※本記事は、2022年1月25日刊行の定期誌『MarkeZine』73号に掲載したものです。
「いつまでも」を実現する「エイジング」と、「いつかは」に備える「エンディング」
ADKマーケティング・ソリューションズ
シニアプロジェクト「今どき☆新シニア研究所」 リーダー 稲葉光亮氏1985年旭通信社(当時)に入社。マーケティング部、R&D本部などを経て、ADKマーケティング・ソリューションズ EXプランニングセンター所属。金融業を中心としたコミュニケーションプランニング業務の傍ら、上記社内プロジェクトの一員として50~70代のシニア層ターゲットを深掘しコミュニケーション開発・商品開発や執筆・講演活動などに与してきた。
2年続くコロナ禍にはシニアも閉口しただろうが、彼らは強かった。当社で測定する約40の「生活価値観」では、シニア(当社では50歳以上をシニアと捉えている)において、2019年から2020年に一部の不要不急と関連づけられる項目が凹んだ。が、2021年はそれらも2019年とほぼ同値まで戻った。「意識の弾力」とも呼べる、強靭な心根を実感できた。
とはいえ、コロナ禍が「新常態」をもたらしたことは間違いない。その環境下でシニアはどんなインサイトを強めたのだろうか? まず「終活」に前向きになった。感染拡大時は日々脅威を感じながら、彼らは自分の命と先のことを以前より真剣に考えたであろう。結果、自粛生活にも呼応した断捨離など、人生の整理と継承を果たす終活意識&行動が活性化した。他方、ではあと20年、30年をどう生きるか、何を対象に歓び楽しむかというバックキャストも起こり、できるだけ永く健康で、おいしく、美しく、安心して時を歩みたい、という欲求も鮮明になった。むしろそちらを優先するシニアも現れたであろう。こうした“エイジング”と“エンディング”の両輪を回す、シニアならではのインサイト刺激に着目しておきたい。
新常態はデジタルを使いこなしたい、というインサイトも高めた。便利で快適、に加え清潔で安心、の価値も加わりその意識の増大は着実だ。当社の調査でも、2020年にシニアのネットショッピングの利用率が前年から1割アップしたという結果もあった。スマホの普及に加え、自粛・お籠り生活もあり、この傾向は2021年も堅調であった。非対面・非接触のキャッシュレス決済の意向も高まった。この点からもシニアは、レガシーメディアに加えデジタルメディアの領域でも、今後益々接点開発や体験創造のできるターゲットとなり得ていくと考えられる。