SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究(AD)

広告も楽しんでもらえる場所である――サントリーが考える、YouTuberタイアップの利点

 マーケティングチャネルとして、YouTubeの重要度がますます高まっている。中でも、多くの企業が取り組みを本格化させているのが、YouTuberとのタイアップ企画だ。YouTuberタイアップ企画を多数展開しているサントリーコミュニケーションズの前田氏は、その特長を「広告であっても見たいと思ってもらえること」であると言う。YouTube活用の総合的な支援を提供するエビリーの和田氏ともに、サントリーがYouTuberとのタイアップ企画で大切にしているポイントを聞いてきた。

マーケティングチャネルとしてのYouTubeの位置づけ

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。

(左)株式会社エビリー kamui tracker事業部 マーケティング&インサイドセールス部 部長 和田洋祐氏(右)サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング部 デジタルコミュニケーショングループ 課長 前田真太郎氏
(左)株式会社エビリー kamui tracker事業部 マーケティング&インサイドセールス部 部長 和田洋祐氏
(右)サントリーコミュニケーションズ株式会社 デジタルマーケティング本部 兼 宣伝部 課長 前田真太郎氏

和田:エビリーの和田と申します。エビリーは、YouTubeデータ分析ツールである「kamui tracker(カムイトラッカー)」の提供をはじめ、YouTuberタイアップの実施支援やチャンネル運用の代行、YouTube広告の運用まで、YouTubeに関わる顧客課題に対して総合的な支援を提供している会社です。その中で私はマーケティングとインサイドセールスの責任者として、全体を見ています。サントリーさんのYouTuberタイアップ企画は普段から興味深く拝見しており、今日はお話できるのを楽しみにしていました!

前田:ありがとうございます。サントリーコミュニケーションズの前田です。サントリーコミュニケーションズには、サントリー内の様々な事業を横断して、広告宣伝やデジタルマーケティングを推進していく役割があります。現在私はデジタルマーケティング本部に所属しており、デジタル領域でメディアのプランニングや広告企画の推進などを行っています。

MZ:生活者にとっても、企業にとっても、YouTubeの浸透拡大はここ数年で著しいものがありました。マーケティングチャネルとしての重要度には、どのような変化がありましたか?

前田:年々YouTubeのパワーが増していることは実感していますね。ユーザー数と利用時間の増加を受けて、広告におけるタッチポイントとしての重要性も当然高まっています。もはや、YouTubeはひとつのマスメディアと言っても過言でないレベルになっていると個人的には思っています。

和田:弊社のデータから、YouTube上でタイアップ企画を実施する企業の数は、2019年から今年にかけて年間約1.6倍のペースで増えていることがわかっています。現時点では、2021年の実施企業数は4,200程になると予測を立てている状況です。

 YouTubeの最大の特徴は、細分化されたコンテンツが大量にあること。価値観や興味関心が多様化し、消費者によって刺さるコンテンツが細分化している今、単純な知名度に頼るのではなく、ニッチなカテゴリでより深くメッセージを届ける場として、YouTubeが選ばれているのではないでしょうか。

サントリーが考える、3つのYouTube活用法

MZ:YouTubeの活用と一口に言っても、様々な方法があると思います。サントリーでは、どういった目的で活用されていますか?

前田:YouTubeには3つの活用の仕方があると考えています。1つ目は、広告の出稿先としての活用です。消費者とのタッチポイントとして、テレビやラジオ、新聞などと同様“出稿先”のひとつに位置付けています。

 2つ目は、コンテンツの制作と展開です。我々が今注力しているところでもありますが、YouTuberとのタイアップコンテンツなどを企画・制作し、独自のコンテンツを展開していくという活用法があります。

 3つ目は、企業の公式YouTubeチャンネルを開設して、継続的に運用していくという活用法です。これに関しては、このところ注目され始めており、今後さらに拡大するのではないかと思っています。これまでは企業のYouTubeアカウントと言うと、いわゆるテレビCM素材の置き場になっているケースが多かったですよね。ですが、トヨタ自動車さんの「トヨタイムズチャンネル」のように、チャンネル自体に企画性を持たせて運用していく活用法が拡大しているように感じています。

 私たちが3年半程前に立ち上げた、サントリー公式バーチャルYouTuber「燦鳥ノム(サントリノム)」は、3つ目の活用法に近いです。企業の公式チャンネルとしてコンテンツを配信しながら、自然な形で商品やブランドの訴求をしています

YouTube特有の「案件」が喜ばれる文化

MZ:ここから、YouTuberとのタイアップ施策についてお話を伺っていきます。サントリーがYouTuberとのタイアップを企画する際、重要視しているポイントは何でしょうか?

前田:YouTubeでのタイアップ企画では、「YouTuberの皆様のチャンネルをお借りする」という意識を大切にしています。YouTuberとのタイアップだけでなく、インフルエンサーとコラボする際も同様ですが、「強制的に商品をおすすめさせられている」という印象を与えることは避けなければいけません。

 ですので、各YouTuberのチャンネルの世界観とブランドの伝えたいメッセージやイメージに共通する部分があるか、その方のチャンネルのコンテンツとして自然な形で表現できるかを軸に、企画とキャスティングをセットで考えています

MZ:YouTuberが配信されているタイアップコンテンツのコメント欄では、「案件もらえてよかったね!」といった、前向きなコメントも多数見かけます。広告でもポジティブに受け入れられる文化があるのでしょうか?

前田:そうですね。特に人気に火が付き始めたYouTuberの方がタイアップ企画を配信されると、祝福のコメントがたくさんついている印象があります。

 「燦鳥ノム」のチャンネルも、ファンの方々に応援していただきながら成長してきたと感じています。燦鳥ノムではじめてオリジナル曲を発表した時には、「オリジナル曲作ってもらえてよかったね、おめでとう!」と、温かいコメントをたくさんいただきました。チャンネル登録者がYouTuberを応援する、育てていくというのは、YouTube特有の文化だと思います

宅トレYouTuberとプレモルのコラボ施策

MZ:これまでに配信されたタイアップ企画の中で、特に高い成果のあった施策をご紹介いただけますか?

前田:今年4月に、ザ・プレミアム・モルツ(以下、プレモル)の広告企画として、YouTuberの竹脇まりなさんとのタイアップ企画を実施しました。竹脇まりなさんは、自宅でできるトレーニング動画中心に投稿されている宅トレYouTuberなのですが、月に1度ご自身のセカンドチャンネルで“チートデイ”の動画を配信されています。チートデイとは、「普段頑張っているから、今日は好きなものを好きなだけ食べて飲んで楽しむ!」というご褒美デイのようなものです。

 そしてプレモルでは、「ちょっと高級なビールにしようか」というメッセージのもと、「自分に対するご褒美としてプレモルを飲んでもらいたい」という意図で広告コミュニケーションを展開しています竹脇まりなさんの「チートデイで自分を甘やかす」というコンテンツと、プレモルで打ち出したかった「ご褒美時間」というテーマはマッチするのではないかと考え、お声がけさせていただきました。

MZ:なるほど。竹脇さんのYouTubeチャンネルの世界観とプレモルが訴求したいメッセージがぴったりハマったんですね。

前田:そうですね。この企画では、「みんなでチートデイを楽しもう!」という竹脇さんの声掛けのもと、焼き肉とプレモルを一緒に楽しむ様子をライブで配信していただきました。竹脇さんのサブチャンネルでの配信だったのですが、トータルで約12万の視聴回数を記録したほか、「私も一緒にやります!」「今私もプレモル飲んでます!」などのコメントがYouTubeのコメント欄やTwitterに寄せられました。通常の広告と比較すると非常に深いエンゲージメントが得られ、多くの方に実際にプレモルを体験いただくことができたと考えています。

MZ:生配信を選択された理由は、何だったのでしょうか?

前田:コンテンツの視聴数、再生回数を重視する場合は、見やすく編集した動画を配信するほうがよいと思いますが、「一緒にご褒美時間を楽しもう」という文脈の企画だったので、生配信のほうが向いていると考えました。

 

 この企画の成功要因は、竹脇さんがこの企画のためだけにチートデイを行ったのではなく、これまでもずっとやられてきたという点にあると考えています。ブランドとYouTuberの世界観を自然な形でコンテンツに落とし込むことが重要であると、改めて実感しました。

本質的なキャスティング・企画の裏にある情報収集

MZ:多数のYouTuberタイアップ企画をご覧になっている和田さんから見て、サントリーのこれらの施策の優れている点は何でしょうか?

和田:個々のYouTuberへの理解が素晴らしいです。一人ひとりのチャンネルの世界観や、どういったコンテンツが受けるのかをしっかりと理解された上で、企画、制作、効果検証をされている。ここまでPDCAを回せている企業様は、現状まだあまりいないと思います。

 YouTuberのキャスティングについても、単純にフォロワー数の多い方を起用するのではなく、自社とYouTuberに相乗効果が起きるような人選をされています。とてもプロフェッショナルですよね。グルメの領域で活躍されている方以外にも、多様なジャンルのYouTuberをキャスティングされているので、情報収集を綿密にされているんだろうな、という印象を受けました。

前田:私自身もチームのメンバーも、日頃からYouTubeはかなり見ています。運用をサポートいただいている代理店の方に企画をご提案いただいても、「この方知ってる」「このチャンネルも見たことある」とすぐに内容を理解できることが多いですね。だからこそ、各YouTuberの世界観に合わせた企画・制作が成り立っているのかもしれません。

見たいと思ってもらえる広告コンテンツを届けていきたい

MZ:現状、課題であると感じているところはありますか?

前田:さんざん人選と企画、ブランドとのマッチングが重要だと言ってきましたが、これは本当に難しいところだと思っています。企画テーマ、ブランドのメッセージ、人選がぴったりハマるところを見つけるために、日々模索しています。加えて、YouTube上でタイアップ企画がどんどん増えてきているので、他社とどう差別化していくかは今後より真剣に考えていかなければいけないと思っています。

和田:その点は多くの企業様が悩まれているところかなと思います。弊社の提供するYouTubeデータ分析ツール「kamui tracker」では、他社のタイアップ動画データを閲覧できるので、どんな人選・企画が良いかを調査することが可能です。また、YouTuberごとの「推定視聴回数」「平均エンゲージメント」「過去タイアップ実施状況」など詳細なデータもあり、最適なYouTuber選定に役立ちます。

MZ:最後に今後の目標を教えて下さい。

前田:これまでの話の中にもありましたが、本当に視聴者に楽しんでもらえるコンテンツとして広告をお届けできるという点がYouTubeの良さだと思っています。YouTuberとのタイアップ企画や公式チャンネルの運用などを通して、広告でありながら見たいと思っていただけるコンテンツを企画・制作していきたいです。

YouTubeデータ分析ツール「kamui tracker」の詳細や、YouTubeマーケティングのノウハウ資料・事例などはこちらからご覧ください。
kamui tracker紹介ページ

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
関連リンク
この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/10/29 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37296