1つのメディアで興味喚起~購買が完結
グローバルの月間アクティブアカウント数が10億以上にまで成長したInstagram。国内の月間アクティブアカウント数は2019年3月時点で3,300万を突破し、その後も増え続けている。
今年9月からは日本において大規模なコンシューマー向けマーケティングキャンペーンを展開し、利用者のさらなる拡大を目指している。「LOVE YOUR LOVE 好きっていいね。」。「好き」は誰かと比べるものではなく、自分にとって本音の “LOVE(好き)” を大切にしようという想いが込められている。
Instagramは利用者が好きな人やモノに出会う場所になっており、その「好き」を「欲しい」にまで動かす。Facebook社では、Instagramのビジネスにおけるこのような価値を「好きと欲しいをつくる」という言葉で表現している。
本セミナーの基調講演「好きと欲しいをつくる Instagramの進化」に登壇したFacebook Japan 代表取締役の味澤氏は、Instagramがどのようにして好きと欲しいを作り出すのか、最新の調査データにも触れながら説明した。
「これまでのマスメディアを中心としたマーケティングでは、AIDMAやAISASといったファネルが想定され、生活者はファネルの各段階で異なるメディアに接触し、比較的長い時間を経てアクションを起こすとされていました。これに対しInstagramでは、利用者ははじめから『好き』を発見したいというマインドセットをもち、情報収集しています」(味澤氏)
Instagramは高度なアルゴリズムによって、それぞれの利用者にパーソナライズされた商品やサービス情報を届ける。だからこそ認知した瞬間に自分ゴト化され、欲しいという気持ちが高まるのだ。実際に利用者の83%が「Instagramで商品やサービスを見た後にアクションを起こしたことがある」と回答している。
さらに、そこからシームレスに商品の詳細や購入サイトへ遷移できる仕組みを提供。Instagram上の投稿に商品名や価格などの詳細をタグ付けできる「商品タグ」から詳細を閲覧している人は昨年比65%増と、浸透していることがうかがえる。
Facebook社ではInstagramを通じて届けられる購買体験を「発見型コマース」と呼び、別セッションにて詳しく紹介している(アーカイブ配信あり:視聴期間は2021年12月31日まで)。
利用者のインサイト分析で、広告効果を高めた例も
次に味澤氏は、ビジネスが「好きと欲しいをつくる」ために、Instagramが提供する3つの「できること」説明した。
(1)偶発的な発見を生み出せる
日本の利用者はとりわけ発見する行動に積極的で、グローバル平均に比べ5倍多くハッシュタグ検索を活用している。さらに、利用者の42%が「興味のあるブランドをもっと知るために、プロフィールページにアクセスする」と回答しており、過去の投稿も含めて、ブランドのより深い情報・世界観を感じようとしていることがうかがえる。
より多くの偶発的発見を生むために、広告主企業とFacebook社が協業するケースも増えている。たとえばパナソニックの高級トースター「オーブントースター ビストロ」では、新モデルのキャンペーンをInstagramを中心に設計。Facebook社が保有するデータを活用しながら利用者のインサイトを分析し、メディアプランやクリエイティブ制作に活かすことで、前モデルの2倍の売上を達成した。事例の詳細は別セッションにて解説されている。
(2)コミュニティを通じた共感をつくれる
ブランドからの一方的な情報発信だけでなく、インフルエンサーやコミュニティを通じて情報が広がることで、より多くの「好き」と「欲しい」が生まれていく。講演では、「フォローしている美容家のInstagramライブで紹介されていたコスメが気になった」「ファッション系インスタグラマーの投稿を保存しておいて、店頭で見ながら買っている」といった利用者の声が紹介された。
(3)多面的にブランドストーリーを伝えられる
プロフィール、ショップ、ストーリーズ、IGTV、リールといった様々なツールを活用できる。調査によると、利用者の85%が「フィード以外のツールを情報の発見のために使っている」と回答。多様な使い方が定着している。
Facebook社ではこうした利用状況を踏まえ、複数のメッセージ、複数のクリエイティブを組み合わせながら、より深いストーリーテリングを行うことを推奨している。
AR/ VRがショッピング体験を進化させる
最後に味澤氏は、より充実したショッピング体験に向けたテクノロジーへの投資について言及。米国では今年から、AIを活用した新たなビジュアル検索機能のテストが開始された。また、ARを通じて商品を事前に体験できる機能の開発も進んでいる。Facebook社ではAR/VR関連のグローバル市場規模は2025年までに約6倍に成長すると予測しており、マーケティング分野においても、没入感を活かしたブランドとのエンゲージメント強化を実現していくということだ。
次に紹介するセッションでは、各ツールのアップデート&ビジネスにもたらす効果を紹介!
ストーリーズ、リール、ライブ、ARの新機能・活用ポイント
続いての講演「好きと欲しいをつくる Instagramのイノベーション」では、製品部門の共同責任者アシュリー・ユキ氏が最新のプロダクト戦略を紹介した。
ユキ氏は「Instagramはマーケターの皆さんにとって、ビジネスを前進させるのに大事な場所です」と解説。Instagramはコミュニティとビジネス、クリエイターが共存する場であり、ビジネスが自然な形で受け入れられていると語る。実際に、ビジネスアカウントをフォローしている利用者の割合は90%に上る。
先に触れたとおり、Instagramの各種ツールは利用者に浸透しており、ストーリーズを毎週利用する人は91%、長尺動画を毎週利用する人は71%に達している。ユキ氏は講演において、クリエイティビティを高める様々な機能を紹介。ここではストーリーズ、Instagramライブ、リール、ARの4つについて、最新動向をまとめていく。
ストーリーズ広告のカギはインタラクティブ性
利用者とブランドがより良い関係を築くために、Facebook社が近年特に力を入れて開発している機能の一つがストーリーズだ。活用する際にはインタラクティブ性を発揮することが重要であり、アンケートスタンプ機能を使った広告は使わない広告と比較して、視聴時間が3倍になることがわかっている。
Instagramライブをよりクリエイティブに
これまで1人に限られていたライブ配信へのゲストの招待が、最大3人まで可能に。ほかのクリエイターやビジネスとの共創の幅が広がった。また、ライブをよりインタラクティブな場にできるよう、視聴者のQ&A投票機能を追加。視聴者はハートボタンをタップすることで質問に投票できる。さらにライブ配信の日時を事前に予約する機能や、登録した利用者にリマインダーを送れる機能も追加される予定だ。
リール広告もローンチ
リールは約1年前に提供開始された短尺の動画フォーマットだが、新機能が次々と追加されている。たとえば「リミックス」は、既存の動画を基に自分のリールを作成できる機能。トレンドの動画にブランド独自のクリエイティビティを載せることで、新しい交流を生み出すことができる。また「リール広告」によって、ブランドがエンターテインメントを求める人々にリーチすることも可能になった。
ARの活用で大きな成果が
ARはブランド体験を拡張するテクノロジーになり得る。すでに韓国の自動車メーカー ヒュンダイは、プロモーションにARを活用。韓国のZ世代の間では「自家用車をキャンピングカーのようにして使う旅行スタイル」がトレンドになっている。同社はこのトレンドを踏まえ、自社製品の魅力をARを用いて訴えかけることで、広告想起が16.5ポイント上昇、購入意向が3.6ポイント上昇という結果を残した。
ユキ氏はこのほか、Facebook社が進めるクリエイター支援についても言及。InstagramやFacebook上でクリエイターが新しい方法で収入を得られるようにする各種プログラムに、2022年末までに10億ドル以上投資する方針が示された。
続いて紹介するセッションでは、ブランド広告の効果を可視化する手法の紹介、そしてInstagramで効果を発揮するクリエイティブの「三原則」が明かされます!
ブランド広告の効果を高める「クリエイティブの三原則」
「好きと欲しいをつくる はじめよう、Instagramでブランド成長と獲得」のセッションでは、Instagramを活用したブランディングのメリットと効果的なクリエイティブを作るコツが共有された。
はじめに自身もブランドマーケティング、獲得重視マーケティングの両方を経験してきた同社の宇津井氏が、マーケターのよくある疑問に答える形で、ブランド広告の重要性を説明した。
宇津井氏が最初に話題としたのは「なぜブランド広告が必要なのか」。端的に言えば、安定的な成長のために欠かせない。獲得重視の広告のみを配信し続けた場合、潜在層を刈り取ってしまうと効果が悪化し始め、やがて獲得単価が下がらなくしまうことが少なくない。ニールセンの調査によると、コロナ禍でビジネスが打撃を受けた中でも、継続的にブランド報告を続けた企業は、そうでない企業に比べて回復スピードが2倍以上早かった。ブランド広告は、ビジネスが窮地に追い込まれた時の底力にもなるのだ。
しかしながら、ブランド広告は効果が可視化しにくいという悩みが聞かれる。これに対して宇津井氏は、「可視化のための手法が開発され、成功事例も出てきている」と事例を紹介。
たとえばNTTソルマーレの電子コミック・電子書籍ストア「コミックシーモア」では、獲得広告に15%分のブランド広告予算を追加したキャンペーンと、獲得広告単独で実施したキャンペーンを比較した。すると前者では、会員登録が2.4倍増加、獲得単価が約半分になったことがわかった。このように、ブランド広告に適切に予算を投下すると、獲得広告の土台を押し上げることができる。
こうした傾向は幅広い業界に見られる。Facebook社が172のブランドを2年間にわたって分析したところ、ブランド施策を長期的にすればするほど、どの業界でもROASが上がっていくことが証明されたという。
では、Instagram上でブランド広告を展開するメリットはどこにあるのか。まずは前述の通り、ビジネスが自然に受け入れられる基盤があり、潜在層を掘り起こすのを得意としている。また、ビジュアル中心のクリエイティブで多面的なストーリーが展開できる点も強みだ。そして、Instagramでの広告出稿では目的に合わせてファネルを選べるが、獲得キャンペーンとリーチ目的配信は重複率が10%以下に抑えることが可能になっている。
動画クリエイティブのコツ
ブランド広告にチャレンジするのであれば、少しでも高い成果を挙げたい。そう考えた時力を入れるべきなのが、Instagramに最適化されたクリエイティブを用意することだ。クリエイティブがデジタル広告の成否を左右することは、すでに様々な調査で示されている。
Instagramにおいても、テレビCMの素材をそのまま配信した場合と最適化されたクリエイティブを配信した場合を比べると、ファネルのすべての段階において、最適化されたクリエイティブのほうが高いパフォーマンスを発揮した。
同社の田内氏は、クリエイティブ制作の際には「利用者の視聴態度を踏まえることが重要」と解説。少なくない利用者が、他のことをしながら操作したり、他のアプリと切り替えながら視聴したりしている状況において、ブランドのメッセージを的確に伝えるための3原則を紹介した。
原則(1)冒頭2.5秒勝負 起承転結なし
冒頭のみ視聴された場合でもメッセージが伝わるよう設計する。その後の尺はメッセージを伝えきることに使う。
原則(2)縦型のスクリーンをフル活用
モバイルデバイスの縦型スクリーンをフルに使って表現する。スマートフォンのスクリーンはそれほど大きなものではない一方、顔からデバイスまでの距離が近いため、全画面を使うことでインパクトを創出できる。
原則(3)音がなくても伝わる設計
一部の利用者は音声オフで視聴していることを常に念頭に置く。字幕のようなかたちでメッセージを出すのがお勧め。
「まずはこの3つを満たして、最適化されたクリエイティブ作っていただければと思います」と、田内氏。本セッションではさらなるステップとして、より広く・効率的にメッセージを伝える方法を紹介している。その詳細はアーカイブ動画(20:49~:視聴期間は2021年12月31日まで)でご確認いただきたい。
以上、House of Instagram 2021の様子を駆け足でレポートしたが、ここでは取り上げられなかった内容が数多くある。各セッションの動画はアーカイブ配信されているので、ぜひご視聴いただきたい。
視聴期間は2021年12月31日まで!House of Instagram 2021のアーカイブ配信はこちらから(視聴登録不要)