プロダクトを利用した瞬間「リトルハイア」を理解せよ
ジョブ理論には、人がプロダクトを初めて購入する瞬間である「ビッグハイア」(大きな雇用)、顧客がサービスを利用した瞬間である「リトルハイア」(小さな雇用)がある。松本氏は宿泊に関するカスタマージャーニーから説明した。
仕事のストレスから癒やされたいと思い、温泉旅館を予約する。当日、移動して旅館にチェックインして宿泊、そして帰宅となる。コンバージョンポイントは「予約」になるが、予約の前にはその旅館を選んだ理由があり、予約の後にも行動は続いている。帰宅した後に、よかったなと思えば、次に癒やされたい時に温泉に行こうと思い、結果的にLTVが高まることになる。
ここで「ビッグハイア」は予約した瞬間、「リトルハイア」は旅館に滞在した時間となる。ビッグハイアはPOS(Point of Sales)、リトルハイアはPOU(Point of Use)といえる。
「ビッグハイア=満足、ではない商品やサービスは多い。どのぐらいリトルハイアを捉えられているかを考える必要がある」と松本氏は提起する。消費者から選ばれるためには、選んでくれようとする人に対する解像度を上げ、どうすれば選んでもらえるのかを理解する必要がある、というわけだ。
「消費者を理解する」手法が競争優位にする
松本氏は消費者理解の必要性について、ニーズの枯渇という現在の市場の状況からも説明する。「消費者が既に言語化できているニーズや不満に対して、今の技術で解決できる部分については、もはやニーズが枯渇しています」と松本氏、その場合、消費者が気が付いていないニーズや不満を今の技術で解決するか、消費者が気が付いているニーズや不満を解決するために技術力を高めるかの選択になる。
その点からも、消費者理解に投資をする必要があるという。「消費者の解像度を高めて様々なチャンスに気が付く/発見することで、新たなビジネスチャンスを生み出すことができます」と松本氏は述べ、「消費者を理解するという手法自体が競争優位にする」との考えを示した。
消費者を理解した次にやることは何か。リサーチャーが消費者に質問や言葉を投げかけて、商品が買われない本当の理由を探る。つまり不満・未充足の欲求の発見だ。「その壁を乗り越えると、インサイト(ジョブ)の発見が待っている」と松本氏。
しかし重要なことはインサイト(ジョブ)の発見ではない。「インサイトを見つけた上で、我々がそのインサイトに合致する提供価値を見出すことが大事」と松本氏は強調する。