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トライブレポート:最先端の消費インサイトを知る

「耳」からの情報収集に求められる真の価値 音声メディア拡大の裏にあるインサイト

話者の熱量に触れるために聞く「モチベートリスニング」

 「著名人のプレゼンは、人生の苦労や良かった点をかいつまんで話してくれるので、運動のモチベーションを上げるのにすごく良いなと思います」(営業職・30歳女性)

 インタビューの中では、情報収集以外の観点からも音声メディアを重宝しているという生活者の声を得ることができました。たとえば、営業職のBさん(30歳女性)はランニングをしている時に、音楽を聴くのではなく起業家や研究者などのプレゼンテーションを聞いているそうです。

 何かを努力して成し遂げた人の話を聞くことで、自分を奮いたたせることができると感じており、話の内容を理解するというよりも、自分が今やっている行動へのモチベーションを上げるために音声コンテンツを消費しているというのが理由と明かしてくれました。

 読者の方の中にもラジオや音楽をかけながらの勉強や、作業をしたことがある人は多いかと思います。ダンスミュージックなどのリズムに合わせて気持ちを高める人や、ホワイトノイズを聞きながら集中状態を維持する様な人もいるように、作業を邪魔せずに触れることができるメディアとして、音声コンテンツは非常に有効です。

 本記事で紹介するトライブの行動において新しいのは、人の熱意や熱量に触れることで自分の気持ちに火を付けたいと考えていることです。自信に満ち溢れた人の声を聞きくことで気が乗らない作業を始めたり、長時間諦めずにやり遂げるためのモチベーション材料としたりするなどして、音声コンテンツを消費しているのです。

 プレゼンテーションを行った人は、自分の業績や研究成果を特定の人に向けて話しているため、まさか自分の話の内容がこうした形で伝播することは想定していないでしょう。ただ、リモートワークの浸透などにより自己マネジメント能力が一人ひとりに求められる現代において、こうした意外なニーズが現れていることは非常におもしろい発見でした。

コンテンツで頭を満たし続けたい「暇という感覚の細分化」

 最後に、なぜ生活者にこうしたコンテンツ消費のスタイルが現れていると言えるのか「暇」という観点から考察いたします。

 ここまでに紹介した事例は、何かしら他の作業をともなう音声コンテンツの消費行動でした。ただ、必ずしも音声コンテンツは長時間聞くことが前提になっているわけではありません。作業の合間の気分転換や、ちょっとした暇潰しのためにも音声コンテンツを重宝しています。スタートアップを経営しているCさんに話を聞いてみました。

 「空き時間にゲームなどもたまにしますが、身にならないことをしている時間がもったいないな、気持ち悪いなと思ってしまいます。“時間を最適化できている”と思えることが、精神衛生上とても良いです」(スタートアップ経営者)

 近頃、オンライン会議の増加などにともない、仕事中に5~10分の僅かな隙間時間が頻発してしまうという事にストレスを感じるという声を多く聞きます。完全な休憩をとってしまったり、まったく関係のない作業に充てたりすると仕事モードが途切れてしまうので、頭の回転を切らさない適度な気分転換を求めていることがわかりました。つまり、目や身体を休めながらも、耳からのインプットは続けることで、脳が活発な状態を切らさないことで時間あたりのパフォーマンスを常に一定以上に保ちたいというニーズがあるようです。

 経営者に限らず、フリーランスや副業者などは、仕事とプライベートを明確に区別しない事が多く、こうしたワークスタイルは増えています。あらゆる議題に関する打ち合わせや、高い集中力が必要な個人作業などマルチタスクが前提となる働き方の中で、作業の合間や頭の切り替えを行うための暇な時間は細切れになっています。彼らが求めるシームレスな働き方にはどれだけスムーズに休憩を行えるかが重要視されていると考えます。

 5~10分の空き時間を手軽に埋められるだけでなく、誰かの考え方を知れることで何かアイデアの切り口になるかもしれないインプットの側面を両立できる手段として、音声コンテンツはパフォーマンスを高めるための適切な情報収集であるといえるでしょう。

次のページ
情報収集は生活に溶け込み、質より快適さが重視されるように

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トライブレポート:最先端の消費インサイトを知る連載記事一覧
この記事の著者

梅澤 健二郎(ウメザワ ケンジロウ)

株式会社博報堂 ミライの事業室 ビジネスデザイナー

生活者の定性的なリサーチをもとに幅広い業界のクライアントに対して生活者起点での未来の兆しを洞察。生活者インサイトデータベースを活用した新規事業開発などのコンサルティングサービスの提供に従事している。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/11/22 09:00 https://markezine.jp/article/detail/37611

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