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ヒットの裏にマーケあり

乃木坂46の楽曲手掛けた作曲家・杉山勝彦氏から学ぶべき、マーケター的思考

 数々のヒット作の裏側には、どのようなマーケティングが潜んでいるのか――。デジタルマーケティングのコンサルティングでこれまで1,500社を超える企業を支援してきたナイル株式会社。その代表で起業家の高橋飛翔が、各界の著名人と対談を行い、ヒットの裏に隠されたマーケティングを深掘りしていく連載企画。第2回のゲストは、乃木坂46や中島美嘉など、多数のアーティストに楽曲を提供している作曲家の杉山勝彦さん。数々のヒット曲を世に送り出す秘策に迫りました。

成功の秘訣はチャンスを無駄にしない行動力と積極的な売り込み

高橋飛翔(以下、高橋):杉山さんは、分析に分析を重ねて、ヒットするための方法を論理化して音にしている作曲家という印象です。センスで語られがちな領域で、頭脳で勝負しているあたりにマーケティング的な要素を感じて、ぜひお話をうかがいたいと思いました。

 競争率の高い音楽の世界をご自身のフィールドに選んだのは、やはり何かしら勝算があったからなのでしょうか?

杉山勝彦さん(以下、杉山):最終的に作曲家を選んだのは、楽器を弾いたり、歌ったり、編曲したりといろいろやってみた中で、作曲が一番音楽で食べていける確率が高いと思ったからです。

 そう思えた理由として、高校生のときに初めて作った曲が称賛されたのが大きかったですね。学園祭で披露したら学校中で話題になって、たくさんの人から「これに杉山の曲を入れて」ってメディアを渡されました。そういった客観的な要素と自然な流れから、作曲家の道を選びました。

杉山勝彦(すぎやま・かつひこ)

 1982年、埼玉県生まれ。作詞、作曲、編曲家として乃木坂46、中島美嘉、家入レオなど数多のアーティストへ楽曲を提供。作詞・作曲・共編曲を手掛けた家入レオの「ずっと、ふたりで」では『第59回輝く!日本レコード大賞』作曲賞を受賞している。フォークデュオ「TANEBI」としても活動中。

高橋:普通なら「すごいね」「かっこいいね」で終わってしまうところ、メディアに入れてほしいとまで言われるって、すごいことだと思います。そこからどのようにして、プロとして作曲するチャンスを得ていったんですか?

杉山:大学時代のサークルでアカペラをやっていたんです。そのとき、いっしょにやっていた後輩からNHKの関係者が集うパーティーに誘われて、これはチャンスだと、歌えるメンバーを集めて参加しました。

 パーティーには有名な番組の音楽担当者とか、テーマ曲を決めている方とか、すごい方がたくさんいたんですけど、何もしないで帰ったら何も変わらないじゃないですか。だから「余興やります!」って言って、当時、流行っていた曲のアカペラを飛び込みで披露したんです。

 そうしたら、それを聴いた教育番組の音楽担当者の方が「曲作れるの?」って声をかけてくれたんです。

高橋:チャンスを無駄にしない行動力が道を開いたんですね。

杉山:当時は大学生で、すべっても痛くないというのは大きかったと思います(笑)。ただ、実際は機材も持ってなかったし、自作の曲も高校生のときに書いた3曲しかなかったんですよ。

 でも、「曲作れるの?」って聞かれて「作れない」と言ったら終わりなので、「もちろん作れますよ。プロ目指してるんで」と強気に出たんです。すると「じゃあ1週間後に持ってきて」って言われたもんだから、急いで貯金下ろして機材を買い揃えて、説明書を見ながら録音を始めました(笑)。

 そのときの曲が「プロとは言えないけど、センスはあるみたい」と言われて、番組内で10秒ほど、BGMとして流してもらえたんです。

 大学生の身としては、10秒のBGMでもすごく大きなことだったんですけど、担当者の方に「俺が目指しているのはこんなんじゃない」「印税が稼げないと意味がない」って売り込みました。最初は取り合ってもらえなかったのですが、3ヵ月後くらいに「どうせ無理だと思うけどやってみれば?」って、お情けみたいな感じでテーマ曲のコンペの話をいただけたんです。結果、自分の曲が採用されて、当時は難易度が高かったJASRAC(日本音楽著作権協会)との契約もできて、印税をいただけるようになりました。

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この記事の著者

高橋 飛翔(タカハシ ヒショウ)

 1985年生まれ。東京大学法学部卒。大学在学中にナイルを創業。

 ナイルにて、累計1,500社以上の法人支援実績を持つデジタルマーケティング支援事業や自社メディア事業を発足し「ナイルのマーケティング相談室」「ナイルのコンテンツ相談室」などを運営。2018年より新規事業として月10,000円台でマイカーが持てる「おトクにマイカー 定額カルモくん」をローンチ。自動車産業における新たな事業モデルの構築に取り組んでいる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/12/20 09:00 https://markezine.jp/article/detail/37949

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