事業会社のマーケターに必要なのは、他部署を巻き込みやりきる力
——共通点を聞いてきましたが、反対に事業会社と支援会社のマーケターが個別に持っておくべきスキル・マインドはありますか。
事業会社のマーケターには、他部署を巻き込んでプロジェクトをやりきる力が求められると思います。私もBICPの立場でクライアントに対して戦略から4Pの方針、実行計画の策定を支援しています。そして4Pのうち、プロモーションに関しては広告代理店などのパートナー企業で実行可能ですが、それ以外の製品、価格、売り場の具体化のプロセスは、社内外の調整も含めて事業会社のマーケターでなければ対応できない部分が多いです。メーカーの商品を店舗で取り扱ってもらうための流通対策を、社内の営業と連携して行う必要がある場合、支援会社の立場でそこまで踏み込むことは難しいですから。
また、事業会社のマーケターは製品・サービスの開発、営業に関してまで関与できるのが醍醐味だと思うので、他部署に積極的にコラボレーションしていくマインドが求められているとも思います。
そして、ICTのマーケティング責任者をしていて感じるのは、事業規模の大きさによっても、求められるマインドやスキルが変わってくることです。ICTはIDOMの社内新規事業を開発していた部署が分社化して設立された子会社で、本体のP/Lからも切り離して独自で資金調達を行っています。スタートアップに近い環境のため、マーケティングの予算もまだ潤沢ではないですし、その中でスピード感を持って成長し続けなければなりません。
BICPでは大手企業を中心に支援してきたため、プロジェクトの期間が半年以上に及ぶことがほとんどですが、スタートアップの場合それを短期間で行わないといけません。そして、常に修正できる柔軟性が求められます。また、成功体験も少ないので成功確度が高いプロセスや方法を発見して形式知化し、組織の誰もが実行できる型に落とし込んでいく必要があります。そのため事業会社のマーケターは、企業規模によっても求められるマインドとスキルセットが異なってくると思います。
支援会社のマーケターは、クライアントに限りなく近い立場に立つ
——支援会社のマーケターが持っておきたいスキル・マインドに関してはいかがでしょうか。
クライアントに限りなく近い目線で、マーケターとしての独立性を担保しようとするマインドが重要だと思っていますし、BICPはそこに注力しています。私がBICPを立ち上げたのも、旧来の広告代理店のコミッション制(手数料)では、広告媒体費を積み上げないと収益が上がらず、“広告を売る”というクライアントとは異なるKPIの引力によって、ニュートラルな支援が難しくなると考えた背景があります。
そして、クライアントサイドに立つためには、事業会社の環境を理解することが必要です。大手企業であれば社内政治の話も入ってきて、社内での合意形成のプロセスや、忖度などから研いだ戦略が丸くなったり、生活者視点がいつのまにか売り手視点に変わったりしてしまう。そのような状況を理解しながら、結果を出すための粘り強い伴走が求められると思います。
——菅さんは今後のキャリアに関してどのような目標を持っているのでしょうか。
BICPでは「マーケティングの力で人生を楽しめる人を増やす」のビジョンのもと、マーケティング思考というコアコンピタンスを大手企業中心に提供してきました。そして今後は、マーケティング予算が十分ではないスタートアップや自治体、中小企業への支援に取り組み、新しい価値を世の中に提案することで、より幸せで満たされた企業と働き手、喜ぶ生活者を増やしていきたいです。
そのためにも、マーケティング思考力をよりレベルの高いものにし、クライアントに常駐してもスキル、マインドともに力を発揮できるメンバーを増やしていきたいです。私がICTのマーケティング責任者を兼務するように、様々な企業のマーケティング責任者や担当者を兼務して結果を出せる人材を育てたいと考えています。