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事業成長の壁を超える、顧客戦略(WHO&WHAT)とカスタマーダイナミクス:西口一希氏講演レポート

顧客を見極めるセグメンテーション

 3つの問題を回避し、マーケターが事業成長に貢献していくにはどうすればよいのか。西口氏は自身が考案したフレームワークとその取り入れ方について解説した。

 はじめに行うのは、顧客を適切にセグメント分けすることだ。セグメンテーションはマーケティングにおける重要事項であり、様々な手法が開発されているが、西口氏が提唱しているのは、5segs(顧客ピラミッド:図表2)と、それに次回購買意向(NPI:Next Purchase Intention)を加えた9segsである。

図表2 最小限の分類 5segs(顧客ピラミッド)(クリック/タップで拡大)
図表2 最小限の分類 5segs(顧客ピラミッド)(クリック/タップで拡大)

 5segsでは、顧客を、ロイヤル顧客、一般顧客、離反顧客、認知・未購買顧客、未認知顧客の5つに分類する。最低限のセグメンテーションが可能で、現在のビジネス状況も成長ポテンシャルも可視化できる。併せて、“この三角形の100%シェアは何人か”を考えることも忘れてはいけない。

 「顧客ピラミッドの作成をお願いすると、ほとんどの企業で、経営者と現場、部署間で認識している数字にずれがあることが発覚します。マーケット全体を捉える一貫性がなくなってしまっているのですね」(西口氏)

 これにNPIを加えた9segsまで分類できると、すべての施策を定量的に振り返れるようになる。なおNPIの事業成長の先行指標としての有効性は調査で明らかになっており、具体的には、認知や好感度、NPSと比べて、金額シェアと数量シェアの双方に対して高い相関が得られている(参考記事)。

顧客の心理と行動を変える「アイデア」

 セグメント分けができたら、次は顧客の心理と行動を変え、より上位のセグメントに動いてもらう方法を考えていく。西口氏は、それを実現するのは「アイデア」であると述べる。アイデアという語は様々な意味合いで使われることがあるが、「便益と独自性の両方を兼ね備えている」というのが、西口氏の定義だ(図表3)。そしてその便益や独自性を認識するかどうかは、人によって異なる。アイデアとして成立しているか、価値があるかを判断するのは、事業主ではなく顧客なのだ

 「プロダクトやサービスそのものが価値を持つ、ということではありません。価値があるかどうかを判断するのはお客様です。私達事業主ができるのは、プロダクトやサービスを通じて、便益と独自性の組み合わせ、つまりアイデアを提供すること。そして、そのアイデアについて、『ぜひ入手したい』と価値を感じていただけるお客さんが誰なのかを洞察することだけなのです。このWHOとWHATを考えるというのが、私が提唱している顧客戦略です」(西口氏)

図表3 顧客心理を変え顧客行動を変える「アイデア」(クリック/タップで拡大)
図表3 顧客心理を変え顧客行動を変える「アイデア」(クリック/タップで拡大)

 この顧客戦略を突き詰めると、先述の「顧客心理のブラックボックス化」を解消することになる(図表4)。逆に顧客戦略がないままにデジタルマーケティングやテレビCM、PRといった施策に投資をしても、「当たるときには当たるけれど、当たらないときは当たらない」という再現性のない状況に陥ってしまう。

図表4 「顧客起点の経営改革」フレームワークと顧客戦略の関係(クリック/タップで拡大)
図表4 「顧客起点の経営改革」フレームワークと顧客戦略の関係(クリック/タップで拡大)

 顧客戦略を取り入れる上で重要なのは、「WHOとWHATの組み合わせは複数成立する」という認識を持つこと。一つの組み合わせでアプローチしてしまうのが、先に取り上げたマス思考だ。

 「自社のビジネスでは今どんなWHOとWHATの組み合わせが成立しているのか、そのうちのどれを重点的に伸ばしていきたいのか、これから成立させたい組み合わせは何なのかを、明確にしましょう。経営活動はすべて、その実現のために存在しています」(西口氏)

次のページ
議論の精度を高めるカスタマーダイナミクス(5segs版)

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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2023/04/21 11:11 https://markezine.jp/article/detail/38539

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