LINE公式アカウント「つながる薬局」

株式会社ファーマシフト 代表取締役社長
多湖 健太郎(たご・けんたろう)氏1997年日本興業銀行(現・みずほ銀行)入行、2002年よりみずほ証券。2015年北海道への移住を決めメディカルシステムネットワークに入社、翌年取締役経営企画部長、2017年より経営戦略本部長(現任)。全国400店舗以上の調剤薬局と6,000件超の加盟医療機関を有する医薬品ネットワーク事業で成長を続ける同社にて、新規事業として2020年オプト(現・オプトデジタル)との合弁による、薬局のデジタルシフトを手掛けるファーマシフトを設立、代表取締役社長に就任(現任)。
――まず、どういったサービスを提供されているのかを教えてください。
我々は薬局業界における、「患者起点」の体験の創出に取り組んでいます。具体的には、患者を情報連携の中心に置き、薬局や医療機関とつながるLINEサービスを構築します。そこでは、サービス導入薬局ならどの薬局も、ポータルサイトのように、LINE公式アカウント「つながる薬局」を利用することができます。
通常、病院から処方箋をもらうと、院内薬局がなければ近隣の薬局に持ち込み、ある程度待って薬を受け取ります。その点「つながる薬局」は、LINE上で、複数の薬局からサービスを受けられることが特徴です。自分の過去の薬の履歴をまとめて管理したり、処方箋をスマホで撮って送信することで待ち時間を減らせたり、チャットで薬に関するアドバイスを受けたりすることができます。

――電子おくすり手帳のようなイメージですが、薬局共通という点がポイントなんですね。
そうですね、導入している薬局なら、患者はLINE上でA薬局ともB薬局ともやり取りできます。調剤薬局は、本当はいつも同じ店のみを利用するほうが服薬状況を一元管理できて望ましいのですが、かかりつけ薬局化が進まず、現実にはそういう方はまだ少ないですし、そもそも自分が利用している薬局の名前を意識されていない方も多いですよね。すると各所でアプリのダウンロードを勧められたり、既に入れたアプリを探したり、といったことが起きます。我々はそうした患者の煩雑さをなくし、情報を一元化するとともに、患者と薬局とのコミュニケーションを取りやすくして「かかりつけ薬局化」を支援します。
現在、調剤薬局を運営する7社で「デジタル薬局コンソーシアム」を結成し、自社薬局での活用と、薬局業界への理解・普及を進めています。業界全体のDXを推進し、薬局の立場から医療のバリューチェーン全体をアップデートして、新しい医薬プラットフォームを作ることを目指しています。
調剤薬局企業×オプトで業界全体のDXに着手
――御社の設立は2020年10月ですが、筆頭株主であるメディカルシステムネットワーク(以下、メディシス社)は、そもそも「なの花薬局」という薬局を全国430店ほど展開されている薬局チェーンなのですね。
はい。私自身、今はファーマシフトの業務が9割ですが、札幌に本社を置くメディシス社の経営戦略本部長も兼任しています。その立場では、他の薬局と同様にDXに直面する、一プレーヤーです。
――ファーマシフトの成り立ちと、多湖さんのご経歴をうかがえますか?
当社は、前述のメディシス社が51%、オプトデジタルの子会社であるRePharmacyが49%を出資する、ジョイントベンチャーです。発端は2019年末、メディシス社の執行役員である吉田孝仁が、デジタルホールディングス(旧・オプトホールディング)グループ執行役員の石原靖士さんにお会いしたことです。
当初は薬局に展開するサイネージ事業の相談でしたが、石原さんが各業界でLINEを活用したDXを推進されていることを知り、業界を挙げて患者に貢献できないかと、薬局共通のプラットフォーム構想が始まりました。もちろん、非常に厳格なセキュリティが求められる医療領域でLINEを活用するには、相当のハードルがありましたが、チームで乗り越えてきました。
私自身はみずほグループに勤務時代、2011年に札幌に転勤して顧客としてメディシス社を担当した縁で、2015年より同社に参画しました。吉田と石原さんが進めるプロジェクトには昨年半ばから関わり、新会社の設立に際し、ビジネスモデル構築や他社とのアライアンスに経験値がある私が代表に就くことになりました。
私は医薬領域に専門性があるわけではありませんが、薬剤師でもある吉田が副社長に就き、営業活動は医薬領域のネットワークとノウハウを活かしてメディシス社側のスタッフが担っています。一方、オプトデジタル側からも副社長を置き、またプロダクト開発は同社のエンジニアチームの技術力を全面的に信頼して、互いに持てるものを持ち寄って進めています。