コロナ禍でパフォーマンスを発揮するPrice
この情勢下においてPriceを調整弁として有効活用できるか否かは、企業の今後を左右する大きなファクターとなります。その理由は以下の3つです。
第一に、Priceは急激な需要変動を吸収できるだけの高い柔軟性を有しているということ。ここでいう柔軟性とは、言い換えれば企業側にとっての変更コストと読み替えてもよいでしょう。
たとえば、Productで需要変動を吸収しようとした場合、仕様変更が必要になります。場合によっては商品開発に近いような負担が生じることになります。また、Productの生産量で調整を図る場合、必要になるのはサプライチェーンの見直しです。ただ需要が下がる一方であれば、恒常的に供給量を削減する手もあるでしょうが、急な回復が生じる場合に需要へ対応できなくなるリスクがあります。
実際に、米国ではワクチンの普及にともなって消費性向の急回復が生じつつ有り、各業界が供給量の再確保に奔走している状況にあります。
Placeで変化に対応するということは、販路やチャネルを新規開拓するということにほかなりません。実店舗であれば売り場の拡縮が必要になりますし、ECサイトでの対応もコストが生じます。
Promotionではどうでしょうか。ここでは、需要全体が縮小傾向にあるという問題が立ちはだかります。パイが減った中で前年同等の売上を維持しようとすれば余計にプロモーションをかける必要があり、例年以上のコストが生じます。また、競合も同じことを考えているので、減った椅子の中で椅子取りゲームしていることになるでしょう。
これらに対し、Priceを調整する際の変更コストはほとんどかかりません。また、時間単位で価格を微調整することも可能です。また、供給量を一定に保つことができるため、急激な需要の拡大に対するリスクヘッジにもなります。
第二の理由は、顧客にとって最大の原動力が価格であるという点になります。そもそも販促活動や販路開拓はファネルの第一段階、Attentionに寄与するもので、最終的な購買の意思決定は価格と効用によって決定されるものです。
ネオマーケティングの調査によれば、顧客が行動を起こす最大の要因は価格となっています。また第二の要因も価格に由来するもので、三位と四位が製品、販促活動は五位以降という結果になっています。
そして第三に、企業の利益率にレバレッジが効くのは価格だということです。
菅野誠二氏の『値上げのためのマーケティング』によれば、コストを1%削減する場合や、マーケティング費用を1%向上させる場合と比較して、価格を1%向上させる場合に最も営業利益の向上幅を高められると説明しています。
Priceを通じて顧客と真のコミュニケーションを図る
「マーケティングの究極の目的はセールスを不要にすることである」という言葉はドラッカーの言行録の中で最も知られている1つでしょう。
セールスを不要にするためには、顧客が今この瞬間に何をいくらで買いたいと考えているかについて、真剣に考えすぐさま対応する必要があります。
コロナ禍の影響で顧客のニーズが量的にも質的も刻一刻と変化する現在、まずは新しい調整弁の1つとして「価格」について学ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。次回は、プライシングの基本を解説します。