※本記事は、2021年5月25日刊行の定期誌『MarkeZine』65号に掲載したものです。
インターネット広告の拡大で進んだ、ターゲティングの精密化
(左)株式会社電通 第2統合ソリューション局 北 弘樹(きた・ひろき)氏
エグゼクティブ・ソリューション・ディレクター大学で経済発展論と統計学専攻。1995年に電通入社後、CMプランナー、営業職、ビーコンコミュニケーションズ出向を経て、数多くの商品広告計画立案に従事。のちに1社提供番組の広告主担当として放送局と新番組の立ち上げを複数担当。現在は、広告主からメディアまで、データに基づく顧客分析・プランニング作業を担当しながら、ターゲットプロファイリングツールPeople Profilerの開発などに従事。
(右)株式会社電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局エグゼクティブ・メディア&デジタル・ディレクター 布瀬川 平(ふせがわ・たいら)氏
1996年電通入社、セールスプロモーションを経て1999年より(株)IPGに出向し、EPGサービスの立ち上げに従事。2014年に同社代表取締役に就任。その後、電通ラジオテレビ局に帰任、キャッチアップ広告の立ち上げ、視聴データの活用などテレビ・ラジオのDX化に従事。
――2020年、2021年と「運用型テレビ広告」のサービスが続々と登場し、テレビ広告の活用に変化が起き始めているように感じます。今、テレビ広告市場でどのような変化が起きているのでしょうか。
北:テレビ広告市場の変化の前に、まず広告市場全体の変化を簡単にお話しします。2019年の「日本の広告費」において、インターネット広告費がテレビメディア広告費を抜いたことが大きなトピックとなりました。20年前の2000年の広告費では、テレビメディア広告費が約2兆円だったのに対し、インターネット広告費はわずか500億円ほどでした。それが2020年にはテレビメディア広告費が約1兆6,000億円に縮小したのに対し、インターネット広告費が約2兆2,000億円と急成長したわけです。
元々、インターネット広告はマーケティングファネルの下のほう、つまり「興味喚起」や「獲得」に有効とされてきましたが、近年では「認知」にも効きますと、テレビ予算からのデジタルシフトが起き始めています。
この20年間でインターネット広告に関するテクノロジーはものすごい進化を遂げました。特に広告主から評価を得ているのが、ターゲティングの部分です。インターネット広告では人々の興味や関心、ニーズ、行動パターンなどの膨大なデータから、様々なターゲティングが可能です。たとえば輸入車の広告出稿面を考える際には、「クルマ好き」に狙って広告を打つ、ということが当たり前に行われているわけです。一方テレビ広告では、「輸入車の広告ならM3層向け」というように、ずっと「性年代」区分のターゲティングが続いていました。広告主が、インターネット広告のようにテレビ広告でも性年代以外のターゲティングを行いたいと考えるのは当然の流れです。
こうした流れを受け、近年、従来の視聴率データもエリア&サンプル数が全国に拡大され人数推計が可能になったほか、統計的代表性を一定量担保しつつ、リッチプロファイルの集計が可能な新しい視聴率データが続々と登場しています(図表1)。
こうした新しい視聴データを使うことで、「人」の意識や行動に基づくテレビ評価が可能になってきています。
電通ではテレビ広告の今後を考える上で、広告主のためだけではなく、テレビの価値の再発見を行うためにも、従来の性年齢階層による枠評価からデジタル広告同様のマーケティング階層による枠評価に正面から取り組むべきと考えました。そこで私たちが提唱しているのが、“人”基点のテレビプランニング「People Driven TV Planning」です。