実店舗と変わらないレベルで提供するオンラインサービス
——スマホの普及によって生活者の消費行動が大きく変わり、メーカー・小売のビジネスにおいてOMO(Online Merges with Offline)の概念が急速に広まりつつあります。御社では、世の中のOMO化の流れについて、どのように捉えられていますか。
濱田:オンライン購買の常識が変わってきていると感じています。数年前までは、オフラインで気に入ったお店を見つけ、オンラインで購入する流れが一般的でした。それがここ数年で、メガネの分野においてもオンラインでの情報収集をする生活者が急増した印象を受けます。
濱田:メガネは医療機器という性質上、直接来店して購入されるお客様の割合が高いのですが、それでもやはり事前に情報を得てから来店されるお客様が着実に増えていると感じます。 コロナ禍での非接触の推奨によって、OMOの重要性がさらに加速した印象です。
このような時流の中で、実店舗・オンライン店舗に関わらず、同じレベルのサービスを提供することが、企業として目指すべき姿なのではないかと考えています。
——OMOを意識した具体的な御社サービスについてお教えください。
濱田:アプリを通じて、各店舗で在庫しているメガネを来店前に購入できる「CLICK&GO」や、スマホのカメラを利用して、オンラインでリアルタイムに3D試着ができる「JINS VIRTUAL FIT」などのサービスを展開しています。
クライアントの要望を具体化するISIDの総合的支援
——JINSで推し進められているOMO施策について、協業の背景やこれまでに行った支援の概要について教えていただけますか。
若本:協業の出発点は、2015年にJINS様が発売されたメガネ型のウエアラブルデバイス『JINS MEME(ジンズ ミーム)』のプロジェクトです。ISIDが同プロジェクトのプラットフォームを開発したのがきっかけでした。
若本:JINS MEMEは会員制サービスだったので、そこで作った認証基盤にCRMのデータをリンクさせ、JINS全体のプラットフォームを構築して、という流れでお手伝いしてきました。プラットフォームと認証基盤ができた後は、既に展開されていたECやJINS公式アプリの補完など、顧客接点を増やすようなサービス展開を提案するようになり、現在に至ります。
元々はバックエンド領域の支援が中心だったんですが、最近ではLINE公式アカウントをはじめとするマーケティングやプロモーションなど、フロント面での支援にも関わらせていただくようになりました。
——JINSとしては、ISIDに対してどのようなスタンスでの支援を求めていらっしゃいますか。
濱田:相談役のような存在として支援をお願いしています。やりたいことを実現するためにシステムが必要になると、まずはISID様に相談しています。ゴールや漠然としたイメージを伝えるだけで、具体的な施策や切り口を提案していただき助かっています。
システム開発からマーケティングに至るまで、幅広い領域で手厚いご支援をいただいています。
新店オープンのプロモーションで潜在顧客の会員化を促進
——近年取り組まれているLINE公式アカウントを活用した販促施策について、プロモーションの概要を教えていただけますか。
真崎:新店オープンの販促として、「新店オープンスロットクーポン」と呼んでいる抽選式クーポンのプロモーションを企画しました。元々抽選系の企画は度々実施していましたが、今回はプロモーションの媒体としてLINEを活用しました。
真崎:新店オープンの際には多くのお客様にご来店いただけるのですが、全てのお客様がその場で商品を購入される訳ではありません。メガネは買い替えサイクルの長い商品です。単発のプロモーションで認知度を高めても、買い替えのタイミングにアプローチできなければ、お客様が競合へ流れてしまいます。継続的にJINSを使ってもらうためのハードルの高さが課題としてありました。
今回のようにLINEを活用する施策では、新店オープン時にご来店いただいたお客様、JINSに興味を持っていただいた潜在的なお客様とのつながりを、継続的に保持することが可能です。
友だち登録やLINE公式アカウント連携によってお客様を早期に会員化し、継続的なコミュニケーションを取ることで、ご来店いただくきっかけを増やすのが本施策の狙いです。
——なるほど。実際にプロモーションによって得られた成果はいかがでしたか?
真崎:既に複数の店舗で実施しておりますが、1店舗あたり、1回のクーポン施策で最大1か月の購入客数程度の会員数を獲得できています。当社では年間約30店舗ほど新店をオープンしており、そのすべてでプロモーションを行うことを考えると、非常に効果的な施策です。
単発のクーポンとは異なり、潜在的な需要に対して継続的なアプローチができるため、LTVにつながる部分としてかなり大きなアドバンテージが得られていると思いますね。
企画の立案から効果分析までを一気通貫で支援
——今回のプロモーションを実施するにあたり、ISIDとしてはどのような支援を行ったのでしょうか。
丹羽:今回の企画は、「新店オープン時の活性化施策をLINEで行いたい」という真崎様のご相談が発端です。
丹羽:当時JINS様では、既に『LINE Beacon』によるスロットクーポンを発行しており、「お客様の反応が良かった」とのお話がありました。今回はJINS様のLINE公式アカウントに新店オープンスロットクーポンを実装してみてはどうかと考え、ご相談いただいた翌週、Adobe XDによる画面イメージを基に提案を行ったのが企画の始まりです。
ただスロットクーポンを実装するだけでは、どのような効果が得られたかわからないため、設計段階からキャンペーンに必要なKPIを真崎様から提供していただき、いわゆるBIツールの「Looker」を用いて実施後の効果分析まで行えるような環境を構築しました。
丹羽:プロモーションが実際に動き出した後は、Lookerの分析効果を元にレポートやダッシュボードを作成し、実際にJINS様に見ていただきました。Lookerによって得られたデータとLINEの機能を活用することで、次の新店オープン時にはより精度の高いプロモーションが可能になります。
また、新店オープンの際、近くに住む方や、近隣の店舗を利用したことがある方へ個別にアプローチしたい、とのご相談がありましたので、Lookerの「アクション」という機構を使い、ターゲット層に対してプロモーションを配信できる仕組みも構築しました。
丹羽:ローンチ直後の運用は当社で行っておりましたが、徐々にJINS様で自走できるように移行し、現在ではすべての流れを真崎様ご自身で実行いただいています。
部門間の連携と実現力がDX成功の鍵
——今回のようなプロモーション施策を協業で進める上で、社外パートナーに求める条件を教えていただけますか。
濱田:社内外の各部門・部署間を横断して、スムーズな情報共有や連携を取っていただくことが重要ですね。たとえばISID様と当社の間では、週1回の定例ミーティングを行っています。
ISID様は情報収集のスピードが早く、ミーティングの度に新しい情報が更新されるため、施策のPDCAが効率よく回っていると感じます。
もう1つ、我々が感じているISID様の強みとしては、施策の実現度の高さです。当社だけでは解決ができない課題に対して、企画の提案から実装、場合によっては運用の定着を見据えたシステム化までを一貫して担ってもらえる点は、パートナーとして非常に心強いですね。
——今のお話を踏まえて、社外パートナーとしての御社の強みはどのような部分にあるとお考えですか。
若本:元々プラットフォームの立ち上げ時期から支援を行っていたため、JINS社内の各担当者様や、JINS様のお付き合いのあるシステム関連の他ベンダーとの関係構築がしっかりできあがっていると自負しております。
もう1つは、プロダクトマネージャーとしての立ち回りができる点ですね。SIerとしての立ち位置に加え、サービスの提案から品質の担保までをカバーする支援領域の広さは、当社ならではの強みと言えるのではないでしょうか。
多角的な視点を反映させるマーケティングDXへ
——JINSが考える今後のデジタル領域へ関わり方や、取り組みの展望についてお教えください。
濱田:今後、マーケティングの領域とデジタルの領域は、益々切り離せないものになっていくと思います。当社としては、その流れにしっかりと乗れるよう、新しいサービスを展開していくつもりです。
真崎:ISID様には、毎回私たちの期待値を上回るサービスをご提供いただいています。今回のLINEを活用したプロモーションの施策を含め、エリア販促においてはかなり汎用性の高いプロダクトが仕上がりました。
デジタルの分野では自社で対応できない領域が多いため、今後もISID様からのご協力をいただきながら、チャレンジ要素の強い企画も積極的に実施したいと考えています。
——ISIDとしては、今後どのようにJINSを支援されるのでしょうか。
若本:引き続きプラットフォームをお任せいただいているので、まずはシステム面の堅実な支援を継続しつつ、マーケティングやプロモーションにおける支援の幅を広げていきたいと思います。
コンバージョンや獲得効率など、JINS様の事業に対して、よりダイレクトに貢献できるような施策を提言するのが今後の目標です。
丹羽:JINS様は発想豊かな方が多く、UXを高めるためには新しいものを積極的に取り入れる柔軟なクライアントです。私のような若手の提案でもどんどん採用いただけるのがありがたいですね。
おかげさまで、プロジェクトの深い位置まで関わらせていただいています。JINS様に近い視点と、SIer・電通グループとしての視点、そしていち⽣活者としての視点、これら3つの視点をバランス良く取り⼊れ、皆様と一緒に新しくて便利なものを作り続けていきたいです。
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