アプリの継続利用がブランドとの長期的な関係性につながる
「ゆるく続けられる健康習慣アプリ」をコンセプトにしたSUNTORY+は、他のアプリと比べて使用継続率が高い。半年間にわたり約60%のユーザーが継続利用しているという。
継続につながっている理由は次の3つ。健康行動を気軽にできること、大学の研究機関の裏付けに基づいた生活習慣病対策になること、続けるとポイントがもらえて飲料と交換できることだ。
「お客様のいろいろな行動データを分析して、継続されない要因を徹底的に洗い出し、UI/UXの改善を行っています。アプリを使うことで健康を増進していただき、当社の健康飲料を体験いただき、さらにアプリを使い続けていただく。このサイクル化を意識しています」(篠崎氏)
また、SUNTORY+導入企業の人事・総務担当者に「SUNTORY+Navi」というBIツールも提供。従業員がどれだけアプリを使っているかを可視化できるようになっているという。消費財メーカーとしての新たなデータドリブンマーケティングの形について、篠崎氏はこのようにまとめた。
「我々はメーカーとして健康飲料を提供していますが、製品だけでなく、アプリを中心に顧客の健康生活に併走するようなサービスへと進化させることで、さらに継続して飲用いただけるブランドにしていきたいと考えています」(篠崎氏)
心に刺さるデジタル時代のコミュニケーション事例
コミュニケーションを取り巻く環境の変化に目を向けて見ると、情報量の増大はマーケターでなくとも多くの人が感じていることだろう。人間が処理できないほどの情報が加速度的に増える中、消費者の情報接触はテレビ広告視聴のような受動的な姿勢から、より能動的な形に変化している。
また、従来のメディアでは、企業側が伝えたいメッセージがコンテンツに落とし込んで届けられていた。しかし、スマホやタブレットを通して能動的に視聴する現代においては、消費者にとって有益あるいは楽しむことができるコンテンツにする必要がある。
そんなデジタル時代のコンテンツ事例として、篠崎氏は1つの動画を紹介した。シェアカレンダーアプリ「Timetree」と共同で制作したザ・プレミアム・モルツの動画広告である。この動画は、サントリーの公式Twitterアカウントで投稿したほか、YouTube広告でも配信された。現時点で500万回以上の再生回数を記録するなど成果は上々だが、篠崎氏は「何よりも嬉しかったのは、皆様からいただいたコメントです」と話す。
「涙が出そうでした、いろいろ考えさせられました、たまには夜2人でプレモルを飲みながら語りたいなと思いました、私も素直になろうと思いました、仕事の途中で出てきたプレモルのCMが素敵で泣けました……などなど、嬉しいコメントをたくさんいただきました。多くのお客様に深く共感いただけたと思っています」(篠崎氏)
デジタル時代のコミュニケーションも、方法によっては深く心に刺さるものになることを証明する事例である。
