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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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アイレップと探るライブコマース最前線(AD)

数年前の使われ方とは違う!令和のライブコマースは「デジタル上の接客」「CRMの一環」の価値を持つ

 デジタル上の新たな顧客接点として、改めて注目が集まっているライブコマース。コロナ禍の外出自粛などが影響し、生活者にとってライブ配信がより身近なものになっていること、SNSプラットフォームに購買機能が拡充されたことなどから、参入する企業が増えている。使い方にも変化が起きており、導入が始まった2017年頃と比べ、より日本のSNSユーザーに馴染む「双方向型のコミュニケーション」を重視し、成功する企業が出ているそうだ。ライブコマースの現在地について、支援を行うアイレップの2名に聞いた。

ライブコマースが改めて注目される理由

MarkeZine編集部(以下、MZ):最初に自己紹介をお願いいたします。

川田:私は主に「商品の販売などで接点を持った生活者とどう関係を構築していくか」というCRMの領域で企業に支援を行う部門のマネジメントを行っています。

恩地:私は動画施策を中心に、クリエイティブ制作に携わっています。昨年からはライブを用いたソリューションを推進するプロジェクトでマネージャーをしており、その一環としてライブコマースの取り組みを行っています。

株式会社アイレップ プランニング&クリエイティブUnit インタラクティブデザインDivisionクリエイティブ・プロデューサー 兼 ライブ系ソリューション推進チーム「TAKE ZERO」プロジェクトマネージャー  恩地 紗代子氏
株式会社アイレップ プランニング&クリエイティブUnit インタラクティブデザインDivision
クリエイティブ・プロデューサー 兼 ライブ系ソリューション推進チーム「TAKE ZERO」プロジェクトマネージャー
恩地 紗代子氏

MZ:本日はライブコマースをテーマにお話をうかがいます。改めて、施策の特徴と最近の傾向を教えていただけますか。

恩地:私たちアイレップは、ライブコマースを「ライブ配信を活用しながら、リアルタイムに視聴者の質問に答えたり、コメントを読んだりと、双方向でコミュニケーションをとりながら企業の商品やサービスの魅力を伝え、販売できる新しいEコマースの形」と捉えています。

 ライブコマースが改めて注目されるようになったきっかけの一つが、コロナ禍による外出自粛です。実店舗に代わる新たな顧客接点として、ライブコマースを取り入れる企業が増えました。同時に生活者側にも、好きなインフルエンサーや芸能人のライブ配信とともに、ライブコマースを観る習慣が浸透しつつあるのだと思います。

川田:2020年にInstagramやFacebookにショップ機能が追加されたことも、ライブコマースの普及を後押ししました。一つのプラットフォーム上でコミュニケーションから購買まで完結できるようになった(日本ではcheckout機能は未実装)ことで、認知から購買、その後の関係構築にまで効果が期待できる施策として、使われるようになってきたのです。

 新たな顧客接点としてのニーズが高まってきたことと、フルファネルでのアプローチが可能になったこと。当社ではこの2つの点からライブコマースに着目し、専門のプロジェクトを立ち上げて、ライブコマース事業を展開しています。

株式会社アイレップ ソリューションビジネスUnit カスタマーリレーションDivision カスタマーリレーショングループ グループリーダー 川田 麻由佳氏
株式会社アイレップ ソリューションビジネスUnit
カスタマーリレーションDivision カスタマーリレーショングループ グループリーダー 川田 麻由佳氏

日本の生活者に馴染む使い方が見えてきた

MZ:ライブコマースは以前にも、その可能性に期待が集まった時期があったかと思います。現在の盛り上がりは、また違うものなのでしょうか?

川田:そうですね。2017年頃にも一度、注目されたことがありましたが、現在とは用途や考え方に違いがあると考えています。

 2017年頃は、中国をはじめとするアジア圏での使われ方が、そのまま日本でも広まると考えられていました。中国では当時から、インフルエンサーを起用してライブコマースを行うと、爆発的な売り上げが生まれていたのです。日本でもこのやり方をそのまま取り入れるようとする動きがあったのですが、日本のSNSユーザーはPR情報を遠ざける傾向があり、あまり定着しませんでした。

 これに対し、現在は、イベントではなく接客の代わりとして使われることが増えていて、私たちも、CRM施策の一環と位置付けることをお勧めしています(図表1)。この使い方は、SNSを“コミュニケーションツール”として使う日本のユーザーと相性が良いのだと思います。

図表1 アイレップによるチャネル/タッチポイントの整理【クリック・タップで拡大】(ライブコマースは購入、リピート化、クロスセル・アップセルに寄与する)
図表1 アイレップによるチャネル/タッチポイントの整理【クリック・タップで拡大】
(ライブコマースは購入、リピート化、クロスセル・アップセルに寄与する)

MZ:試行錯誤の期間を経て、日本の購買行動やコミュニケーション文化に馴染む使い方が見えてきたところなのですね。

恩地:はい。一度接点を持った生活者との関係を強化するという位置付けで、ライブコマースを活用している企業も増えています。

配信のクオリティを高める、キャスティングと事前準備のコツ

MZ:次にキャスティングについてうかがいます。実際にライブコマースを取り入れようとしたとき、「誰に出演してもらうのか」は大きな悩みだと思いますが、なにかポイントはあるのでしょうか?

恩地:私たちはライブコマースに特化した人材を「コマーサー※1」と名付け、ゆうこす(菅本裕子)さんがファウンダーを務めるライバー事務所「株式会社321」と協業しながら、コマーサーの育成プログラムを運営しています。その中で見えてきた、重要な要素をご紹介したいと思います。

 キャスティングについては、プロコマーサーインハウスコマーサーという2つの軸で考えることができます。プロコマーサーはゆうこすさんのような、ライブコマースのスキルを持ったプロフェッショナルを指します。プロコマーサーには芸能人やインフルエンサーといった方々も多いですが、それぞれ得意な分野を持っているため、企業はフォロワー数だけでキャスティングするのではなく、相性の良いコマーサーを見極めることが重要です。

 一方のインハウスコマーサーは、社員さん自らがコマーサーとなる場合の呼称です。社員の方々に配信手法を学んでいただき、自社で運営できる体制を作ります。

※1 アイレップが定義する人材の概念。リアルタイムにユーザーの質問やコメントに応えながら商品・サービスを自身の言葉で伝えるライブコマースに特化した配信者を指す。

MZ:それぞれ、どんな目的で取り入れていけば良いのでしょうか。

恩地:ライブコマースを「イベント」として設計するのか、「コミュニティ」として設計するのかによって、使い分けると良いと思います

 イベントとして配信する場合、プロコマーサーのキャスティングは話題を生み、“推し”の文脈からも消費を促せることが強みになります。一方、コミュニティ寄りの設計の場合、継続的な配信が重要ですので、毎回プロコマーサーをキャスティングするのはコスト面で現実的ではありません。

 先ほど川田から中国の例を紹介しましたが、日本でイベント型のライブコマースを行う場合も、工夫次第で高い効果を上げることができます。たとえば、日ごろからインハウスコマーサーが継続しているライブコマースの間に、プロコマーサーの回を仕込んで「来週はあの人が来るから、見てくださいね!」と熱を高めていくと、当日大きく盛り上がります。

成功企業は「双方向性」「生の声」を活かしている

MZ:プロ・インハウス問わず、コマーサーにはどういったスキルが重要なのでしょうか?

恩地:「双方向のコミュニケーションを行えるかどうか」が大切です。イベントの文脈が強かった2017年頃のライブコマースではあまり注目されない要素でしたが、最近成功している企業を見ていると、視聴者のコメントを読み上げ、それに答える形で商品を紹介したり、ヒアリングした視聴者の声を商品開発に反映したりと、活発にコミュニケーションしているケースが多くみられます。

 現在のライブコマースはデジタル上の接客であり、生活者は、ライブコマースを行う「コマーサー」に対して、実店舗のスタッフと同じようなコミュニケーションを求めています。やり取りを通じて生活者とのつながりを強化し、コミュニティ的な価値を高めている企業も多いです。

川田:ライブであることを活かして、商品に対する熱量や愛着、真剣さを伝えていくことも大切です。自社商品をよく知っているインハウスコマーサーは、ここに強みがありますね。

 一方プロコマーサーも、商品理解の深さや商品に熱意の必要性を強く感じており、たとえばゆうこすさんは、商品情報をインプットしたり、ご自身で使用感を試したり、といった事前準備に時間をかけられています。企業側も、商品の詳細やこだわりを、事前にしっかりと伝えておくことをお勧めします

恩地:また、ライブコマースはスマートフォンからの視聴が多いため、デバイス上のあらゆるコンテンツが競合となります。可処分時間の奪い合いの中で生活者に視聴してもらうためには、ライブコマースのコンテンツとしての価値を高めていくことが必要になります。

ライブコマースの価値を最大化するために

MZ:ライブコマースを始める際、気をつけたほうがよいことはありますか?

川田:ライブコマースの良さを最大限発揮するため必要なのは、現場の方がある程度権限を持って進められる体制を作ること、上層部の方が現場の方々を信頼することだと思います。

恩地:ライブコマースの許可が下りても、台本を制作し、一言一句その通りに読み上げることになってしまうようなことになっては、せっかくのライブコマースの魅力がなくなってしまいます。ライブコマースは、コマーサーの「生の声」で伝えることが価値につながります。編集のできない生放送で視聴者からの質問にしっかりと答え、コミュニケーションを交わしていく。ライブだからこそ伝えられる熱量によって、企業と生活者との間に信頼関係が構築されていくんです。

川田:現在ライブコマースで成功事例として出されているのは、比較的規模の小さいD2C企業が多いのですが、規模が大きくても柔軟に対応できる体制をとっている企業は、しっかりと結果を出しています

 たとえば、ある企業では自社のアプリにライブコマース機能を追加し生活者とのタッチポイントを増加させています。また別の企業では継続してライブコマースを行ったことでLTVが増加しています。最低限のルールを決めた上で、現場の方々が判断しながら進めることができるカルチャーが形成されていると、スムーズに立ち上がりやすいのではないかと思います。

市場はさらに伸びていく

MZ:最後に、ライブコマースに興味を持っている企業に対して、メッセージをお願いいたします。

川田:ライブコマースの市場は、日本でもさらに成長していくと見ています。米国の投資会社「ARK Invest」の調査(ダウンロードページ)では、ソーシャルコマースがオンラインショッピングの“次の波”として取り上げられています。グローバルにおけるソーシャルコマースの商品総価値(GMV※2)は、今後5年間で年複利41%で成長し、3兆7,000億ドルに達すると予想されています。また2026年までに、Eコマース全体におけるソーシャルコマースの割合は、10%未満から22%へと2倍以上に増加すると言われています。このソーシャルコマースの一領域として、ライブコマースも伸びていくと考えられます。

※2 Gross Merchandise Valueの略で、そのマーケットやプラットフォームで消費者が購入した商品の売上の合計額、流通取引総額のこと。

 当社はこれまで多くの企業のライブコマース支援実績があり、その配信データを分析することで、コンバージョンに寄与する要素は何かを分析し、支援に活かしています。また、ライブコマース周辺の施策や、チャネルやタッチポイント全体の設計など、総合的な面でサポートできるのも、私たちの強みです。もちろん、どのプラットフォームを使うと良いか、キャスティングをどうするか、コンテンツの企画や話し方といった実践面も、サポートさせていただきます。

恩地:私たちはライブコマースを日々研究しており、その最先端を走っているという自負を持っています。ライブコマースについて理解を深めるための書籍やセミナーといったコンテンツも、積極的に提供しています。ライブコマースに挑戦される際は、これらを参考にしていただければ幸いです。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/01 13:40 https://markezine.jp/article/detail/38557