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マーケティングを経営ごとに 識者のInsight

競合と手を組み、業界全体の課題解決に挑む 「つながる薬局」で目指す患者起点のDX

電子おくすり手帳に関する業界全体の反省

――「デジタル薬局コンソーシアム」について、詳しく教えてください。調剤薬局の運営企業同士が組むということは、競合ですよね?

 そうですね。ただ、それ以上に業界全体の課題意識が強く、皆で解決しようと志をともにしています。今回の参画企業には、サービスを広げるアンバサダーを担っていただきたいと思っています。

 ここにはメディシス社の特殊な立ち位置も影響していて、我々はBtoCの調剤薬局事業の傍ら、薬局向けの経営支援やシステム提供といったBtoBの事業(医薬品ネットワーク事業)も展開しているんです。現在の参画企業とは、上記の事業や勉強会を通じて元々お付き合いがあり、コンセプト段階ですぐにご賛同いただきました。

 6社とメディシス社を合わせた7社の全国750店舗で、「つながる薬局」の利用を促進していきます。LINEの友だち登録を推進しながら、メディシス社の医薬品ネットワークの加盟施設約6,400件、ひいては全国の調剤薬局6万店舗への導入を促進していきます。

――「業界全体の課題」とは何でしょうか?

 大きくは、2つあります。まず、2015年ごろから各社が出し始めた電子おくすり手帳が、まったく浸透しなかったことです。

 薬局からすると、電子おくすり手帳によって服薬状況の一元管理が実現できる期待感と同時に、患者を囲い込む意図がありましたが、患者には個別のアプリやサービスは使いづらく、期待に反して利用者が極端に少ない状況が続いていました。

 そのような中で、2019年に業界の基本的な法律「薬機法」が改正されました。これへの対応が2つ目の課題です。

 そもそも薬局や薬剤師は、通常の薬局業務のみではその価値が伝わりにくいという悩みを抱えていました。店頭の服薬指導では患者と接する時間が短く、患者も待ち疲れて早く帰りたいことがほとんど。薬局はもっと患者にとって負担の少ない方法で「つながる」ことを求めていたのです。

 薬機法の改正は、薬局がこれまで以上に「薬」ではなく「患者」に向き合う対人業務に注力することを求めました。具体的には、服用期間中のフォロー義務化などのやや大きな変更によって、薬局で薬を渡す以外のコミュニケーションが重要になりました。電話では限界があるため、チャットなどでの服薬フォローのサービスが次々と登場しました。とはいえ、「このままでは前述のように普及しないのではないか」、そんな不安を業界各社が抱えていました。

利害関係のない外部の視点が顧客起点を実現

――デジタルサービスがますます求められるのに、いざ提供しても使われない、と。

 そうなんです。その点、薬局横断かつLINE上で使えることは、普及を左右する大きな要因だと捉えています。サービス開始前の2020年11月からなの花薬局10店舗でテスト導入をしたのですが、当初の約40日間に延べ7,000人強のLINEユーザーにお勧めして、実に5割の方が友だち登録をされました。

――それは大きいですね。現状の手応えをうかがえますか?

 今年3月にスタートして5ヵ月、非常に幸先のいいスタートを切っています。友だち登録数は15万人を超え、既に調剤薬局のLINE公式アカウントとしては最大になりました。薬局によっては、専用アプリは利用率が3%ほどだったところが、LINEでは30%の方が友だち登録したり、処方箋送信の利用が10倍になったりする例が出てきています。逆に言うと、今までいかに使いにくいものを薬局の都合で押し付けていたのか、ということですね。

――ファーマシフトの企業サイトには、患者起点の仕組みを新たに構築する、といった方針が書かれていました。ただ、これまで患者の視点になりきれていなかった業界が、急にそのようにシフトするのは難しいのでは?

 そうですね、簡単とは言えないと思います。患者起点になりきれていなかった理由の一つに、業界内の当事者がサービスを開発していなかったことが挙げられます。電子機器や通信などの大手企業のBtoB部門が、クライアントである薬局運営企業に対し、現場の薬剤師にとって使いやすいシステムを開発していました。そうすると、導入のためには薬局向けの開発競争になり、機能追加や薬局業務の効率化が叶う一方で、患者側はどんどん使いにくくなることが多発していました。

 その点、今回は当事者である薬局の運営企業に、薬局と利害関係のない外部の視点が加わったことが大きいです。オプトデジタル側は、最初からユーザーを見ています。患者に使いやすいものを作ることが前提なので、これまでの薬局向けのシステム開発とは異なる思想でプロダクト開発を進めることができました。

 その分、薬局にとっては既存サービスのほうが使いやすいところも多少あると思いますが、患者の使いやすさを最優先に取り組んでいます。薬局運営企業に導入いただく営業の立場では、そこがネックになるものの、患者起点のサービスの重要性を啓蒙し、理解していただきたいところです。「一握りの患者にしか使ってもらえない高性能サービス」では、導入する意味がないですから。

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良質なサービス構築に必要なチーム内の「情報の透明性」

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

安成 蓉子(編集部)(ヤスナリ ヨウコ)

MarkeZine編集部 編集長
1985年山口県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。専門商社で営業を経験し、2012年株式会社翔泳社に入社。マーケティング専門メディア『MarkeZine』の編集・企画・運営に携わる。2016年、雑誌『MarkeZine』を創刊し、サブスクリプション事業を開始。編集業務と並行して、デジタル時代に適した出版社・ウェブメディアの新ビジネスモデル構築に取り組んでいる。2019年4月、編集長就任。プライベートでは2児の母。

★編集...

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MarkeZine(マーケジン)
2021/09/27 06:30 https://markezine.jp/article/detail/37267

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