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第106号(2024年10月号)
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MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

多様なユーザー行動を捉え広告配信を最適化!パソナテックのAdobe Marketo Engage活用

 生活者のマインドに変化が生じ、その影響は転職市場にも表れている。ITやエンジニア領域の人材サービスを手掛けるパソナテックでは、在宅勤務が可能なIT業界への転職希望の増加に対応すべく、MAツールの「Adobe Marketo Engage」を活かしてユーザー行動を可視化・分析。広告配信の最適化につなげている。9月7日(火)開催のMarkeZine Day 2021 Autumnでは、パソナテックとアドビから、同ツールの有効な活用例が紹介された。

BtoB、BtoCともに顧客行動の予想が困難に

 近年の生活者の多様化に加えて、昨年から今年にかけてのコロナ禍の影響で、顧客の行動はさらに予想困難な状態になっている。アドビのマーケティングスペシャリスト、虻川稜太氏はBtoBとBtoCそれぞれの事業者への自社調査を提示し、「いずれの市場でも『デジタルでの顧客の急増』『従来と異なる顧客行動』といった変化が起きている」と語る。顧客行動の予想が、今まで以上に難しくなっているのだ。

 同時に、情報収集だけでなく評価検討や購入に至るまで、デジタル上で推進する人が増えていることも特徴だ。マーケティングによるデジタルコミュニケーションの重要性が、極めて高くなっていると言える。

講演資料よりクリック/タップで画像拡大
講演資料より
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 そんな中、企業はどのようにマーケティング投資の効率を最適化し、顧客に価値を還元して事業成長につなげればよいのだろうか。ひとつの解が示されたのが、パソナテックのAdobe Marketo Engageの活用例を紹介した本セッションだ。試行錯誤の様子と成果を詳しく語ったのは、同社マーケティング責任者で「2021 Marketo Champion」を受賞している藤川友紀氏。この賞は、Adobe Marketo Engageを有効活用し、大きなビジネス成果を収めたマーケターに与えられるものだ。

(左)株式会社パソナテック 経営企画室 マーケティング責任者 藤川友紀氏(右)アドビ株式会社 DXマーケティング本部 マーケティングスペシャリスト 虻川稜太氏
(左)株式会社パソナテック 経営企画室 マーケティング責任者 藤川友紀氏
(右)アドビ株式会社 DXマーケティング本部 マーケティングスペシャリスト 虻川稜太氏

 ITとエンジニアリング領域で人材サービスを提供するパソナテックは、求職者と求人する企業を結び付ける、いわばBtoCとBtoBの双方の側面でマッチングを手掛けている。併せてAIやIoT、DX支援サービスなどのビジネス展開もしており、たとえばMaaS領域では、緊急時に要支援者の避難を助けるアプリ「防災HELPサービス」や、屋内と屋外をシームレスにつなぐ「屋内位置情報サービス」などを提供。エンジニアのキャリア構築と社会課題の解決にも邁進している。

コロナ禍でPV数が急上昇するも、新たな課題が

 「当社のマーケティングは、とにかく領域が多岐にわたっているのが特徴」と藤川氏。会社全体の最適化やブランディング戦略の他、デジタルマーケティングを中心に、認知から獲得、エンゲージメントまで一気通貫でマーケティング活動を展開している。施策は大きく短期と中長期に分けて捉えており、前者は新規獲得および売上と利益への貢献を目的にWebサイトの改善やデジタル広告最適化、MAやチャットボット活用、リテンション施策など。後者は認知拡大とブランディングを目的に、SEO対策や、オウンドメディアやSNSの運営、NPSを活用したサービス改善、エンゲージメント施策などを展開している。

 実は、同社のマーケティング体制は2018年に藤川氏が参画し、“一人マーケター”の状態から奮闘して作り上げたものだという。

 「入社時はデータが何もなく、終身雇用制度と分業制の組織文化ということもあり、サービス全体を把握するのに苦労しました。そのためカスタマージャーニーマップを作ることから始めたのです。

 とにかくあちこちの部署に足を運び、ヒアリングを重ねながら現状把握を行った後、次にメルマガのA/Bテストのように結果がすぐに可視化されやすい施策から少しずつ協力を得ていきました。マーケティングに関心を持ってもらえるようにと地道に取り組んできたことが、現在、部署を横断して連携し協力を得られる状況につながっていると思います」(藤川氏)

 そうして体制を構築しながら迎えた2020年。パソナテックの求人ページにかつてない動きがあった。4月に初めて緊急事態宣言が発令された際、PV数が一気に10倍近くに跳ね上がったのだ。非常に多くの人が、自分の仕事や働き方を考え直そうとしたことがよくわかる。全体のユーザー数や新規顧客、仕事応募数といった指標も、春を境にすべて向上していた。

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 だが、同時に大きな課題もあった。「これだけ注目が高くても、就業率は横ばいでした」と藤川氏は当時の状況を振り返る。

 求職行動が急激に活性化した一方で、コロナ禍の企業に与える影響によって、求人案件数は減少していた。この数のギャップに加え、テレワークのできる環境を求めて異業種からIT転職の希望者が殺到したことによるスキルのミスマッチも生じていたため、就業数が伸び悩んだのだ 。

 この状況を解決するため、藤川氏のチームでは「ユーザーの行動体験を最適化して、ミスマッチを改善すること」を目指し改善をスタートした。

Adobe Marketo Engageで実現を目指した3つの改善施策

 ユーザーの行動体験に着目した背景には、次のような事情がある。

 「理想的な状況は、どんな方にもマッチングする求人が潤沢にあることですが、求人を出すタイミングや内容、数の問題は状況的にすぐに解決はできません。そのため、求人数などに頼らず、マッチング率を改善するにはどうすれば良いのか、実際に就業に至るまでの入り口や経路を正確に把握し、ユーザーの状況をしっかり理解して、その行動体験を最適化することを目指すことにしました」(藤川氏)

 ここで役立ったのが、MAツールの「Adobe Marketo Engage」だ。当時は流入から就業までの一連のデータ連携ができておらず、各ユーザーを可視化できないことがネックになっていた。そこでAdobe Marketo Engageと広告効果測定プラットフォームのアドエビスを連携して、次の3つを実現することにした

(1)ユーザー行動をIDで一元管理して、流入から就業までを可視化すること
(2)正確に広告を評価し、投資最適化を図ること
(3)パーソナライズによる1to1コミュニケーションで就業率を引き上げること

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「なければつくろう」オリジナルIDの自動生成に着手

 続いてそれぞれの展開の詳細が、藤川氏から解説された。まず(1)ID連携によるユーザー行動の可視化だが、早々に思いがけない壁にぶつかってしまったという。Adobe Marketo Engageと自社会員データベースは連携していたため、アドエビスとつなげれば一気通貫の可視化が可能だと考えたものの、リード獲得用のフォームが2種類あることや、ユーザーが情報を更新したときのみデータ取得が行われる仕組みなどから、既存IDの活用ができなかったのだ。

 「悩みましたが、『なければつくる』の考え方で進めました。具体的には、Adobe Marketo Engageに備わっている『Marketo Forms 2.0 API』という自由度の高い機能を活用し、オリジナルIDを自動生成してデータ連携できる仕組みを実装しました」(藤川氏)

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 流入から就業までのユーザー行動を可視化した後には、(2)広告投資対効果の引き上げに取り組んだ。広告出稿を最適化し、ミスマッチを改善するとともに、より就業に貢献する広告を判別して、広告費のロスを防ぐ。その見通しは当初から立てていたが、前段でユーザー行動を可視化した結果、「CV数と就業率に単純な相関性がない」という思いがけない事実がわかった。CVやCPCなどの広告指標上は差がないように見える広告群でも、登録への貢献度は高いが応募につながりにくい、あるいは既存会員の接触が多く新規獲得につながっていない、など広告ごとの違いが明らかになったという。

 そこで、それぞれの広告が特に何に有効で、どこに改善の余地があるのかを明らかにし、チューニングを図っていった。結果、マッチング率が高く、応募までのリードタイムも短い広告により投資し、ROIを改善した

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広告配信と訴求内容の見直しでマッチング率が6倍に!

 そして(3)コミュニケーションの改善については、広告の配信内容やターゲットを見直すことで、マッチング率が6倍にも引き上げられた。ここには前段の、広告による違いを正確に把握したことがつながっている

 「複数の広告を分析した結果、ある広告は会員登録のCVは圧倒的に高いのに、その後の応募に貢献していないとわかっていました。つまり、流入者の希望エリアやスキルセットが求人案件に合っていないということです。その点を踏まえて接触するターゲットと訴求内容を変更し、応募につながるよう促しました」(藤川氏)

 同時にAdobe Marketo Engageを通して、Thanksメールや社内アラートもユーザーの属性別に自動分岐・自動配信ができるよう整え、かねて課題になっていた社内オペレーションの負荷も軽減した。

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事業成長のための次なる施策は?

 課題だったミスマッチを改善し、高いマッチング率を実現して、ユーザーにも求人を出す企業にも大きく貢献したパソナテック。

 「時代が変化しても、マーケティング活動で実現したい本質に変わりはないと思います。ですが、ユーザー行動が多様化すれば広告別にユーザーの反応は異なります。したがって、それを踏まえた広告の役割やメディアプランの見直しは不可欠です。また、数値データも単に高い低いで判断せず、何が起きているのかをデータから正しく理解することが大切だと実感しました。ユーザー理解と行動体験の最適化が、事業成長につながると考えています」(藤川氏)

 Adobe Marketo Engageを最大限に活かした一連の取り組みを踏まえて、さらに取り組みたいこととして、藤川氏は「既存会員のナーチャリング」と「オウンドメディア×Adobe Marketo Engageの連動によるエンゲージメント向上」を挙げる。

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多種多様なシナリオ展開で、顧客の成長を後押しするAdobe Marketo Engage

 ゴールをしっかり見定め、またチャレンジ精神をもってユーザーとクライアントに貢献したパソナテックの事例に続いて、アドビの虻川氏から改めて「Adobe Marketo Engage」の優位性が紹介された。同社は今年新たに「心、おどる、デジタル」というビジョンを打ち出し、デジタルテクノロジーによる事業支援を一層強化している。

 同ツールは、リード獲得から受注、またLTV最大化といったプロセス全体の進行を加速し、売上の向上を実現する。現在、グローバルで約5,000社の顧客を有し、550以上のテクノロジーベンダーと連携したエコシステムを形成。虻川氏は、パソナテックの取り組みを踏まえ、マーケティング費用対効果を高める上で役立つ特徴を次の3つのポイントにまとめる。

 「ひとつは藤川様のお話にあったように、同じページのCVでも流入経路を明確にできることです。これにより、精度の高い施策の実施が可能になります。次に、他のツールを通して得られるデータも含めて蓄積し、施策やコミュニケーションに柔軟に反映できる、企業固有の『カスタムフィールド』を設定できることです。3つ目は、顧客情報を一元管理して、最適なタイミングで最適な情報を届けられることです」(虻川氏)

 これらを前提に、多種多様なシナリオを自動で走らせることができるのが、Adobe Marketo Engageが事業成長に貢献する大きな理由だ。たとえば収益サイクル全体のトレンドを把握し、ボトルネックを解消するシナリオ、中長期的なナーチャリングのシナリオなどを柔軟に展開するほか、営業との連携や各種レポーティング機能も効果的に使われている。

 アドビでは、ほかにも多数の事例をサイトで紹介。これらも参考に、激変するユーザー行動をつぶさに捉え、確実な事業成長を実現する道を検討してはいかがだろうか。

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この記事の著者

高島 知子(タカシマ トモコ)

 フリー編集者・ライター。主にビジネス系で活動(仕事をWEBにまとめています、詳細はこちらから)。関心領域は企業のコミュニケーション活動、個人の働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/10/14 11:00 https://markezine.jp/article/detail/37316