※本記事は、2022年3月25日刊行の定期誌『MarkeZine』75号に掲載したものです。
クライアントからマーケティング責任者のオファー
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ代表取締役社長/
株式会社IDOM CaaS Technology 取締役 マーケティング責任者
菅 恭一(すが・きょういち)氏総合広告代理店にてデジタルマーケティング組織を起案し伝統的な広告代理店業務のデジタルシフトを推進した後、2015年4月、デジタル時代のマーケティングプロデューサー集団、ベストインクラスプロデューサーズを創業。1.マーケティング戦略プランニング、2.データ活用戦略の策定、3.専門性をつなぐチームビルディングの3つのアプローチから、クライアントのマーケティング活動の実行プロセス設計とマネジメントを支援している。2020年10月より、CaaS領域のスタートアップ企業、IDOM CaaS Technologyの取締役マーケティング責任者を兼務。
——菅さんは2020年10月より、ICTのマーケティング責任者も兼務されていますが、どのような経緯があったのでしょうか。
ICTは、親会社であるIDOMがそれまで手がけていた車のサブスクリプションサービス「NOREL」や、個人間カーシェアリングサービス「GO2GO」など、サービスとしてのクルマ(Car as a Service)の領域を垂直に立ち上げるために分社化した戦略子会社です。2020年4月に分社化し、10月に経営陣を新たに本格始動するタイミングで私にお声がけをいただきました。
私がICTにジョインしたのは、元々IDOMのマーケティング支援を行っていたのがきっかけでした。2015年4月にBICPを創業してすぐのタイミングで、IDOMから、「オンライン接客サービスの戦略とCXの設計に関してサポートしてほしい」と依頼があり、そこから長きにわたりIDOMとプロジェクトを進めてきました。
そして、その窓口をしてくれていたのが、現在ICTの代表取締役社長を務める山畑直樹さんでした。山畑さんは、IDOMの新規事業開発で数々の実績を上げてこられた方で、ICTを設立するタイミングで経営陣に一人マーケターを入れたいと考えていて、私に声がかかりました。
——元々クライアントとして支援していたときの実績と信頼が、ICTのマーケティング責任者の就任につながっているんですね。
親会社であるIDOMの社長も含むICTの取締役陣とも、過去のプロジェクトで面識があり、関係構築もできていたので、私が入ることに関する違和感がそこまでなかったのだと考えています。
事業会社と支援会社で共通している点は?
——現在は事業会社のマーケティング責任者、支援会社の代表取締役社長という2つの顔をお持ちですが、それぞれで共通しているマインドやスキルはありますか。
共通しているのは、社会のコンテキストを読み取ること、テクノロジーやサービスの最新動向をキャッチアップすること、そして生活者のインサイトに立つことです。特に3つ目の生活者のインサイトに立つことが一番重要で、どのようなビジネス・事業であっても最終的に生活者の視点になったときに違和感がないかを振り返るようにしています。
クライアントの支援に携わっていると、たとえばメーカーであれば様々な研究成果、開発技術、工夫を凝らして素晴らしい製品を作っているので、どうしても製品の優れたポイントや開発の思想を伝えたいと考えがちです。悪いことではありませんが、それはお客様が本当に求めている価値なのか、実際にどのようなインサイトを捉えたものになっているかの思考が欠けてしまうのはもったいないと思います。
そのため、事業会社の言いたいことが先行しがちな部分をお客様視点に戻すことを、BICPでもICTでも意識的に行っています。これはマインドセットの話だけではなく、世の中のコンテキストを整理する手法やインサイトを発見する手法など、マーケティングのプロフェッショナルとして活かせるスキルはフル活用しています。