ライブコマースが改めて注目される理由
MarkeZine編集部(以下、MZ):最初に自己紹介をお願いいたします。
川田:私は主に「商品の販売などで接点を持った生活者とどう関係を構築していくか」というCRMの領域で企業に支援を行う部門のマネジメントを行っています。
恩地:私は動画施策を中心に、クリエイティブ制作に携わっています。昨年からはライブを用いたソリューションを推進するプロジェクトでマネージャーをしており、その一環としてライブコマースの取り組みを行っています。
MZ:本日はライブコマースをテーマにお話をうかがいます。改めて、施策の特徴と最近の傾向を教えていただけますか。
恩地:私たちアイレップは、ライブコマースを「ライブ配信を活用しながら、リアルタイムに視聴者の質問に答えたり、コメントを読んだりと、双方向でコミュニケーションをとりながら企業の商品やサービスの魅力を伝え、販売できる新しいEコマースの形」と捉えています。
ライブコマースが改めて注目されるようになったきっかけの一つが、コロナ禍による外出自粛です。実店舗に代わる新たな顧客接点として、ライブコマースを取り入れる企業が増えました。同時に生活者側にも、好きなインフルエンサーや芸能人のライブ配信とともに、ライブコマースを観る習慣が浸透しつつあるのだと思います。
川田:2020年にInstagramやFacebookにショップ機能が追加されたことも、ライブコマースの普及を後押ししました。一つのプラットフォーム上でコミュニケーションから購買まで完結できるようになった(日本ではcheckout機能は未実装)ことで、認知から購買、その後の関係構築にまで効果が期待できる施策として、使われるようになってきたのです。
新たな顧客接点としてのニーズが高まってきたことと、フルファネルでのアプローチが可能になったこと。当社ではこの2つの点からライブコマースに着目し、専門のプロジェクトを立ち上げて、ライブコマース事業を展開しています。
日本の生活者に馴染む使い方が見えてきた
MZ:ライブコマースは以前にも、その可能性に期待が集まった時期があったかと思います。現在の盛り上がりは、また違うものなのでしょうか?
川田:そうですね。2017年頃にも一度、注目されたことがありましたが、現在とは用途や考え方に違いがあると考えています。
2017年頃は、中国をはじめとするアジア圏での使われ方が、そのまま日本でも広まると考えられていました。中国では当時から、インフルエンサーを起用してライブコマースを行うと、爆発的な売り上げが生まれていたのです。日本でもこのやり方をそのまま取り入れるようとする動きがあったのですが、日本のSNSユーザーはPR情報を遠ざける傾向があり、あまり定着しませんでした。
これに対し、現在は、イベントではなく接客の代わりとして使われることが増えていて、私たちも、CRM施策の一環と位置付けることをお勧めしています(図表1)。この使い方は、SNSを“コミュニケーションツール”として使う日本のユーザーと相性が良いのだと思います。
MZ:試行錯誤の期間を経て、日本の購買行動やコミュニケーション文化に馴染む使い方が見えてきたところなのですね。
恩地:はい。一度接点を持った生活者との関係を強化するという位置付けで、ライブコマースを活用している企業も増えています。