理想のマーケティングを実現する、3つの心がけ
――仕事では、どんなことを大切にしていますか。
人を大事にすることです。ここで言う「人」とは、サービスの作り手である社員と、利用してくださるユーザー、そして未来のユーザーを意味します。そ
れぞれの思いや判断軸が日々変わることを前提に、未来のユーザーとの出会いを偶然ではなく必然にしていけるような仕事をしたいですね。
私は理想のマーケティングを、「人」が体験とともに新たな世界を開くことと定義しています。その実現のために、3つのことを心がけてきました。1つ目は、ユーザーや未来のユーザーに対するMOT(Moment of Truth)の解像度を高め続けること。最近は、自分でもイラストを描き、ユーザーや潜在層が、「何を必要としていて、何を欲して、何を真実とするのか?」に思いを馳せています。これは、続けることが大事です。思考を蓄積し、そこから予測や仮説が生まれ、事業会社のマーケターの勝率を跳ね上げると思っています。2つ目は、施策やメッセージを出したときのユーザーの反応を、予測しきること。蓄積からどんな企画内容や発信が喜ばれるかを逆算してプランニングし、成功確度を高めた上で実行したいんです。素晴らしいプロダクトを開発するチームへの信頼があるからこそ、マーケティングの成功確度を高めきらなくてはなりません。3つ目は、組織として望ましい自発性を担保することです。トップダウンは一方的で伸びしろがないですし、マーケティング単独で動いても、ビジネス成長の最大化は難しい。関わる人たちみんなが、「やりたい!」と積極的に自発性を持つと、サービスに最も大事な継続力になります。一過性や一発勝負のアウトプットをするより、継続性へつなげていくことを意識しています。
――他のチームを巻き込むときには、どんなことを意識していますか。
関わるプロダクトの目指していることや思いを、とにかく聞き取ります。特に、「これからどこへ向かっていきたいか」「今まで何を大切に運営してきたか」、そして、「なにをやらないと決めているか」を聞きます。「自分のプロダクトは、こう使ってほしい、こんなふうに愛されたい」という思いは、ユーザーの需要に基づくものですから、掘り下げていくと、マーケター視点でプロダクトの本質的な提供価値が見えてきます。つまり、「こんな人に使ってもらいたい」「ニーズを生み出したい」という声が、マーケティングプランそのものに直結するんです。ヒアリングは、博報堂に在籍していた頃から、ずっと大切にしていることです。

需要と価値を結び付ける発想力で、インパクトを残し続ける
――最後に、これからのビジョンを教えてください。
創作活動には、自己完結型もあれば、誰かに見てほしいと考える社会共有型もあり、クリエイターごとに様々です。ピクシブが提供するサービスを通じて、どんな創作意欲にも応えられるようになりたいです。あらゆるクリエイターの作品が世の中に届く仕組みはもちろん、応援の声が届くような環境を提供して、クリエイターが安心・安全に創作活動を続けられるようにしたいです。
どんな組織の中にいても、扱う商材が違っても、ボトルネックを見つけて解消したり、発想力を活かして需要と価値を結び付ける。この役回りで貢献できることがたくさんあると考えてきました。ですので、サービス同士の掛け算で新たな創作活動の芽を生み出したり、市場サイドの芽を発見して、新たな企画を進めていきたい。マーケターの肩書きにとらわれることなく、必要があれば、組織改革や人事制度の設計といった領域にも踏み出して、社内にマーケティングを浸透させる活動を続けていきたいです。最近は社外活動にも力を入れようと考えています。これまでのキャリアから、たとえば広告代理店と事業会社をつなぐノウハウがお話しできそうですし、ビジネス書の執筆も目標にしています。
それから、いくつ年齢を重ねても「今までになかった」「その発想はすごい」と言われたい。広い視野で自分が価値を発揮できるポイントを探し当て、世の中にインパクトを与えるマーケターであり続けたいですね。