ルールに基づく効果測定が抱える意外な“穴”とは
広告を含む様々なマーケティング施策を正しく評価するために、現在デジタルマーケティングを実施するほとんどの企業はMMP(Mobile Measurement Partner)などの「アトリビューションソリューション」を導入しています。昨今は技術の急速な進化により「効果を追えないマーケティング施策はほとんど存在しない」と言っても良いほどにアトリビューションソリューションは浸透。マーケターはその分析結果を大きく信頼しています。

アトリビューションソリューションが分析を行う方法論またはその基準を一般的に「アトリビューションモデル」と呼びますが、現在最も主流になっているモデルは「ラストタッチアトリビューションモデル」です。ラストタッチアトリビューションモデルとは、コンバージョンに至ったユーザーに“最後に広告を提示した”チャネルがアプリインストールや売上などの成果に貢献したと考える仕組みのことです。
ラストタッチアトリビューションモデルは、ユーザーが自社のサービスを利用するまでの複雑な仕組みの中でも「どのマーケティング施策が結果に影響を与えたのか」を必ず導き出すことが可能です。明確なルールが存在するため適用しやすく、特にアプリマーケティングの世界においてはアトリビューション計測の主流モデルとして採用されています。しかしこのモデルには、広告に対する正しい評価が行えなくなる“穴”があるのです。
例外ルールによって変わるラストタッチ
前述したように、ラストタッチアトリビューションモデルはルールに基づいて成果への貢献度を測る仕組みです。基本的にはコンバージョンの直前にユーザーが接した広告の貢献度を「100%」と判断するモデルなのですが、中には例外ルールもあり、この例外ルールが穴であると言えます。
たとえばアプリ事業者Aが広告配信事業者Bを通じ、複数のチャネルに広告を出稿したとしましょう。SNSに配信されたAの動画広告を“視聴した”ユーザーが、その後自動車専門サイトに表示されたAの広告を“クリック”し、そのままアプリをインストールした場合、ラストタッチアトリビューションモデルのルールでは「自動車専門サイトの広告からコンバージョンが発生した」と判断できるはずです。
しかしインターネット広告の世界には「間接反応(広告ビュー)より直接反応(広告クリック)の方が高い影響度を持つ」「フィンガープリント(ユーザーを特定する情報群)より広告IDの方が高精度」という考え方が定着しています。この考え方により、ラストタッチアトリビューションモデルでは例外的にルールが変わるのです。
先ほどの例に戻りましょう。自動車専門サイト、いわゆるWebサイトではシステムの環境上ユーザー端末の広告IDが取得できないため、フィンガープリントによる識別を行います。一方のSNS広告は、アプリ内でユーザーの広告IDが取得可能です。多くのアトリビューションソリューションでは例外ルールに基づき後者の精度の方が高い、すなわち価値があると見なすため「SNS広告がコンバージョンを上げた」という判定になるのです。
