フィードバックはしない。リーダーとして常に意識していること
――チームを率いるリーダーとして意識されていることはありますか?
里村:金言とまではいかないですが、「inspire & be inspired」という言葉を常に意識しています。これは、リーダーとしてチームメンバーをインスパイアしつつ、私もメンバーにインスパイアされるという理想の状態を目指す言葉です。
どういうことかと言うと、まず、リーダーとして“信頼される”ことは大前提として重要です。信頼されるには、リーダーとしての自分のパーソナリティを作ることも必要で、少し馬鹿になるとか、いじられるスキを作るとか、ちょっとしたコツが実はあったりします。
そうして信頼を得た上で、リーダーには「みんなが気づいていない課題に気づいて、それを提示し、新しい目標や改善策の指針を出す」という役割があります。これがリーダーからのインスパイアで、チームメンバーは「そこが課題だったのか」「そういう方向性もあるのか」とインスピレーションを受けます。
そして、そこから先の具体的なアクションは、チームメンバーにすべて“任せ切る”。もちろん、「こうしたほうがいいのに」「なんでこうしないんだろう」と細かい部分で思うことはあります。ですが、それは絶対に言いません。失敗することもありますが、それでもいいんです。失敗もしないと、組織は成長していきません。そうしてメンバー自身がオーナーシップを持って回すことができるようになってくると、「そういうアクションもあるか」などと、次は私がインスパイアされる側に動きます。
組織強化について突き詰めて考えると、「任せ切ることができるかどうか」が一番重要であるように思います。ですので、inspire & be inspired、インスパイアしながらインスパイアされる、ということを常に意識しています。
――任せ切るというのは、フィードバックもしないのですか?
里村:フィードバックはしないです。フィードバックをすると、「これはあまりよくなかったね」と、少しネガティブな方向に流れることが多いので、一緒に考えるというスタンスを取ります。逆に、「こんなことできないですかね?」「どうしたらいいですかね?」と相談することはありますよ。
従来より主なターゲットであり顧客であったプロクリエイターから、新たにターゲット層を広げるマーケティング戦略を展開している「Adobe Creative Cloud」、そして「Adobe Document Cloud」。そのマーケティングを率いる里村さんは、戦略実行のため、「社内の意識改革」を自身のミッションとして取り組まれてきました。定期誌『MarkeZine』73号では、メンバーの意識改革に向けて具体的にどのような取り組みをしてきたのか、どのようなマネジメントスタイルを取ってきたのかを紹介しています。