「スーツに似合う腕時計」などのワード提案で検索を促す
MZ:カシオのサイトは、ECや商品閲覧機能以外に、サポートも役割だとおっしゃいました。「Yext Answers」は商品検索以外にも生かせますが、現在取り組んでいる策などはありますか?
石附:まさに今、FAQや取扱説明書のデータを読み込ませて、サポート目的で来訪した方が検索した場合にも適した情報が出てくるように、整備している最中です。また、サイトリニューアルを機に、グローバルでドメインを統一し、ローカライズするよう整備しました。Yextが言語対応をしている国には基本的にYextへの入れ替えを進め、グローバルでのサイト体験の向上にも注力しています。
加えて、顧客に自ら検索情報を入力してもらうだけでなく、こちらから「こんな検索をしてみてはどうですか」という提案をし始めています。たとえば「自分だけのG-SHOCKをオーダーしよう」「スーツに似合う腕時計」などの文言を、検索欄に出るようにしているのです。
MZ:それはおもしろいですね。こうなっていると、調べたいものがある人以外でも、検索をしてみる動機になります。
石附:はい。我々から、ライフスタイルに合わせた情報や商品を提案できることは、非常に魅力的で価値があると感じています。型番やデザインによる選ぶ方もある一方、シーンを切り口にした検索も、顧客への新しい価値提案につながると思います。
サイト内検索は、完全なGoogle検索やInstagram検索の代替になるわけではないと思います。ただ、当社の場合はG-SHOCKの根強いファンがいらっしゃり、定期的に訪れる方も一定の数になっています。その方々は、目的を持って来るというより「何か新しいものを見たい」意識があるので、我々からの提案がより効果的だと考えています。
期待以上の商品に出会っていただいたり、目的の買い物よりもいい選択ができたと思っていただけたりすると素晴らしいなと。それこそ、予想以上の体験だと思っています。
「楽しいから」「発見があるから」来てもらえるサイトを目指して
MZ:Yext検索の運用を通して、どのような気付きがありましたか? 想定以上だったことなどあればお教えください。
石附:当初は顧客の不満や離反の防止の目的が強かったのですが、思った以上にプラスの成果が現れているのは意外でした。たまたま目当てではない商品にランディングした顧客が、その後にまた検索を通してたどり着いた商品ページで非常に高いコンバージョンを上げているケースが目立っているのです。今までなら、最初のランディングで離反していたと思います。
全体として検索が期待通りに機能していると、このように顧客体験の底上げにもなるのだと実感しました。
MZ:以前なら機会損失していたところ、リカバリーしているのですね。では、今まさに見えつつある可能性や、これから取り組みたいことは?
石附:先ほどの話にも通じますが、欲しい情報を得るのは当然として、検索を通して予想もしていなかったいい出会いがあるとうれしいですよね。今、デジタル領域でいかにセレンディピティを創出するかというテーマが掘り下げられつつありますが、リニューアルしたサイトでは、そんな検索体験を提供できるのではないかと思っています。
併せて先ほどお話しした、グローバルでサイト体験の向上に取り組んで、ワン・プラットフォームとしてのWebサイト運用を進めていきます。当然、そのUI/UXなども改善しますが、ワン・プラットフォームで得られるデータの活用も掘り下げて、顧客への次の提案に生かしたいです。
ひいては、カシオのサイトが情報を得るだけでなく「楽しいから来る」「発見があるから来る」ような存在になれればと思っています。世の中にまだない価値を創造し、貢献してきた我々なので、Webサイトもそんな役割を担えるよう引き続き注力していきます。