変化の早いD2C市場、戦い方はどう決める?
MZ:D2Cスタートアップ企業は、これから大手とどう戦っていけばいいのでしょうか?
竹内:やはり、小回りが効く点を活かすべきですね。既にブランドが確立されていると「ブランドに対する消費者からの期待値」が明確です。それを逸脱することは消費者を裏切ることにつながりかねない。したがって、消費者が求めているブランド像=ブランドエクイティを担保していくことが求められます。
これは、消費者がそのブランディングを認知してくれているというポジティブな側面の裏返しですが、コミュニケーションの変革や、ビジネスモデルの変更などの大胆なイノベーションを起こしていくには一部足枷になってしまう可能性もあります。
反面、スタートアップ企業は良くも悪くも消費者の認知が進んでいない段階なので、試行錯誤を繰り返したり、突拍子もないことを試したりすることが比較的しやすく、スピード感を持って実行できる点が強みだと思います。
また、市場選定が重要です。予算や販路ではもちろん大手には勝てません。ですから、そもそも戦わない選択をとるべきです。大手が参入したくないぐらいニッチな市場を狙うか、もしくは大手が入っていても、大手が対抗できないぐらいの手法や新しいコンセプトを打ち出せるか。
MZ:御社が参入した市場も、大手からすると狙いにくいのでしょうか。
竹内:狙いにくいと思いますね。葉酸サプリの市場は約200~300億円。トップシェアを取れたとしても最大で数十億円規模にしかならないので、例えば売り上げが1兆円規模の大手にとって参入メリットはかなり低いでしょう。
反対に、新規事業や起業したばかりで取り掛かるなら、この市場規模で戦うのがいいと思います。ニッチなエリアである程度シェアを取り、企業として成長して体力がついてきたら、さらに規模の大きい市場に参入していく流れが正攻法かと思います。
MZ:一方で、D2Cへの参入障壁は低くなりブランドが乱立しています。
竹内:ですから、他社との違いを明確にし追随できない便益を提供できるかが肝要です。消費者のレビュー情報や消費者間のコミュニケーションに耳を傾け、商品開発をしていけるか。そして、情報があふれる中で埋もれずに質の高いコミュニケーションを、メディアを使い分けながら実施していくかを意識する必要があると思います。
また、先程触れたマスマーケティングをどのタイミングで導入し、認知率を向上するためのコミュニケーションをしていくかを意識することも大切だと考えます。
消費者の声を聞くノウハウは実地でないと得られない
MZ:逆に、大手がD2Cに参入する場合はどう戦っていくべきなのでしょうか。
竹内:大手の場合、良いものを作れる、念入りに消費者調査できる時間と体力があるので、その利点を生かすべきです。同時に、消費者のニーズの移ろいに対応できる、俊敏性のある組織を作っていけると非常に強いと思います。
MZ:natural techさんは、まさにスタートアップと大手のハイブリッドですよね。
竹内:そうですね。消費者調査にしっかりリソースを割き、インサイトを捉えた上で商品開発に取り組みつつ、半年から1年のスパンで改良しています。商品がリリースされたら、デジタル広告の手法をどんどん試しています。
ただ、現状では消費者調査はほぼ私だけで担当しているので、そこを拡大していきたいですね。私より向いている人もたくさんいるはずですが、消費者の声を聞く行為は、実際に顧客と接していかなければ得られないノウハウが無数にあります。
調査方法のフレームワークなどは無数にありますが、ここは仕組み化ができない部分だと思っているので、一緒に併走して学んでもらえる環境を作っていきたいと思います。