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MarkeZine Day 2021 Autumn(AD)

テレビCMで商談数が2倍に――会えない時代におけるSATORIのBtoBマーケティング戦略とは

 対面接触が難しくなり、これまで以上にプロモーション戦略の工夫が必要となっている。特にBtoBでは対面や訪問での地道な開拓にとどまらず、マスへの広報・広告活動を行う重要性が増してきた。マーケティングオートメーション(以下、MA)ツールを提供するSATORIは、テレビCMとセールス・マーケティング施策を組み合わせて成果を上げたという。MarkeZine Day 2021 Autumnで、SATORIの相原美智子氏が同社のプロモーション設計とMA活用について解説した。

MAツール「SATORI」を使った顧客開拓

 SATORIは純国産MAツールを開発し、創業から6年で1,000社を超える企業に導入されている。同社マーケティング部部長兼プロモーショングループグループ長の相原氏は、「『SATORI』のユーザーは私たち自身」という経営方針の通り、自ら「SATORI」をマーケティングに活用している。

 「実際に私どものチームは『SATORI』を活用し、リード獲得から、商談、受注までを創出しています」(相原氏)

SATORI株式会社 マーケティング部 部長兼プロモーショングループ グループ長 相原 美智子氏

 続けて相原氏は、同社における「SATORI」活用の流れを話し始めた。同社では、Web広告や展示会、イベントなどで顧客との接点を作ったのち、顧客の検討フェーズに合わせて「SATORI」でアクションを仕掛けているという。具体的には、匿名顧客に対してはプッシュ通知やポップアップ。実名顧客に対しては、メールマガジンの自動配信や、興味関心に合わせたセグメントごとのセミナー案内などのアクションがある。

 それらに対する見込み顧客の反応に合わせ、セールス部門によるアプローチを行っている。「SATORI」をハブにコミュニケーションの質を高め、関心のない顧客へのアプローチを防いでいるのだ。

プロモーションの課題は「決裁層、経営層への認知」

 SATORIはMAツールのローンチ以降、地道なプロモーション活動で導入企業を増やしてきた。転機を迎えたのは2年前の2019年だ。導入企業が500社を突破し、中小企業中心だったところから徐々にエンタープライズの受注も増えてきていた。資金調達を行ってさらに事業のドライブをかけていくフェーズにあった頃、同時にプロモーションへの課題を感じていた。

 きっかけは「SATORI」の認知率を調べた独自調査だ。アンケートを実施したところ、900名のうち3.55%、わずか30名程度にしか認知されていないという結果が出た。「知っているMAツール」の欄には、外資系の競合サービスが名を連ねていたという。

 「この結果を見て、当社のサービスがまだ知られていないということを痛感しました。当時のセールス部門責任者にも『ツールが有名じゃないからコンペに呼んでもらえない』と言われましたし、インサイドセールス部門担当には『名前を知られていないツールだと、展示会で名刺交換しても後日のお電話がしにくい』という話をされたことを今でも覚えています」(相原氏)

 特に認知率が低かったのは決裁層、経営層だ。市場が急速に拡大し、競合が力を増してくる中で、「SATORI」の認知拡大が急務であることがこの調査で浮き彫りとなった。そこで、前職でマスプロモーションの経験があった相原氏ともう1名のチームが新たに編成され、「主に決裁者の認知をアップさせる」ミッションで新しい取り組みがスタートした。

 KPIとしたのは「認知率(純粋想起)を3.55%からまずは5%まで引き上げること」「問い合わせ数の純増」「自社セミナーでのアンケート結果で広告接触を向上させる」「広告施策と『SATORI』の指名検索流入を相関させる」の4点だ。

 「広く認知をさせるため、これまでやってこなかったことに積極的に取り組みを開始しました」と相原氏。具体的には、雑誌「Forbes JAPAN」とコラボレーションをしてムック本を制作し、展示会やイベントで配布した。

 これまでの地道な顧客開拓にとどまらず、コーポレートアイデンティティやブランドイメージを刷新して世に発信していくことで、KPIとしていた4点もすべて達成し、特に認知率は3.55%から5.1%へと上昇した。

圧倒的な認知獲得のため、テレビCMに挑戦

 認知施策が少しずつ効果を出し始めたタイミングで、同社は新たな施策としてテレビCMへのチャレンジを決めた。

 当時、純粋想起率(認知率)は3.55%から5.1%に上昇していた。しかし「あなたの知っているマーケティングオートメーションツールはありますか」という質問では、「SATORI」はまだ1位に届いていなかった。

 「決裁・決済者への圧倒的な認知が必要であり、まずは国産ツールとして絶対的な存在感をつくることが大切だと改めて認識しました」(相原氏)

 「SATORI」だけでなくMAツール自体をまだ知らない人に対する認知や理解の拡大を目指し、テレビCMに着手した同社。潜在層へのアプローチとなるため、担当者がMAツールを自分事化できるよう工夫を凝らす必要があった。

 「私自身は多少テレビCMの経験がありましたが、会社としてはゼロからチャレンジすることや、BtoBのCM経験がなかったため、独特の難しさを感じました。広告代理店さんと議論を重ね、新たなマスプロモーション用の調査データを収集し、テレビCMの打ち方を考えていきました」(相原氏)

 「SATORI」の売りである「リードジェネレーションに強い」「カスタマーサクセスプログラム」などを伝えるため、「顧客を連れてくる」「優良顧客を探し出す」「成果が出るまで並走する」ことを強く打ち出したクリエイティブを制作したという。

各施策を連動させ、広告効果を最大限に発揮する

 女優の上戸彩氏を起用したテレビCMは、2020年初頭に3週間の計画で放映された。メインは認知度の向上だったがそれだけでは事後振り返り、次に活かすことが難しいため、商談形成と受注に貢献するというKGIを設定。KPIとしたのは商談創出率だ。効果測定の対象期間はテレビCMオンエア前の6週間とオンエア後の6週間の商談創出率を比較した。同社サービスのリードタイムを考慮したからである。

 並行して、マーケティング、セールス部門との連携も行った。マーケティング部門では、自社ブランドイベント「標(しるべ)」という名前のブランドイベント開催やDM送付により、初回接点の創出を狙った。セールス部門はテレビCMをフックに架電を行うことで、商談数を増加させた。

 また、その後のテレビCMの放映期間に合わせ、1ヵ月間タクシーCMも実施したところ、タクシーを利用した人の74%が「SATORI」のタクシーCMに触れたというアンケート回答を得た。さらに、「利用検討した」が17.1%、「社内で話題にした」が15.3%、「利用した」が13.5%という結果だった。

 これらの連携施策の結果として、放映エリアにおけるテレビCM期間中のインサイドセールス商談創出率は1.95倍と、倍近い商談獲得を果たすことに成功。その後も複数回にわたりテレビCM出稿を行っている。

 CM休閑期は、認知の残存効果を活かしメールマガジンで低購買層を刺激したり、「SATORI」のWebサイトで顧客の行動履歴を元にポップアップの出し分けを行いながら、アクセス内容を分析し、次の打ち手を考える材料にしているという。

普段の取り組みの効果を拡張する手段としてのマス広告

 MAツールは、すぐにPDCAを回すことができるのが大きな利点だ。相原氏はSATORIにとって初のテレビCM施策であった今回も、「普段やっていることをそのまま行った」と話す。

 マーケティングファネルの一番上の「認知」フェーズで、テレビCM、タクシーCM、ダイレクトメール、ブランドイベント、さらにCMで初回接触をした方向けの啓蒙活動としてCM連動育成セミナー。これらあらゆる施策を並行して取り組んでいるところがSATORIの取り組みのポイントだ。

 相原氏によれば、テレビCMは「必ずしも必要というわけではない、テレビCMに踏み切る前にまだまだできることがある場合も多くあります。自社のフェーズに合わせて、打ち手をすべてやり尽くしてから検討することがおすすめ」だという。そこには、企業のフェーズやデジタル戦略の構築度合いも大きく関わってくると続けた。

 「SATORIでは、MAツールで十分設計ができており、テレビCMによってコミュニケーション全体を底上げできるイメージができていました。目標も決裁者への認知と信頼感の醸成に振り切って、シンプルなKGIとKPIを設計しました。テレビCMは非常にコストがかかるので、まずはMAツールの活用などのデジタル施策を通じて、導線をしっかり設計した上での検討をおすすめします」(相原氏)

 SATORIのように、明確な目的と広告からのサイト流入の導線をしっかりと整えられているのであれば、テレビCMが他の施策との連動によって最大の効果が発揮されるということだろう。

非対面でのコミュニケーションを念頭に開拓

 さらにテレビCMは期待が大きく、特に初回はコストがかかるゆえにあらゆる目的を入れ込んでしまうため、冷静な目的設計が必要だと話す。「テレビCMはインパクトもあるため社内では非常に期待されていたのですが、テレビCMによってあらゆることが解決できるわけではありません。最も成し遂げたい目的を決めたうえで、副次的な効果を狙う程度がよいのではないでしょうか」と相原氏は語った。先にも述べた通り、MAツールで全体感が十分設計され、イベントなどのコンテンツも含めて既に用意があったゆえだ。その上でMAツールを軸にし、小さな改善を重ねることで結果に結びついた。

 コロナ禍で生まれた新しい生活様式は今後も続いていくことだろう。その中で非対面での顧客開拓、顧客コミュニケーションができるツールは今、ビジネスにおいて特に必要性を増している。

 相原氏は「非対面でお客様を開拓すること、コミュニケーションすることができるというのは、今、ビジネスにおいて1つの解決策になると考えます。多くの企業様に当たり前のように会計ソフトや労務管理ツールが入っています。ビジネスの起点となるマーケティング・セールスの場面でMAツールを当たり前のように使っていただければ」と語り、同セッションを締めくくった。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/19 11:30 https://markezine.jp/article/detail/37545