マーケティング業界でも深刻な問題となっている人材不足とどう向き合い、どこに解決の糸口を見つけるか? また、ビジネスをリードできる強いマーケティング組織をいかに作っていくか? 各社の取り組みを探る本連載、第5回目はアドビ マーケティング本部 常務執行役員/シニアディレクターの里村明洋氏を取材した。新卒で入社したP&Gで営業からマーケティングを経験し、その後転職したGoogleでは複数の事業におけるマーケティングを統括。アドビ入社後は「Adobe Creative Cloud」「Adobe Document Cloud」などのマーケティングを率いている里村氏のマネジメントスタイルとは?
MarkeZine定期誌の連載『人を育てる。組織を育てる。』の第5回でお送りした、アドビ 常務執行役員 里村明洋さんへのインタビュー記事『P&G、Googleを経てアドビへ入社 以来、足かけ2年で取り組んできた「社内の意識改革」』。誌面には収まり切らなかったお話しがたくさんあったので、本記事でご紹介します。
マーケターの成長に必要な2つの要素
――ここからはマーケターの育成について。まず早速ですが、マーケターの成長に必要なものは、ずばりなんだと思われますか?
里村:2つあると思います。これらは私の経験則とこれまで上司の方から受けたコーチングがベースになっているのですが、やはり一番は自分の周りにある商品やサービスに興味を持つことです。「この商品は何でこのようなメッセージを打ち出しているのだろう?」という疑問が深まっていくと、「自分ならこうするな」という考えが出てくるからです。
たとえば、私がいま飲んでいるペットボトルのお茶は、パッケージでベネフィット訴求をしています。ですが、パッケージでは「おいしそう」「やすらぎそう」といったイメージの訴求をして、店頭のPOPでベネフィット訴求をするという選択肢もありますよね。後者を選んだ場合、店頭や小売店とのオペレーションが発生し、POPもなかなか簡単にはつけてもらえません。さらに、パッケージを変更する際、たとえば特色を使ったり、どこかを少し光らせるようなデザインに変更するだけで、個数にもよりますが、何億というコストがかかることもあります。
商品のパッケージデザインや訴求の仕方ひとつとっても、その裏にはそれほど大きなデシジョンがあるのです。だからこそ、「何でこのメッセージにしたんだろう?」という疑問が生まれてくる。興味関心を深めれば深めるほど、マーケターとしてスキルやケイパビリティを高めなければいけないということがわかりますし、私自身そうして成長してきたところが一番大きかったと思います。
もう一つは、わがままになるということです。「自分は他とは違うから」「これは自分にしかできない」というような考えがないと、マーケターは成長しないと思います。「みんなと一緒に、調和をして」という考え方は、人としての良し悪しは置いておいて、マーケターとしては“普通”になってしまう。本来、マーケターは独自に新しい価値を創造していかなければいけない立場にあります。「自分の考えはみんなとは違う」というある種のわがままさがある人でないと、マーケターとして成長していきにくいと感じています。
――「マーケターを育成する」という観点では、どちらもトレーニングが難しそうです。
里村:前者の「いろいろなことに興味を持つ」というのは、「マーケティングだけでなくフィナンシャルまで含めてこのプロダクトの戦略を考えてみよう」と、スキルとしてトレーニングすることはできると思います。後者のほうは、素質的な部分もありますね。メンバーに対して「わがままになれ」など直接的な言い方はしませんが、少し違う視点で考えてみましょう、違う視点を持つクセをつけましょう、と話すことはできると思います。
――アドビでは、マーケティングに関する体型的な知識やノウハウをどのようにトレーニングされていますか?
里村:そこに関しては、大きな課題があると認識しています。もちろん社内にトレーニングの制度はありますし、オンライン含めて学びの機会は提供されています。ただ、そういった知識やスキルは大学などである程度習得できるようになってきていると思うのです。そういった体系的なスキルでなく、マーケティングで人を動かしたり、物事を変えていくという本質的な部分はOJTでのトレーニングになっています。
弊社ではこのOJTだけでは足りないと考え、前述した社外の方をお招きするプログラム(詳細は定期誌に記載)を立ち上げるに至りました。今のところは、形式的な社内のトレーニングとOJTにプラスして、この外部の方によるトレーニングがメインになっています。
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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)
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