TikTokが「衝動買い」を呼ぶ理由
「乾けない」世代にとって、TikTokはこれまでの媒体とは異なる購買促進効果を持つプラットフォームとなっています。なぜなら、TikTokが「偶然出会い、魅せられた商品を衝動買いできる場」だからです。
TikTok For Businessが公開したレポートには「興味からズドン」という言葉で表現されていますが、TikTokでは無目的に回遊しているユーザーが偶然「ときめく」何かと出会い、猛烈に心を惹かれ、そのまま購買に至る「衝動買い」が発生します。
これは前回記事で解説したTikTokが持つ性質「イマーシブ(没入的)」「パーソナライズド(個別的)」「クリエイティビティドリブン(創造主導的)」がもたらす現象です。ユーザーは、自身の嗜好性にマッチしたコンテンツに没入し、軽快なテンポの中でときめき、衝動買いを呼び起こすのです。
こうして生じる「衝動買い」は、ニーズを持たない「乾けない世代」を対象に購買を拡大させる上で非常に大きな効果をも持っていると言えるでしょう。「ニーズ」ではなく「衝動」で購買を起こすことができるため、「乾けない世代」を顧客へと変えていくことができるのです。

このように、TikTokは「『乾けない世代』のための購買プラットフォーム」であるといえます。
「民主的な広告」という新しい姿
もう一つ、TikTokでは興味深い現象が起こっています。下記のツイートを見てください。
広告に約9万件のいいね。600件のコメントつくtiktokスゴい。広告は枠から人。人から文脈へ。場の文脈に沿った広告はコンテンツになる。拒否されない。広告には、広告だとバレない擬態ではなく、認識された上で場の空気にあった振る舞いがいる。インフルエンサーは宣伝媒介ってより、文脈媒体なのでは。 pic.twitter.com/2wUfJBh41E
— west|SNS会社のマーケ (@mountain_weeest) December 13, 2021
TikTokでは広告に多くの「いいね」がつきます。一般的に広告は量的な飽和や、過剰な表現をともなうクリエイティブの蔓延などを要因に、忌避される傾向があります。しかしTikTokでは多くのユーザーから「いいね」のリアクションが届くのです。
一体なぜなのでしょうか? それは、TikTokに出稿する広告主の間で「評価されるコンテンツをクリエイターと共創する」という手法が浸透しつつあるからです。
前回記事で解説した通り、TikTokでは「コンテンツ・イズ・キング」のカルチャーが強く根付いています。ユーザーは投稿を「コンテンツ」として素晴らしいと感じれば、広告かどうかは関係なく、純粋に評価する傾向があります。
TikTokの文脈に即した「コンテンツ的」な広告クリエイティブを用い、クリエイティブを「TikTokクリエイターと共創しながら作りあげる」ことで、広告であってもポジティブに見てもらえます。上記ツイート内のクリエイティブもそのアウトプットの一つと言えるでしょう。

TikTokでは、すべての人が「クリエイター」となり、広告主と手を取り合いながら純粋に評価される「コンテンツ」を共創していく。そこには「購買」や「報酬」と言った経済的な流通と、賞賛や熱狂と言った情動的なモメンタムが生まれ、その先に「民主的な広告」の姿が誕生する。
私はTikTokがこのような、「広告の未来を導く可能性を秘めたプラットフォーム」であると強く信じています。
