よく見る構造は飽きられる…成果が出るCMの作り方
現在、toBのCMにおけるベストプラクティスは、「Teacher & Learner」フレームとされている。登場人物を「教える人」と「学ぶ人」の対立構造にし、使うことのメリットやベネフィットを解説していく方法だ。

ツールであれば、それを使っていない上司に、使っている若手がそのお得さを伝えていくようなパターンである。このフレームは便利だが、ここにも落とし穴があると山﨑氏は語る。
「フレーム自体は優れているのですが、多発すると形骸化してしまいます。要は『よく見るな、またか』と飽きられてしまうわけです。そうなると、コミュニケーションとしての強みがなくなっていきます。『既存市場CM』ならまだよいのですが、ともすると4番目の『無視されるCM』に落ちてしまうという罠があるので、ここには気を付けて作っています」(山﨑氏)
何ももたらさないCMになることを避けるためには、「ベネフィット=他のプロダクトにない強い便益」が何なのかをまずクリアにすることが重要だ。そしてベネフィットは、一方的に押し付けるものになってはいけない。押し付けにならないために、コミュニケーションを考え抜く。良いCMは、このようなプロセスから生み出されている。
山﨑氏は、ベネフィットを正しく伝えられるコミュニケーションとしての条件を、「ベネフィットが強化される演出」と「今日見たCMは?で思い出せるか」だと定義している。「コミュニケーションとベネフィットのバランスが、5対5なのか、4対6なのか、3対7なのかなどは、その都度考えます」と語るように、タイミングや伝えたい内容によって変化させていくことが大切だ。
toCとtoBで違う「プロセスの長さ」
メディアプランニングにおいて、toCとtoBにはその構造にいくつかの違いがある。
toCのアプリを例とすると、市場からマーケティングによって興味を喚起された人が、App StoreまたはGoogle Playでアプリをダウンロードし、プロダクト体験を通じ、継続にいたる。これが基本的な構造だが、toBではどうか。山﨑氏は、「The Model方式」で説明する。

「市場でマーケティングを通して、ネットショップを開設したい人、試してみたい人がリード顧客になります。その後、インサイドセールスを通じて商談をかけ、フィールドセールスが入って受注します。受注した後には、カスタマーサクセスが入って継続をします。また、マーケティングを通してアウトバウンドの問い合わせがあれば、アウトバウンドセールスが入って商談以降の流れに乗せていくルートもあります。
toBだとtoCと違って認知からのリードタイムはとても長いですし、沢山のプロセスがあります。お客様にSTORESを選んで使っていただき、満足して継続していただくために、複数のチームが連携しながらビジネスをするモデルになっています」(山﨑氏)
山﨑氏は、「ただ、各工程のベネフィットを統一するという意味では重視すべきポイントは変わらない」と付け加える。構造は違えど、toBとtoCの本質的な共通点がそこにあるのだ。