前年比110%、コロナ禍でも売上を伸ばす「マトメージュ」
――コロナの影響でヘアスタイリング市場が縮小している状況がありながら、「マトメージュ」の成長が著しいとうかがっています。まずはブランドの説明をお願いできますか。
中島:マトメージュは、1996年に発売し、今年で25周年を迎えるまとめ髪スタイリングブランドになります。
男性が髪を七三分けにするのに用いられたチックを、女性向けに転用したもので、スティック型のワックスでなでるだけで綺麗なまとめ髪が作れると、幅広い世代の方に様々なシーンでご愛用いただいています。
――現在、コロナ禍にありながら売上が過去最高を更新されているんですよね?
中島:ありがたいことに、今年3月に過去最高売上を記録し、以降も伸びています。でも実はその前、2020年の4~5月に前年比70%を割るぐらいの売上ダウンを経験しているんです。
その理由はやはり新型コロナウイルスにあって、各地でイベントを開催しながら商品体験を軸にブランドを広げるという、元々練っていたマーケティング戦略の見直しを余儀なくされたことにあります。
辻さんには、そうした状況を打破できる策が何かないかとご相談させていただきました。その後、辻さんたちと一緒に施策を投じた2020年9月には前年比で回復し、直近では前年110%超で過去最高の売上を更新中と順調に推移している状態です。
「かわいいをあきらめたくない」マインドに刺さる施策を
――すごいですね。実際にどのような取り組みをされてきたのでしょうか?
中島:売上が下がった時期は、1回目の緊急事態宣言の発令による外出自粛の最中でした。
まずはもう一度、消費者視点での顧客理解に立ち返り、何ができるかを考えました。その結果見えてきたのが、新型コロナウイルスの影響でマスクをしていようが、「かわいいをあきらめたくない」というマインドです。
そこからマスクでもかわいく、抑圧を解放していく企画につながっていきました。
辻:1回目の緊急事態宣言が発令されたことで、スタイリング市場に限らず広告業界はカオスな状態でした。
イベントなどオフラインのコミュニケーションはできないし、屋外広告も外に人がいない以上効果を出すのは難しい。どうするべきか商材と向き合う中で、外に出られないのに変わらずヘアアレンジをしようと訴求するのではなく、こういう時だからこそ伝えられることはないかと考え始めたんです。
すると、ヘアアレンジができないことそのものの前に、好きな服を着たり、ヘアアレンジをして好きな自分を演出してみたり、そういう自分自身を肯定する瞬間やお洒落して気持ちを上げたりする、自粛の日々でそういう楽しみを私自身も忘れていることに気づかされました。
そういうことを中島さんたちと話し合う中で、ヘアアレンジの大事な要素が紐解けていきました。それは、ヘアアレンジは自分自身の手で自分をエンパワーメントできる手段である、ということでした。髪を上げること自体が目的なのではなく、自分の好きな自分になるための手段の一つがヘアアレンジなのではないかと。
さらに、コロナ禍でマスクが当たり前になったことで、より一層自分の悩みや“似合うか否か”といった縛りから解放されて、いつも以上に髪の毛で自己表現をしやすくなったのではないかとユーザーに向き合ううちに見えてきました。
世の中では「マスク“でも”かわいく」といった言葉が出回っていましたが、むしろ「マスクも込みで自己表現」なんだという想いで生まれたのが、「マスク盛れ」のメッセージです。
どうしても悲観的になる時期だったので、クリエイティブはポジティブに上げていくトーンで、「#マスク時代のウチらも最強」といった言葉を用いて作りました。