社内の味方作りで部署連携をスムーズに
ブラザー販売はABM(アカウントベースドマーケティング)を採用している。
部署連携にあたり、今村氏は社内の味方を探した。営業部門の責任者、チームマネージャーなど、営業に案件を渡した際に社内で権力のある人物、積極的に営業部内で共有してくれる人物がいい。説明して共感してもらえる感度の高い人を探す。できるだけ早い段階で巻きこんでおくことで、後の部署連携がスムーズになるという。
「全員に理解を得ることは難しいので、まずは影響力がありそうな管理職や、BtoBマーケティングの活動を社内に広めてくれる仲間を見つけること。協力体制や浸透度が変わります」(今村氏)
また、営業部門からの信頼を得るため、たとえば営業部のKPIに売上金額だけでなく他のKPIが設定される場合は、そちらも意識して合わせた。ブラザー販売の場合、大口案件獲得の件数も営業のKPIなので、マーケティング部も同様のKPIを設定。
さらに今村氏はマーケティングへの理解を深めるため、営業に向けて「BtoBマーケティングとは」という講習会も実施。横文字のマーケティング用語が飛び交う講習会では、聞いていない人も最初は多かったという。しかし、今では「マーケティングにリードを渡したら案件として戻してくれるよね」と良いイメージの醸成に成功。そこまで実現するのに1年強をかけた。
「まずは営業と連携をとりながら、BtoBマーケティンググループの存在意義を理解してもらうことです」(今村氏)
また、経営層の理解を得ることもポイントだ。トップダウンからも統制することでさらにスピード感が高まる。
インサイドセールスをマーケティング部におきコールリストの質を高める
マーケティング活動を続けていく中、案件数は増えたが売上が伸びていないという壁にぶちあたったという。原因は、大口案件数が少なく小口案件が多いこと。そこで、少しでも多くの大口案件獲得のため、インサイドセールスにおけるセグメントをさらに絞ったコール活動を実施。コールリストの質を上げた。

そもそもマーケティングオートメーション(MA)の運用開始時点では、コールリスト抽出のトラッキング数自体が少なかった。「当初はウェブの行動履歴とホワイトペーパーなどを申し込まれたリストの抽出のみで、その結果、小口案件が多くなっていました」と今村氏は振り返る。
メール配信の質を高め量を増やすことでトラッキング数は増加。自社のターゲットに近いユーザー層のコールリストを抽出できるようになった。売上規模とウェブの行動履歴に基づいたスコアリングが抽出できることで、顧客の購入検討レベルを確認。企業属性を売上規模で設定することで最終的な案件創出額につながった。
案件化につながりやすいリード抽出をインサイドセールスに組み込むことによって、もともと5%だった案件化率は、現在では15%まで上がっているという。
インサイドセールスを営業部門でなくマーケティング部門におき、毎月定期的にBtoBマーケティングから質の良い案件の引き渡しが行われることで、一気に営業との関係が良くなり信頼性が高まった。最近では毎月の営業会議などの各拠点の案件報告会で「BtoBマーケティングからの引き合いをもらいました」「自分たちと同じ立場でマーケティング活動をしてもらってありがたい」という声を多くもらえるという。
