CDPの活用に必要なパートナーの支援
田村氏は、「カスタマージャーニー全体をデータで把握するための基盤として置くのは、CDPの使い方としてベスト」だと述べた上で、どのように構築して活用しているのかも聞いた。
KFCでは2021年2月のアプリリニューアルで、会員登録、ログインの機能を追加。各タッチポイントのデータ(図内左側)を、アプリを利用、会員登録をすることで付与されるKFC IDという顧客につき一つのIDと結合している。このIDをCDPに溜め、お客様の属性、購買単価、購買数、購入エリアといったデータを蓄積。データを抽出して顧客を分類し、目的別分析、機械学習を行う。それによってできたセグメントデータを各施策(図内右側)に活かし、施策の結果はCDPに戻り、さらに分析の精度を高める。
こうした大きなプロジェクトには、社内外の様々なステークホルダーの力が必要となる。KFCの場合、パートナーのどのような支援が役立ったと感じているのだろうか?
そもそもKFCと博報堂は、マス広告も含め、顧客とのコミュニケーション戦略全般で連携しており、その一環でCRM戦略についても2年ほど計画を進めてきたという。データ活用を進めていく上では、社内向けのわかりやすい説明が求められ、その点で強い支援が得られたと濱嶋氏は語る。
「社内には稟議を承認してもらうためのフローが当然あり、そこに寄せていくためには難しい言葉だけではなく、実際に何が必要でそれがどのようなものなのか、使うとどのようなメリットが得られるという“絵作り”が必要です。それに関しても博報堂さんに伴走いただきました」(濱嶋氏)
またCDPの導入に関しては、どのような形で構築していくか、どのデータをどのようにつなげていくかの検討、取り回しからインキュデータに対して支援を求めたという。
「KFCの中にあるデータのすべてをマーケティング本部で管理しているわけではありません。当然情報システム部や商品を取り扱う部門で持っているデータもあります。そのため、構築に際して連携すべきステークホルダーも社内外に様々な人がおり、それがハードルとなります。
今回の場合はインキュデータさんの支援により、全体設計から、関係部署や外部のベンダーに対しての提供してほしいデータやつなげ方についての指示、ディレクションをしてもらうことで、CDPの構築がやっと実現できました」(濱嶋氏)
テクノロジーの進化とリンクする体験の創出を
セッションでは最後に、KFCのプロジェクトにおける現在地と将来の構想が語られた。
「繰り返しとなりますが、エブリデイブランドがキーワードとして最上位にあります。日常的なブランドとして感じていただけるような購買体験をお客様に対して提供していきたい、それが取り組みのコンセプトです」(濱嶋氏)
CRM戦略としての具体的な取り組みは四点だ。
一つは、アプリを顧客とのタッチポイントの中心として据え、マストアイテム化すること。KFCのサービスを利用するすべてのプロセスで、その起点をアプリにしていくことでID収集を円滑にし、CRM強化を図る。
二つ目はネットオーダーの拡充。お店に並ばないで買う、自分の好きな時間に注文できるといったメリットを伝え、そのポテンシャルを活かすこと、そして会員データの収集が狙いだ。三つ目は、Cookieの規制強化などを踏まえ、自社データのフル活用。四つ目が、生活様式の変化と販売チャネルの進化への対応だ。
「タッチポイントは今あるものだけではなく、これからもテクノロジーの進化、メディアの進化によって増えていくと考えています。その進化に常にリンクしたサービスを実現していきたいと思っております。いずれにせよ、顧客時間の勝ちパターン、再現性を確立するのが将来構想です」(濱嶋氏)
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