自社分析だけでは見えない「相対的な視点」が戦略に不可欠
では柚木園氏は実際にどのような分析を行い、その結果どうアクションしてきたのだろうか。講演では3つの事例が紹介された。
1つ目は、「最適なチャネルの把握とチャネルごとの最適化」だ。
競合比較分析を行ったところ、他社と比べて自社のディスプレイ広告の投下量が明らかに足りないこと、SNSからの流入比率も少ないことが判明した。
「それまでに多少なりとも競合分析をしていたのですが、Similarwebを使って確認したところ、他社が想定より大幅に広告出稿していた事実に驚きました。今はそれをもとに自社の投下量の判断ができるようになりました」(柚木園氏)
2つ目は「ユーザーの流入キーワードと自社サイト内の使用ワードの乖離」だ。
たとえば、自社のサイトでよく使っていた「スタイリング」というワードが一般ユーザーには使われておらず、代わりに「コーデ」というワードを使っていることが、流入キーワードから読み取れた。そこで、変更可能なものから修正対応していった。
同様に商品名においても、ユーザーが検索するワードと乖離していてショッピングの際に検索で表示されない事態が起きていた。その修正にも現在取り組んでいるところだという。
3つ目は、「ユーザーのサイト訪問動機、求めるものの発見」だ。
ユナイテッドアローズでは自社ECのほか、外部のショッピングモールにも出店している。それぞれを分析するとサイトごとに特色や流入キーワードが異なっていることがわかった。各サイトのユーザーがそれぞれ何を求めて訪問しているのか、異なるニーズに合わせてどのような商品を揃えるべきかが見えてきた。現在、各サイトのニーズに合わせた対応を始めているところだという。
データ分析の習慣化とスピード化でさらなる成長狙う
活用の結果、導入からわずか半年ほどで確実な成果が出ていると次の数字を柚木園氏は示した。
- 売上・トラフィック共に135%の伸び
- ディスプレイ広告とSNSのトラフィックの伸長
- データ分析の習慣化
「今後さらなる成長を目指す心づもりでおりますが、現時点で売上とトラフィックが135%増加しました。さらに、ディスプレイ広告やSNSトラフィックも大きく伸長しています。これは、SimilarWebによってインサイトを得て対策した結果だと考えています」(柚木園氏)
また、取り組みを進めていく上で一番重要だと感じたのはデータ分析の習慣化だと柚木園氏は考える。
「早いスピードでPDCAを回し調整していくことで、ツール導入による改善の実感をすぐに得られました。この習慣化とスピード化の継続が大切だと思います」(柚木園氏)
加えて、競合分析によって自分たちを相対的に見られるようになった点も大きな変化だと柚木園氏は話す。Similarwebの導入により身についたスピード感で今後はトラフィックのシェアの上位を占めるオーガニックの流入とダイレクトの流入への対策を進めていく予定だという。
これを受け平良氏は、「自社の分析で見えてくるものもありますが、競合分析によって相対評価がいかに大事かを実感される導入企業は多いです。自社・競合・業界全体で分析、ベンチマークしてはじめて見えてくるインサイトが多数あるので、引き続きデータを抽出していただきたい」と語り講演を締めくくった。
購買形態においても急速なデジタルシフトが進む現在、適切なデータを収集し相対的な分析・対策ができているか否かが企業にとってこれからの成長を左右する。文章にすると当たり前に見えるが、行動に移せている企業の数はどれほどだろうか。
これを機に、自社のECはどうなっているのか改めて考えてみるのもいいかもしれない。