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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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MarkeZine Day 2025 Retail

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

大手企業×スタートアップの特長を活かす、ハイブリットなD2Cカンパニーに聞く生存戦略


一人の顧客と徹底的に向き合い、理解する

MZ:消費者インサイトを捉えるために、具体的にどうされているのでしょうか。

竹内:インサイトの掘り起こしについては一人(N=1)の顧客を深堀りし、徹底的に理解することから有効な策を導き出して拡大展開しています。

 一人、1時間ほど時間をかけてじっくりインタビューします。人数はそれほどこなす必要はなく、大体5~10人ほど聞けばインサイトが見えてきます。何に課題を感じているのか、提示したコンセプトのうちどれに興味を持っているかを話しながら見つけていく。

 大勢に薄い質問をするより、一人の話を徹底的に聞くほうがはるかに有意義です。消費者にしっかり話を聞けば、商品設計のほとんどが完結すると思っています。このあたりは、P&Gで徹底的に学んだ部分ですね。

 インタビュー前に仮説を設計し、便益や世界観が伝わるコンセプトボードを5~7つほど用意して臨みます。話を聞いてみると時折、自分の仮説から大きく外れることがあります。そこを深く掘り下げます。

 また潜在・顕在の区別なくインサイトは、その人の生活やコンプレックスに関係しているケースも多くあります。はっきり言ってはもらえませんが、その人がなぜその行動をとったのか、裏側の心理状況を話している様子やちょっとした言動から読み取っていくんです。これは目の前にいる人と向かい合うからこそできることです。

MZ:もう1つのポイントであるブランドの世界観について、御社の優位性はどのように確立されたのですか。

竹内:先程も触れたのですが、パンパースを担当していた頃に年間で100名以上の妊婦さんやママさんにインタビューをしていました。少子高齢化の影響でオムツを買う人は減っていく反面、不妊治療や高齢出産の話が頻繁に出るようになっていて、いわゆる妊活に課題を持つ方が多いことを知りました。

 そこで、葉酸サプリについて調べてみたところ、ほとんどのメーカーは1種類しか商品を出していなかったんです。本当に同じサプリをずっと飲んでいていいのか?と疑問をいだきました。

 妊活・妊娠・産後では体の状態が全く違います。妊娠中は摂取を控えたほうがいい栄養素もありますし、産後は授乳などがありますから。それなら、時期に合わせて必要な栄養素が揃ったサプリを用意してあげたほうがいいのではないかと考えました。

 その仮説を元に調査・開発した「mitas」を販売したところ、反響がありました。実際に1つのサプリで全てを済ませることに違和感を持っていた方や、言われてみたらそうかもなと気付かれた方に共感してもらえたのだと思います。

 そのため、弊社では、妊活期の「mitas」・妊娠中の「mamaru」・授乳中の「mamaco」と時期別にブランドを分け訴求をしています。

D2CはプロダクトもアドもPDCAが高速

MZ:商品開発の面で大手メーカーでの経験を活かされている様子が伺えます。一方、スタートアップだからこそ享受できていると感じる部分はありますか?

竹内:世界観の意思決定のしやすさですね。世界観の独自性を打ち出すには、最終的にはファウンダーの意思が反映されている必要があると思っています。いろいろな人の意見を聞くと、尖りがなくなってしまう。そこは腹をくくりやすい。

 規模が大きな企業であっても、新しくブランドを立ち上げる場合は強い意思決定をできる存在を立てるべきだと感じるところですね。

MZ:商品開発の面ではいかがですか?

竹内:実は、大手が得意とするマスマーケティングの手法はスタートアップでも十分応用可能です。たとえば、認知から購買までの消費者行動に大きく変化はありませんし、商品開発をしてく流れも似ています。

 消費者行動に対するアプローチ方法や、商品開発に求められるスピード感などは異なります。商品の改善スピードも早いです。ユーザーの声を元に、半年~1年スパンで改善を重ねていけています。大手だと少なくとも2年はかかるはずなので、PDCAを回せるスピード感が段違いですね。

 ただ、これは一概にどちらが善い悪いではなく、規模の違いによる攻めと守りの割合の違いが影響しているのではないかと考えてます。

 さらに、デジタル広告を自分たちで運用する点も強みだと感じます。大手の場合、自分で広告を運用する経験はほとんどないと思います。一方、スタートアップでは自分たちでやるしかない。

 SNS広告1つとっても、設定やクリエイティブの改善で全然成果が変わるので、テクニカルに詳しい人を引き込んで、自分たちでテストしながらスピード感を持って改善していけるのはいいですね。商品の品質が重要な一方、D2Cではデジタル広告による販売競争が非常に熾烈です。

 デジタルに強い企業は、思いもつかない手法で大きな成果を出している。無数の打ち手を凄まじいスピード感でテストして、その中で勝ちパターンを見つけ、そのフローを構築しています。そこに追いつくために、弊社でも進めているところです。

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変化の早いD2C市場、戦い方はどう決める?

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MarkeZine(マーケジン)
2021/06/28 22:36 https://markezine.jp/article/detail/36498

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