マネジメントスタイルは、企業のビジネスモデル・カルチャーに応じて変える必要がある
――そうした意識改革におけるマネジメントで意識されていることは?
私はスタートアップでの経験がないので、ゼロから事業を立ち上げる場合はまた違ってくるということを前提とした上での話になりますが、マネジメントスタイルは、企業のビジネスモデルやカルチャーによって変える必要があると考えています。
ビジネスモデルを二分すると、安定しているケースと、常に市場の脅威にさらされていて安定させるのが難しいケースがあります。前者は継続的なリピートがある収益モデルないし仕組みが出来上がっているSaaSや、インフラに近いプラットフォームなどが当てはまります。アドビも前者に入るでしょう。
一方で、後者に該当する消費財メーカーなどは、常にシェアを奪い合うという構図のもと市場で戦っています。1日ごとに売り上げや出荷量の数字が下りてきて、明日明後日のビジネスを作るために様々な判断をしなければならないという、非常にダイナミックな状況があるのです。こうした状況下では、常にプレッシャーを感じながらマネジメントしなければいけません。組織の意識改革では、大前提としてこの違いを認識する必要があります。
――では、それぞれどのようなマネジメントスタイルが考えられるのでしょうか?
前述したとおり、ビジネスモデルが安定しているケースでは、購買のサイクルが長いなどのビジネスの特徴があります。これを前提にして組織が作られているので、明日明後日もしくは1ヵ月後などすぐ先の物事を変えるような動きをしても、チームのメンバーはついてきませんし、ユーザー自体なかなか変わりません。これは、早いのが良い悪いという問題ではなく、そういうカルチャーであり、ビジネスモデルだということです。
ですので、長期のビジョンを設定してプロダクトロードマップを引きつつ、組織の様子を見ながら改革を進めていくというタイムマネジメントが重要になってきます。
ビジネスモデルが安定していない場合、まずは、直近のビジネスのオペレーションの確立が求められます。その上で、安定的にビジネスを成長させるための中長期戦略を考える。この両方がそろって初めて、「こういう組織にしたい」「こういうことをやりたい」といった改革を推し進められるようになっていくと考えています。