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博報堂プロダクツのプロフェッショナルたち(AD)

日本のリテール業界は今が過渡期。さらなるテックの活用で進むのは「店舗のエンタメ化」と「マーケDX」

 コロナ禍を経てオンラインでの購買が当たり前となり、リアル店舗の価値が問い直されている。そんな中、店頭マーケティング型のDX(Shopper DX)を掲げる博報堂プロダクツは、2021年8月に米・STRATACACHE(ストラタキャッシュ)社とのソリューション・パートナー契約を発表した。今回は、博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部 リテールテクノロジー部の吉田氏、STRATACACHEグループ企業であるSCALA株式会社 カントリーセールスマネージャーの高橋氏に、提供しているソリューションや顧客体験の価値の変化について伺った。

世界最先端のリテールテック企業「STRATACACHE」とは

MarkeZine編集部(以下、MZ):はじめに自己紹介をお願いします。

吉田:博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部に所属しています。私は前職でコンビニエンスストアのスーパーバイザーを担当していた経験を活かし、博報堂プロダクツに入社後もずっとリテール畑で、店頭プロモーションの領域を担ってきました。現在はリテールテクノロジー部で、最新のリテールテクノロジーの導入・企業様への提供に従事しています。

株式会社博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部 リテールテクノロジー部 リテールテクノロジープロデュースチーム リテールデジタルプロデューサー 吉田和史氏

株式会社博報堂プロダクツ リテールプロモーション事業本部 リテールテクノロジー部 

リテールテクノロジープロデュースチーム リテールデジタルプロデューサー 吉田和史氏

高橋:私は、STRATACACHE(ストラタキャッシュ)のグループ企業であるSCALA株式会社で、カントリーセールスマネージャーを務めています。STRATACACHEは本社を米国とし、マーケティングテクノロジーソリューションを提供する世界的なリーディングカンパニーで、2021年8月に博報堂プロダクツさんとソリューション・パートナー契約を締結しました。以降、博報堂プロダクツさんを通じ、STRATACACHEと傘下企業が展開している様々なソリューションを日本のリアル店舗へご案内しています。

SCALA株式会社 カントリーセールスマネージャー/一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム 理事 高橋琢磨氏
SCALA株式会社 カントリーセールスマネージャー/一般社団法人デジタルサイネージコンソーシアム 理事
高橋琢磨氏

MZ:世界中で最新のテクノロジーを提供されているSTRATACACHEグループですが、どのくらいの規模で事業を展開されているのでしょうか?

高橋:STRATACACHEには12のグループ企業があり、いずれの会社もマーケティングテクノロジー、デジタルサイネージの技術を活かし、リテール業界を中心にソリューションを提供しています。現在、世界28拠点にオフィスがあり、100ヵ国以上にソリューションを展開しています。

 リテールテックのマーケットは、世界でも北米が一番進んでいるところです。北米から常に最新の動向をヒアリングし、時には博報堂プロダクツさんにもそれを共有させていただきながら、先を見据えた戦略と新しいソリューションをご案内しています。

MZ:リテール業界のDXが進んでいる北米の最新動向を教えて下さい。

高橋:現在北米では、店舗販売員を確保するのがどんどん難しくなっています。特に接客に専門性を要するブランドショップではその傾向が顕著で、「少ない人数でいかに効率的に販売するか」の重要性が高まっています。これを受けて、既に存在していたものですが、今後無人店舗の拡大がさらに進むと思われます。しかし、消費者にとっても企業にとっても、「店舗体験」はやはり重要です。テクノロジーの力でリアル店舗での顧客体験を豊かにするソリューションが、ひとつの中間解としてどんどん生まれてきている状況です。

今後日本でも注目の「リテールテインメント」

MZ:コロナ禍における消費行動の変化もあり、リアル店舗の役割・位置づけは大きく変化しました。この状況をどのように捉えられていますか?

吉田:ECで買い物をするという体験がここまで普及した今でも、私も含めて、実際に店舗で商品を見てみたいというニーズはまだまだありますし、今後もそうなくなるものではないと思っています。現に「ショールーミング」のような形で、リアル店舗を「商品体験の場」として捉える傾向が強まっていることを認識しています。

 たとえば、ECを主体とするD2Cメーカーが増えていますが、百貨店などのリアル店舗の一部にポップアップショップを出し、体験の場として活用するケースをよく見かけますよね。リアル店舗での体験を「EC購入の入り口」「サブスク契約の入り口」とする事例が今とても増えています。

 また、世界的な風潮を見てみると、「リテールテインメント」という概念が広まってきています。これは売り場にエンターテインメント性を盛り込むという発想です。たとえば、スポーツショップの中にサッカーコートを作り、実際にシューズを履いて商品を試しながらサッカーを楽しめるようにしたり。家具を売る店舗では、販売されているベッドで寝られるお泊り会を開催したり。心に響くような商品体験を通して、購買につなげていくような形です。

照明やBGMを自由に選べる?!「エンタメ型ショップ」の例

MZ:「リテールテインメント」の動きは、今後日本のリテール企業が注目すべきキーワードかもしれません。ここで活用できそうなソリューションは、何かありますか?

高橋:たくさんありますよ。エンターテインメント性の高い店舗設計の例として、ある女性下着ブランドがヨーロッパで展開しているリアル店舗があります。ここでは、お客様が特定の売り場の近くを通ると、小さな穴から霧状のミストが出てきて、プロモーション中の香水の香りを体験できる仕組みだったり、タッチスクリーンで試着室内の照明や音楽を自由に選択できたり。エンジョイしながら独自のショッピング体験ができる仕掛けがたくさん導入されています

STRATACACHEグループによる海外店舗事例

MZ:それはたしかに楽しそうです!

吉田:コスメやアパレルなど比較的商品単価が高いブランドでは、店舗に投資をして、一人ひとりのお客様をいかにキャッチしていくかが非常に重要です。せっかく来店していただいたのであれば、店舗での時間を楽しんでもらい、ブランドのファン拡大へつなげていく。ライフタイムバリューを高めるためにも、店舗作りは今後より重要な施策となっていくと思います。

博報堂プロダクツ「Shopper DX」との相乗効果

MZ:実際に現在博報堂プロダクツで導入・提供されているSTRATACACHEのソリューションをご紹介下さい。

吉田:博報堂プロダクツでは、STRATACACHE社のソリューションを体験できるスペース「Shopper DX Experience Lab」を展開中です。現在この第一弾として、以下の5つのソリューションを展示しています。

 中でも汎用性が高いのは、「Lift&Learn」というソリューションで、これはお客様が商品を持ち上げると、その商品の情報をデジタルサイネージに表示させることができるものです。2つの商品を同時に持ち上げても両方の商品情報がサイネージに表示されるほか、商品を置く位置が入れ替わっても問題なく作動するなどの対応力があり、店舗スタッフによるオペレーションコストが低い点も特長です。また、どの商品が何回表示されたかなどのデータを取り、マーケティングで活用することもできます。

デジタルサイネージ「Lift&Learn」の使用例

高橋:販売員が直接商品を説明しなくても、お客様の好きなタイミングで成分や商品特徴を知ることができます。コロナ禍で対面接客がはばかれる中では、特にニーズのあるソリューションですね。また、サイネージにディスカウントクーポンを表示し、後日ECでの購入を促すなど、マーケティング施策として活用することも可能です。

MZ:日本市場に合う形でSTRATACACHEグループのソリューションを提供するなど、博報堂プロダクツが強みを発揮できる部分はありますか?

吉田:博報堂プロダクツは「Shopper DX」という構想を掲げ、リテール業界の変革に取り組んでいます。Shopper DXは、来店前・来店時・来店後、リアル・デジタルをシームレスにつなげ、一連のジャーニーで最適な顧客体験を創造することを目指すものです。デジタル上の会員データ、ECデータに加え、店舗内での行動データ、POSデータなども掛け合わせ、精度の高いパーソナライゼーションを実現します。

 STRATACACHEグループ様とのパートナー契約は、Shopper DXの取り組みの一環として行いました。博報堂グループの「生活者視点」とShopper DXに、STRATACACHEさんのDXソリューションを掛け合わせることで、よりよい買い物体験を創っていくことができる。これが我々の強みだと思っています。

日本のリテール業界は今が過渡期 リーディングカンパニーとしてDXに挑む

MZ:これから導入予定のソリューションがあれば、ぜひ教えて下さい。

高橋:グループ会社のWalkbaseから、店舗運営全体の効率化を実現するソリューションをご提供予定です。様々なシーンでの活用を考えていますが、たとえばコロナ禍の状況に応じて入店制限をかけたい場合、店頭出入口のカメラで人数を計測し、ディスプレイに人数を表示、一定の人数を超えたら入店できないようにアナウンスする、といった仕組みを考えています。

 もうひとつ、来店者が店内をどのようなルートで動いたかをセンサーなどでトラッキングするソリューションも提供を検討中です。主にスーパーマーケットなどでの導入になると思いますが、売り場設計の改善であったり、お客様が“買わなかった商品”の分析であったり、POSデータではわからなかったところまで把握できるようになります。

MZ:最後に今後の展望をお聞かせ下さい。

吉田:昔から日本のリテール業界は、アメリカの5年、10年後を追っていると言われています。これを踏まえると、やはり、日本市場でも人手不足を解決するようなリテールテクノロジーの活用が今後活発化していくでしょう。その意味で、私は、今がまさに過渡期であると思っています。STRATACACHEさんのグローバルでの知見を日本市場にうまく組み込み、リテールテックマーケティングのリーディングカンパニーとして、リテール業界のDXに挑んでいきたいです。

高橋:博報堂プロダクツさんが掲げているShopper DXという考え方は、グローバルでも注目が高まっているトレンドだと思います。リテール領域でテクノロジーの活用が進んでいくことは間違いないので、まずは「Shopper DX Experience Lab」を土台に、日本のマーケットでのプレゼンスを高めていきたいと思っています。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/03/15 11:00 https://markezine.jp/article/detail/38222