SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

世界的なDXの加速にともなうCXの変化 グローバル化が求められる時代の顧客との向き合い方

 コロナ禍で企業のマーケティング活動におけるDXが急速に進んだ。DXの加速にともない、CX(顧客体験)はどのような変化が起きたのだろうか。MarkeZine Day 2021 Autumnに登壇したWovn Technologiesの早坂淳氏は「タッチポイント」「コミュニケーション」「テクノロジー」の3つの観点からCXの変化を解説し、ビジネスを成長させるためのグローバル化とそれにともなう顧客との関わり方について語った。

オンラインシフトのトレンドから見る3つの変化

 従来は対面で行われていた仕事がオンラインシフトし、それにともなったコミュニケーションツールの利用など様々な場面でDXが加速したという企業は少なくない。

 これは企業のマーケティング活動においても同様であり、DXが推進されたことよってCX(顧客体験)はオフラインが主流だった時代と比べて変化が起きている。早坂氏は、このCXの変化を「タッチポイント」「コミュニケーション」「テクノロジー」の3つの観点から考察する。

Wovn Technologies Solution Consulting Section Head 早坂淳氏
Wovn Technologies Solution Consulting Section Head 早坂淳氏

 まず1つ目は「タッチポイント」の変化。代表例として挙げたのは、イベントのオンラインシフトだ。Peatixの調査データを基に具体的な変化を語った。

【クリック/タップで拡大】
【クリック/タップで拡大】

 「主催者側がウェビナーツール等を活用し、オンラインシフトしたことで運営工数の削減や時間の有効活用といったメリットを享受できるようになった一方、参加者側の半数が参加できなかったことがあるというデータもあります」

 調査結果からは「開催日時を忘れていた(35%)」「リモートワーク中に家族のケアが必要になり参加ができなかった(23%)」といったことが障壁となっているとわかる。

 コロナ禍でオンラインイベントのメリットとデメリットそれぞれが浮き彫りになった結果、コロナ後のイベント開催に関して、71%が「オンライン・オフラインそれぞれ開催したい」という意向があることから、状況に応じてオフラインでも開催するハイブリッドへと変化すると早坂氏は語った。

顧客とのコミュニケーションの「非属人化・自動化」が進む

 2つ目の変化として挙げた「コミュニケーション」は、BtoBマーケティングにおける顧客コミュニケーションに着目して解説した。

 リモートワークとオンライン会議が浸透し、スケジュールを効率的に組めるようになった。「一方で、企業は顧客との商談にかけられる時間も短くなっている」と早坂氏。そこで重要になるのは、短い時間でニーズや課題を引き出し、短時間の商談でも製品を訴求することだ。

 そこで「Webサイトでわかりやすく気づきを与える」「eBookを充実させる」「セミナー動画のアーカイブを掲載する」といった非対面の環境でコミュニケーションのストーリーを構築することが重要だと述べた。

 また、コミュニケーションの顕著な変化の例としてチャットボットツールのシェアの増加を挙げている。Statistaの調査データによれば、チャットボットツールの市場規模は2021年時点で83億ドルとなっており、2027年には454億ドルになると予測されている。

【クリック/タップで拡大】
【クリック/タップで拡大】

 この背景には、コミュニケーションを行う人的リソースの削減という観点もあるが、顧客の観点からもメリットが大きいことからニーズが高まっていると述べる。

 「チャットボットツールは顧客向けのヘルプデスクやFAQ対応、見積もり作成などに活用され、問い合わせチャネルの新たな手段として活用が進められています。また、従業員向けとして社内のITサポートや情報問い合わせのチャットボット活用といった例も増えています」

 このように、コミュニケーションにおける属人化の解消やプロセスそのものの自動化が進むと早坂氏は考察している。

データ連携・AI技術の普及がもたらした“One to One”

 早坂氏が3つ目の変化として挙げたのは「テクノロジー」の変化だ。CXを最適化するために画像認識やOCR、自然言語処理などAIを活用するシーンが増えてきている。金融業であればAIの不正検知システムが被害削減に貢献しており、医療業界においては人間の目視では発見が難しい症状を画像認識技術によって検出を行うといった事例がある。

 こうしたAI技術の普及はBtoBのビジネスシーンにおいても普及しており、早坂氏はコミュニケーションの変化でも挙げたチャットボットツールを例に、利用シーンを説明する。

 「既に利用されている方も多いと思いますが、自動応答による無人対応などが挙げられます。顧客情報をDMPなどに蓄積し、そのデータを基にMAツールへ反映させ、最終的にチャットボットツールとつなげるなど、全てのデータが接続されたエコシステムにより実現できる仕組みです」

 限られた時間の中で顧客とのコミュニケーション時間を有効活用するためにテクノロジーが活用され、現在では顧客情報を基にしたOne to Oneでのコミュニケーションもチャットボットツールで可能になっていると語った。

まず取り組むべきは「コンテンツのオンラインシフト」

 顧客とのタッチポイントやコミュニケーション、テクノロジーの変化によって、まず企業が対応すべきはコンテンツのオンラインシフトであると早坂氏は述べる。

 「Webサイトで企業が発信すべき情報や企業のビジョンやミッションといった理念の表現、サービス紹介やFAQの充実など、コンテンツのオンラインシフトに取り組めているでしょうか?

 製品マニュアルや営業ナレッジ、FAQなどをPDFではなくWebコンテンツ化することにより、どういったコンテンツにアクセスがあるのか、場所や企業情報といったデータが取得できるようになります

【クリック/タップで拡大】
【クリック/タップで拡大】

 加えて、情報発信のリアルタイム性の向上や、さらに必要なコンテンツの分析といったことにも活用できると強調。またビジネスの機会を国外に拡張できるメリットも提示する。

 「オンラインシフトには様々なメリットがありますが、そこで作成したコンテンツにアクセスするのは日本人だけだと考えていないでしょうか? あるいはグローバル化の潮流から、なんとなく英語への対応だけを行っていませんでしょうか?」

 早坂氏はサイトの言語対応をオンラインシフトの課題として提起し、その裏付けとなる調査データを示した。

 ニールセンの調査データによれば、世界のインターネット利用人口の中で日本語を利用しているユーザーはわずか3%程度。そして、英語のユーザーは25%、そして、非英語圏の7言語が46%を占めている。世界の主要な150サイトは平均33言語をサポートしていると言われており、これらのデータから早坂氏は「オンラインシフトに加えて多言語化への対応がビジネスを成長させる上で重要だ」と語る。

 「Eurobarometerのアンケート調査によれば、19%のユーザーはWebサイトを閲覧したことがなく、言語の選択肢がある場合であれば9割のユーザーが母国語で閲覧することを好むというデータがあることがわかります。さらに、42%のユーザーはECサイトなどにおいて母国語以外のサイトでは購入したことがないという回答結果がでています」

 言語の壁の排除はビジネスをグローバルに広げていくことにつながる。そして、言語の壁による情報格差を失くすことは「人や国の不平等をなくす」というSDGsの10番目の目標へとつながると早坂氏は語った。

多言語化対応は“今後のCX/EXの価値向上の起点”

 サイトの多言語化は、仮にマーケットが海外にない場合でも、在留外国人ユーザーの体験価値を向上するメリットがある。日本人と同様に母国語で日本のサービスが受けられるようになるのだ。また、早坂氏は顧客となるユーザーだけでなく、外国人従業員のEX(従業員体験価値)の向上も見込めると述べる。

 「オンラインシフトに対応するためには、まずは前提として顧客とのタッチポイントやコミュニケーションの最適化を図り、そこで取得できる様々なデータをエコシステムにつなぎ合わせること。これにより、ビジネスの成長度合いに見合うCXの拡張性が担保できます。

 それに加え、様々な人や言語、文化を考慮した顧客との関わり方をオンラインで実現させることが重要だと考えています。国が違えば考え方も商習慣も異なる中で、多言語化対応を起点にそれぞれ最適化を進めていくということが、これからのCXやEXとの向き合い方だと弊社では考えています」

多言語化の壁は“たった1行”で乗り越えられる時代に

 Webサイトの多言語化によりビジネスのグローバル化の推進や外国人従業員向けのコンテンツの充実など様々な価値がある一方で、実際に自社のWebサイトの多言語化を検討したとき、サイト構築や翻訳といった様々なハードルを感じる担当者も少なくない。

 従来であれば、日本語の元サイトを複製し言語別に翻訳したコンテンツでWebサイトを制作していく。そして、更新のたびに各言語別のサイトの保守・運用が発生する。また、翻訳のコストも言語ごとに発生することが障壁になりうる。

 早坂氏はその解決手段としてWovn Technologiesが開発するWebサイト多言語化ソリューション「WOVN.io」を紹介した。

 「WOVN.ioはWebサイトを多言語化するソリューションです。たった1行のスクリプトを共通ヘッダに挿入するか、Webサイトにライブラリとして導入することで、元言語データを吸い上げて機械翻訳をかけ、多言語化することができます。

 言語別のサイト開発は不要であり、言語ごとの翻訳コストも圧縮可能です。翻訳内容の確認やブランディングの観点で表現の調整などの体制は必要となりますが、ゼロから翻訳するコストがかからないというメリットもあります」

 WOVN.ioは、既に国内でも導入事例が多数ある。本セッションではその一部を紹介した。

活用事例(1):ヤンマーホールディングス

 ヤンマーホールディングスでは、ブランドガバナンスの徹底を目的にWOVN.ioを導入している。同社はグローバルでの認知度向上やブランド力強化を目指す上で、各国別のWebサイトのコンテンツ不足に課題を感じていた。そこで、一元的に多言語情報を管理すべくWOVN.ioを導入し、各国サイトの翻訳業務の効率化に成功。国別のグローバルサイトに加えて、社内イントラネットの多言語化までを短期間で実現でき、全グローバル拠点での情報発信の強化と、情報の公平性・平等性の担保という効果を得た。

活用事例(2):三菱UFJ銀行

 三菱UFJ銀行では、増加する外国人の顧客に向けたCXの価値向上という観点から多言語化をすべくWOVN.ioを導入。同社のインターネットバンキングサービスである「三菱UFJダイレクト」にWOVN.ioを導入することで、莫大な開発リソースをかけることなく迅速に多言語化を実現した。在留外国人ユーザーの利用シーンに見られる「日本語での会話に支障はないが、複雑な金融サービスの情報を読み書きする自信がない」といった課題の解決に役立った。

 国内のコミュニケーションが優先され、後回しにされがちだったコンテンツの多言語化。新しい生活様式が広まり、オンラインシフトが本格的に進んだ現在は、コンテンツの多言語化、ひいてはグローバルビジネスの推進を検討する契機にもなっている。

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2021/10/22 10:00 https://markezine.jp/article/detail/37483