全方位デジタルで生まれる新たな商機
財務面では、IoTデータの活用によりタイムリーに契約の更新を管理でき、収益減を最小化します。各種資産の状況ならびに人のつながりを可視化することで、アフターセールスのケアや関連商品およびサービスの販売、アップグレードなどを推進します。デジタルのサイクルによって情報とキャッシュのフローを加速し、人間の稼働を省くことができるのです。
このデジタルサイクルの中では、一人ひとりの顧客に関するインサイト(洞察)を獲得し、マーケティングキャンペーンやブランドの立ち上げや管理をカスタマイズ(個別最適化)することができます。製品の販売後に、個々の製品の設定までをも個別最適化できるのです。
オンライン、オフラインを問わずお客様とつながるあらゆる接点、とくに技術的なフォローの際には、クロスセルやアップセルの機会を創出できます。最終的には、安全で環境配慮が行き届いた使用済み製品の廃棄により、コンプライアンスを遵守するのみならず、新たな商機をもたらします。

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BtoBtoCモデルへの改革ステップ
従来型のBtoB型からBtoBtoC型へとマーケティングならびに経営を移行していくには、まずは人、次に金、そして製品、最後にエコシステムという4つのステップがあります。以下では、世界的なITコンサルティング企業であるInfosys(インフォシス)による解説の抄訳ならびに事例を交えて説明します。
ステップ1. 基本的なコミュニケーション、つながり:人材面
BtoB事業に従事してきた企業では、まず顧客企業の連絡方法、担当者の好き嫌いなどを含むマスターデータベースを構築する必要があります。CRM(Customer Relationship Management)を導入ないし刷新して、複数部署の情報を統合し、部署ごとに大きく異なるニーズや文化を分析することで、BtoBtoCモデルへの刷新の足掛かりとします。
そして、営業チームに必要なSFA(Sales Force Automation)などのツール、情報にアクセスするデジタルのインターフェースを提供し、商談サイクルの短期化と運用コスト低減を可能にします。たとえば鉱物加工、金属精製、リサイクルの技術、システムを提供するグローバル企業であるQuototecは、Infosysのコンサルティングを受け、CRM刷新をはじめとする移行を実現しているそうです。
ステップ2. 受注から支払いまでのデジタル化:財務面
人がつながるようになったら、財務面の改革に進みます。デジタルで情報と金銭、それぞれを双方向に交換する仕組みづくりが必要です。その好例が受注から入金までのデジタル化です。ヨーロッパ広域で100以上の独立事業者が連携するプラスチックの販売事業体のVink VTSでは、InfosysとともにECのオペレーションを1つのプラットフォームで標準化しました。複数の産業、店舗、事業者によって異なる複雑な価格構成などをERP(Enterprise Resource Planning)システムに統合し、顧客が注文、価格、配達、取り扱い、請求までオンライン化しました。
ステップ3. 稼働監視とバーチャル体験:製品面
IoTは製品同士のつながりを可能にしました。製品内蔵のセンサーがパフォーマンス状況をOEMメーカーに送り、お客様の製品の使用状況を、物理的なコンタクトなしに仮想環境で確認できます。航空宇宙機のグローバルメーカーAirbusは、宇宙空間の360度データを入手してヒヤリハット(what-if)分析ができるオープンデータの統合プラットフォーム「Skywise」を開発し、飛行機の運用から保守まで航空に関する情報を可視化しました。これにより、Airbusは直接乗客と関係構築し、拡張現実(AR)により一人ひとりが必要なコンテンツとデジタル体験を提供することが可能になりました。
ステップ4. 新しいビジネスモデル:エコシステム形成
最後のエコシステム形成においては、これまでOEMと消費者の間に立っていた中間事業者が大きな役目を果たします。タイヤメーカーのMichelinは2013年、新たなビジネスモデル開発のための情報システム会社、Michelin Solutionを設立。トラック利用時の燃費効率を守るために、契約合意に基づいて、エコシステム全体を包括する車輛管理プログラム、EFFIFUELを立ち上げました。IoTのセンサー活用に基づく車輛の追跡やタイヤのパラメーター把握、外部パートナーによるユニット設置や接続管理、データ処理のためのテレマトリクス(移動体通信)システムなどを導入しました。Michelinの専門家がクラウドに保存されるデータを分析し、環境に優しい走りのおすすめ情報やトレーニングを提供しています。Michelinは車輛運用を事業としながら、そのディーラーや小売店における受注や商品提供を活性化しているのです。
また、自動車メーカーVolvoの場合は、ディーラーにセールスとアフターセールスを委託しながら、顧客についての情報提供で支援しました。ソーシャルメディア、自社サイトなどを通じ、Volvoのユーザーやファンと双方向の会話を始め、信用、信頼を獲得することに注力しました。これにより、ただ販売台数を伸ばすことや、ディーラーと競合するような道には進まず、コネクテッドカーというユーザーとディーラーがつながる在り方を作りました。車輛の状態、車輛修理業者における部品の在庫などを可視化し、ユーザーにもディーラーにもタイムリーにお知らせを発信。サービスによってはユーザーがセルフサービスで使えるようにするなどの改革を実施して、BtoBtoCモデルのエコシステム作りを実現しました。