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マーケター必読!論文のすすめ

デジタル環境下のダイナミック・プライシングとDX【論文紹介】

サブスクリプションの利用程度と顧客満足の関係性

 みなさんは、サブスクリプション・サービスを利用されているでしょうか。たとえばNetflixのような月額払いで利用し放題のサービスは、近年とても増えています。このようなサービスを契約している利用者の中には、フィットネスクラブがよく例にあげられますが、ほとんど利用していないのに毎月利用料を支払っていたり、また利用機会が必ずしも多くないのにそれほど大きな不満をもっていない利用者が大勢います。従来のマーケティングや消費者行動の理解では、消費者は満足していればたくさん使うし、あまり使わなければ支払わないことが常識とされてきたので、上に述べたような近年のサブスクリプションの利用行動は、一般的な支払い意識と満足の関係とは異なっています。

 福岡大学の太宰准教授の論文「サブスクリプション・サービス利用と顧客満足の特性」は、このようなデジタル財におけるサブスクリプション・サービスの利用の程度と満足との関係を探った、とてもユニークな論文です。この論文では、NetflixやAmazon Prime Videoなどを含む全20の定額動画配信サービスやオンライン英会話スクール等の満足度についてオリコンが行った調査の結果を用いて分析を行いました。分析の結果として、以下のようなことがわかりました。以下に示すのは、太宰准教授の論文中に「図4サブスクリプション利用における閾値」として示されているグラフです。

 第1に、図に示されているように、定額動画配信サービスもオンライン英会話スクールも、「これ以上利用が減ったら満足度が下がる」という閾値が、週1回の利用を下回るかどうかという点にあることがわかりました(グラフ中の「週次」の部分)。

 第2に、またオンライン英会話スクールでは、利用の程度が「ほぼ毎日」という、いわば利用が習慣化した状態になるときに、満足度がもう一段高まるのに対して、定額動画配信サービスには、そのようなもう一段満足度が高まる閾値は見られませんでした。これは、オンライン英会話サービスが学習サービスであるため、「毎日のように利用(学習)が出来ている」という「望ましい」状態が存在するのに対して、定額動画配信サービスにおいては「非常にたくさん視聴したら、より望ましい状態になる」ということはないから、と考えられます(グラフ中の「日次」の部分)。

 第3に、定額動画配信サービスでもオンライン英会話でも、長期的な利用の継続は満足を感じる際に考慮されにくいことがわかりました。利用者が満足について考える際には、より短期的な判断が下される傾向があるのです。

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組織変革を進めるダイナミック・ケイパビリティ

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この記事の著者

澁谷 覚(シブヤ サトル)

学習院大学国際社会科学部教授 博士(経営学)
2003年、慶應義塾大学大学院経営管理研究科後期博士課程修了。東京電力、新潟大学助教授、東北大学准教授・教授を経て、2016年より現職。主な受賞に、日本マーケティング本大賞2019 大賞、2009年度吉田秀雄賞奨励賞、2012年度日本商業学会優秀論文賞、2016年度吉田秀...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/02/28 08:30 https://markezine.jp/article/detail/38349

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