リリースがなければ「自称作曲家」
杉山:しかも、佐藤さんに曲を聴いてもらったときに「スーパースターになれるかはわからないけど、スターぐらいにはなれるかもよ」って言われたんです。僕はその言葉を聞いてスターになれるんだって舞い上がっちゃって(笑)。そこで「覚悟は決まっています!今すぐにでも曲作れます!寝ないで大丈夫です!」って売り込みまくって、コンペの話をいただきました。
そのコンペで採用された曲はアニメの主題歌にもなったのですが、僕は満足できなかった。僕としては、オリコンで1位をとれるくらいビッグなアーティストの曲をやらなければならないと思っていたんです。というのも、第一線に届かないと、ずっとじり貧の世界だと知っていたんですね。それを事務所の方に伝えたら、それなら大手のほうがいいとソニー・ミュージックパブリッシングの方を紹介していただけたんです。
ソニーでもコンペはあったんですが、内容がぜんぜん違いました。もし通れば有名な歌手が僕の曲を歌うんだと聞いてまた舞い上がっちゃって(笑)。1年やって1曲通ればいいほうだと言われたものの「これから来た話は全部、曲書きます!」って、そこから3ヵ月くらい、毎日3時間の睡眠でボロボロになるまで曲を書き続けました。
これ以上しゃべったら声が出なくなると言われて、筆談で指示をしながら、デモシンガーに歌ってもらうなどしていた最後のほうで、嵐の曲が決まったんです。それでソニーと専属作曲家の契約ができて、プロとしてのキャリアをスタートできました。
高橋:すごすぎますね(笑)。結果を出す人の特徴として「とにかく挑戦の回数が多い」というのがあると思うんですよ。
結果を出すというのは「普通ではない大きな成果を得る」ということだと思うのですが、そういう試みは失敗する可能性のほうが高い。だったらシンプルに、挑戦する回数を増やして10回、20回の挑戦の中で1回、2回の成功を拾っていく。1回の成功で得られる果実が大きいのだから、本来挑戦し続けるのが合理的なはずだけど、挫折したり失敗したりするのが怖いから多くの人はやれないですよね。杉山さんが、その圧倒的な努力を意地でもやり通そうとした理由ってなんだったんですか?
杉山:理由は2つあります。まずおもしろかったというのが1つ。もう1つは、プロの音楽家だって言いたかったからです(笑)。
作曲家は資格があるわけではないので、今年リリースがなかったら「自称作曲家」になってしまうと思うんですね。この先にリリースがあれば少なくともその日までは現役の作曲家と言えるわけですから。これに関しては、今でも自分が曲を書き続ける一番大切な理由になっていると感じます。
ここにマーケあり!
・結果を出す人は「挑戦の数が多い」。「年に1曲、曲が採用されれば良いほう」と言われる中、睡眠を削ってでもほぼすべてのコンペに参加し続ける圧倒的な挑戦の数があったからこそ、杉山さんはたった3ヵ月で嵐の曲に採用されるという結果を得ることができたのでしょう。
記事の後編は後日公開予定です、お楽しみに!
