多様なユーザーと継続的な関係を築くには?
コンバージョン最適化のプロセスを進める上で、仮説と検証やKGI/KPIを分解していく考え方などの基本が変わるわけではありません。しかし、ここで紹介した数年での環境の急速な変化を考慮に入れる必要が出てきています。
これまでは「ECサイトなら大抵はこういうKPIツリーで」という粗めの仮説でもそこまで大きな支障はありませんでしたが、今後ユーザーとオンラインコミュニケーションの多様化が進むと、そうはいかなくなってきます。
Webサイト改善のサイクルを回すための2つのポイント
今後Webサイト改善のサイクルを回す上では、次の2つがポイントになります。
- ・多様なユーザーを想定して複数の仮説を立てる
- ・リアルをヒントに、オンラインに今までなかったコミュニケーションを発想する
ユーザーを同質的に扱う従来のコミュニケーション設計では、多様なユーザーが抱える問題に対処しきれません。「あるユーザーに有効な施策が、別のユーザーには逆効果」となることもあり得ます。どのユーザーに対してどのようなコミュニケーションを取るのか、セグメントを切ってパーソナライズする考え方が必要になるでしょう。
また、インターネットを受動的に利用するユーザーも増加しています。コンテンツをただ置いておくだけでは、ユーザーが能動的にそのコンテンツを探し当てて見てくれるとは限りません。リアルの「声かけ」に見られるような、ユーザーにどのように気付いてもらうのか、案内をするのかという接客コミュニケーションの本質を考えるということもあわせて必要になるでしょう。
継続的な関係性の構築がより重要になる
現在は「DX」というかけ声のもと、いよいよ本格的にビジネスの根幹にデジタルが取り入れられようとしています。顧客とのあらゆる接点がデータを取得する機会になり、またコミュニケーションの機会となっていきます。
同時に、昨今のプライバシー意識の高まりを踏まえると、ユーザーからの信頼を得られなければ、そもそもデータ取得の機会も得られなくなるでしょう。ユーザーから信頼される体験を提供できる企業とできない企業では、データ活用ができる幅に大きな差が付きます。その意味でも、ユーザー視点の広義のパーソナライズ体験設計の重要性が増していきます。
DX後の世界では「ユーザー視点の広義のパーソナライズ体験をいかに作れるか」「そのために必要な改善サイクルをどう回し続けるか」といったケイパビリティがあらゆる局面で求められることになります。コンバージョンについても、その瞬間の購入だけを見るのではなく、「継続的な関係性の構築につながるようなコンバージョンを考える」という姿勢が求められるようになっていくでしょう。
筆者は、ユーザーの離脱要因となるさまざまな体験上の障害を「フリクション(引っかかり)」と呼んでいます。ユーザーによって「何がフリクションになるのか」は異なりますが、あるユーザーにとって障害となるフリクションをていねいに取り除いていくことも、パーソナライズの一種といえます。「多様なユーザーと継続的な関係性を築く」という観点でも、非常に有効な考え方です。
次回は、ユーザーのさまざまな離脱要因となる「フリクション」について、より詳しくご説明していきたいと思います。