※本記事は、2022年2月25日刊行の定期誌『MarkeZine』74号に掲載したものです。
人の感性を推測するAIをパッケージデザインに応用する
パッケージデザインの構成は、流行りの色味やキャッチコピー、シズル感など様々な要素によって構成されている。さらに、デザインから文脈を理解してもらい、商品特徴を訴求できることも両立しないといけないため、自動的に生成するハードルは高い。
一方で、デザインに対する人の評価に関しては、AIでも推測できることが過去の研究(※1)からわかっており、AIが人の感性の一部を理解できる可能性が示されている。デザインの作り手は、受け取り手の感性・評価を意識してデザインを考えるはずであり、AIで人の感性を推測してパッケージ評価ができるなら、デザインの自動生成を行える余地もあると考えられる。
何某かの手法でデザインを生成できさえすれば、そのデザインを評価する仕組みをもって生成モデルを洗練できるため、まずは生成手段の探索が必要となる。
一般的にGAN(※2)による生成では、人物の顔などのデータ量が豊富な場合は確度の高い生成ができるものの、こと消費財パッケージに関しては同じジャンルの商品群では数千種類しかなく、学習データの観点から高品質な画像生成は困難である。そこで本稿では、パッケージデザインをより細かく分解して情報量を削減することで、より精度の高いデザインを生成できないか、検討を進めることとした。
パッケージデザイン生成をするために有効な特徴量の探索
パッケージには様々な情報が内在しており、たとえば形状や背景、ブランド名、説明文などがあるが、これらは数値化することができる。数値化できるならばAIでもデザインパーツの特徴を学習することは可能であり、パッケージデザインを生成する際の一助となるであろう。
図表1では商品画像からデザインパーツを機械的に分離し、それぞれの色や位置の情報を抽出したイメージを示している。
パッケージ全体で特徴を捉えるのに対して、分割して特徴を抽出するほうがより情報の純度が高くなるため、違和感のないデザイン生成につなげられる可能性があると考えている。本稿では、この手法を用いてデータ収集を行い、AIによるパッケージデザイン生成を試みたプロセスを紹介していこう。