“SDGs元年”2019年からの現在地 具体的なアクションには課題が
MarkeZine編集部(以下、MZ):トライバルメディアハウスは、2020年に企業のSDGsアクションを支援する専門チーム「Good Tide(グッドタイド)」を発足しました。はじめに、Good Tideをスタートした背景をお聞かせください。
太田:SDGs元年と呼ばれる2019年あたりから、企業は本格的に事業戦略へSDGsを取り込み始めました。弊社もSNSマーケティングに関連してSDGsにまつわるご相談をいただくことが増え、専門的に対応するGood Tideをスタートしました。
具体的には、パートナーのソフィアサーキュラーデザイン社と一緒にSDGsをクライアント社内に浸透させるための研修や、SDGsの17の目標から重点方針を策定するコンサルティング、そして戦略立案やコミュニケーション設計のサポートを行っています。
MZ:現状、企業のSDGsへの取り組みはどのような段階だと思われますか?
太田:昨年SDGsをテーマにしたウェビナーを開催しましたが、集客率が高かった上に、初めて参加される企業が多く、広報やマーケ、経営戦略と幅広い部署からのお申込みがありました。SDGsへの関心が高いことを感じましたね。
現状としては、「何から始めればいいのか?」と悩まれている企業が多い印象です。SDGsアクションのスタートラインに立ちながらも、「SDGsへの取り組み方がわからない」「重点方針をどのように日々の実務に落とし込み、発信すればよいかわからない」などの課題を抱えているようです。
SDGsアクションの第一歩は、組織横断のチームを作ること
MZ:では、企業はどのようなことからスタートするとよいのでしょうか?
太田:まずは、社内の部署を横断してSDGsアクションの推進体制を作ることです。マーケティングや商品企画の部署だけでSDGsを意識するのではなく、サプライチェーンやセールス、人事部などのコーポレートと、すべての部署が関わることが重要です。
MZ:会社全体で取り組む姿勢が大切なんですね。
太田:並行して、SDGsの17の目標のうち、何を重視するかを定めて戦略に落とし込んでいきます。この時、必ずしも「SDGsのために何か新しいことを始めよう」と考える必要はありません。そもそも、サービスや商品は生活者の課題解決を前提としていますし、企業の多くが何かしらの社会貢献事業に関わっています。これまでの企業活動の中からSDGsの達成に貢献できるアクションを見つけることがおすすめです。
そして、「策定した重点方針や具体的な活動をどのように発信していくか?」とコミュニケーション設計を考えていきます。たとえば、ウェブサイトやSNSなどでどんなメッセージを届けるか、などですね。
MZ:環境をテーマにした目標は生活者も自分ごと化しやすく、企業からの発信も多いように感じています。環境への配慮が一般化することは理想ですが、あえてSDGsアクションとして発信する意義はあるのでしょうか?
太田:おっしゃる通り、環境やサステナブルにまつわる情報発信は多いです。社会のエコへの関心高さもありますが、企業が環境にまつわる社会活動を積極的に行ってきたからだと思います。
それをあえて「SDGsアクション」の枠組みのひとつとして発信することのメリットとしては、生活者に地球規模の課題にまで目を向けてもらう機会につながることがあります。たとえば「オーガニックな素材を使用しています」ではなく、「なぜオーガニックの素材を使っているのか」という背景まで伝えるとよいのではないでしょうか。それが生活者に深い理解を届け、取り組みへの共感が企業自体への支持につながるのではないかと考えます。