ナイキCEOとの対談 コロナ禍で5ヵ年変革を2年に短縮して実行
基調講演には、ナイキ、プラダ、レアルマドリード、Walgreens Boots Allianceの幹部、俳優、脚本家、そしてマーケティング企業Maximum Effortを立ち上げるなど起業家としても知られるRyan Reynolds氏が登場した。本稿では、ナイキ、プラダ、レアルマドリードから登場したゲストによるトークをピックアップして紹介する。
ナイキのCEO John Danahoe氏は、Narayen氏と対談し、コロナ禍でのスポーツを振り返った。

2020年2~3月、新型コロナウイルスの感染拡大により主要なスポーツ大会は中止となった。また、当初は小売店も閉鎖されたため、ナイキの戦略も変更を迫られた。「5年かかると思っていた変革期間が2年に短縮された」とDanahoe氏。「Consumer Direct Offence」として進めていた消費者と直接繋がるための戦略を「Consumer Direct Acceleration」に変更して加速させた。それを支えたのがAdobeのテクノロジーだ。マーケティング部門、データ部門がAdobeのプラットフォームを利用して顧客のインサイトを得ているという。
一方、Danahoe氏は、「デジタルをやろうと思ってデジタル化を進めているのではない」とも述べる。「ナイキが見ているのは消費者。消費者が望んでいることはシームレス、プレミアム、パーソナライズされた体験であり、その期待はますます高まっている。それを実現するのがデジタルだ」(Danahoe氏)
また、ナイキでは、デザインのクリエイティブにおいてもデジタルを利用しているとのこと。やはり、消費者視点でデザインを制作する際、デジタル対応は重要であると述べる。「ナイキの中核となる強みは、素晴らしいプロダクトデザイン。Adobeは商品デザイナーやクリエイターの作業を自動化してくれるので、本来やるべき仕事に多くの時間を割くことができる」とDanahoe氏。
目下の話題であるメタバースについては、「スニーカーのNFTを作成すれば、スニーカーコミュニティ間で取引が広がるだろう」と述べ、ここでもAdobeのテクノロジーに期待を寄せた。

プラダ「パーソナライゼーションなしにラグジュアリーはない」
プラダ グループは、プラダをはじめとする5つのラグジュアリーブランドを抱え、世界70ヵ国以上でビジネスを展開、店舗数は600以上に及ぶ。
同社でグループマーケティングディレクター兼CSRトップを強めるLorenzo Bertelli氏によると、グループコミュニケーション戦略では、自分たちのブランドと中核となるアイデンティティ、DNAに忠実であることに加え、デジタルテクノロジーを活用して顧客を中心とした対話を進めることを大切にしているという。
そのデジタル戦略で、プラダはAdobe Experience Cloudの多数のツールを利用している。「店舗はカスタマージャーニーの重要な構成要素であり、店舗スタッフが直接クライアントのポートフォリオにアクセスできるようにしている」とBertelli氏。このようなデジタル変革の取り組みは、ビジネス全体にポジティブな影響を与えているとのこと。「2021年の売り上げの30%が、デジタルを活用した店舗スタッフのやり取りと体験の影響を受けていた」ことを共有した。また、「Adobe TargetのAIを使用したレコメンデーションは、パーソナライズなしの場合と比較すると、エンゲージメントが50%向上している」と成果も報告した。
「今後も顧客ニーズを中心に据えたデジタルロードマップを進める」とBertelli氏。さらに、「パーソナライゼーションなしにラグジュアリーはない」と断言した。

レアルマドリード、世界6億人のサポーターとの関係性構築に向けて
120周年を迎えるスペインの名門サッカーチーム「Real Madrid C.F.(以下、レアルマドリード)」は、スペインだけでなく世界に6億人のサポーターを抱える。6億人との関係構築という壮大なミッションに向け、Adobe Experience Cloudを選んだ。
「オンラインだけでなくオフライン環境も重要。マルチチャネル、オムニチャネルのアプローチが必要」というのは、レアルマドリードで最高トランスフォーメーション責任者を務めるMichael Sutherland氏だ。
レアルマドリードでは、Adobe Real-Time CDPを用いてファンのインサイトを集め、さまざまなチャネルでその情報を活用しているという。ロイヤルティプログラム「Madridista」に登録するファンだけでなく、小売店やオンラインストアの訪問者、アプリユーザーについても、より良い体験を提供したいとSutherland氏。Adobe Real-Time CDPは、「取り込んだデータをもとにすぐに行動できるリアルタイム性が気に入っている」とコメントした。
さらに、新しいテクノロジーの活用にも積極的だ。先のチャンピオンズリーグ戦では、特定のファン層を選び、NFT化されたスマートチケットを発行するという新しい試みを実施。スマートチケットを受け取ったファンがゲートに近づくと、スキャンデータから到着したことを把握できるようにした。このように発生したイベントのデータを収集し、公式アプリ、スタジアムアプリなどの様々なデジタル接点を通じて、パーソナライズした体験を実現する。「これらは、エコシステム全体で繋がる体験を実現することを考えてのもの。このような機能を求めてAdobe Experience Platformを導入した」とSutherland氏は述べた。

