それでも2年間の取り組みで徐々に正解が見えてきています。今後も目の前のCPAだけでなく、広告接触と来店などの他導線のデータも掛け合わせて分析し、最終的なKPIである成約に寄与できる広告配信をしていけるよう、打ち手を探っていきたいです。

伊藤:まだまだ色々な切り口で運用していけると思いますので、施策の幅は広げていきたいですね。またセグメントの入れ替えなど、少し時間がかかってしまう部分もあるので、よりシームレスに、タイムラグをなくす形でPDCAを回していける体制を、ドコモ様とも連携しながら作っていきたいです。

宮:このプロジェクトには膨大なデータを活用していますが、まだ一部手作業で行っている箇所もあります。より迅速に、そしてより最適な広告配信が行っていけるよう、そういった箇所をAIによって自動化していくことに取り組んでいきたいと考えています。

堤:今回は広告の取り組みを中心にお話しましたが、広告はあくまでユーザーアプローチのひとつに過ぎません。広告の運用で得た知見をもとに、オウンドメディアやメール、アプリなどのアプローチ媒体・コンテンツも増やしていくことで、ユーザーを育てていけるトータルアプローチを実現していきたいと考えています。

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/05/17 12:00 https://markezine.jp/article/detail/35816