どのようなコミュニケーションが、多くのユーザの通知・共有の「オン」につながったのか?
前述の通りワッパー・デツアーは、キャンペーンの特性上、まずはスマホ端末のロケーション共有をオンにしないとキャンペーンに参加することができません。しかし世の中には煩わしいプッシュ通知を送ってくるアプリもあり、オフにしておきたいというユーザーも大勢います。本施策において、そのハードルはいかに突破されたのでしょうか?
皆さんが仮に同様のキャンペーンを行うとした際に、どのように訴求をするでしょうか。「こんなキャンペーンがスタートしますよ」と派手なクリエイティブで広告を出すという方法を取るかもしれません。タレントやキャラクターを使って訴えかけるかもしれません。
もちろんバーガーキングも広告は出していますが、その後のアプローチが違いました。当キャンペーンの趣旨を説明し、アプリをダウンロードしてもらいます。その後、下図のように「今回アンロックされるクーポンはこちらです。さらに、今後あなたにもたらされるクーポンには、こんな素敵なものがあります。なのでプッシュ通知をオンにして、ロケーション共有を許可してね(少し面倒でも)」というシンプルな訴求を行ったのです。

つまり
・バーガーキングにとって今回のワッパー・デツアーは一連のお祭りの一部でしかない
・今後はこんな素敵なお祭りがある
・そのお祭りの中の一つのクーポンをアンロックするので、今後のためにもロケーション情報や通知オンを積極的にしておいてほしい
という提案が行われたわけです。もちろんここで表示されている今後のキャンペーンやクーポンは、ユーザーが住んでいる地域で行われる内容に絞られています。
一方的な訴求ではなく、「あなたが受け取れる今後のメリット」がきっちりとパーソナライズ化して示されているのがポイントです。ここまで丁寧に提案を積み上げると、ユーザーも「通知をオンにする価値があるな」と思うでしょう。
これは「人間らしさ」の機能分類における「パーソナル」な側面を実現できていると言えます。むやみに情報を投げつけるのではなく、自分に必要な、価値のある情報を提供してくれると感じられるコミュニケーションが人々に受け入れられるのです。
しかし、バーガーキングの人間らしい仕掛けはまだ序の口です。引き続き、ユーザーがこのキャンペーンを通じてどんな体験をしたのか見ていきましょう。
体験の随所で感じられる「思いやり」
ワッパー・デツアーとその後のメリットを理解したユーザーは、実際のキャンペーンに参加します。「本当に1セントでワッパーを食べられるの?」とマクドナルドに近づいてみるわけです。実際に近づくと、スマホのロケーション機能を用いてクーポンが「アンロック」され、それぞれのユーザーにすぐさまプッシュ通知で解除されたことが伝えられます。ユーザーがその瞬間を撮影してTwitterやYouTubeに投稿するのはもちろん想定内でしょう。
さらに体験は続きます。クーポンがアンロックされたユーザーには直ちに、最寄りのバーガーキングまでの地図と道案内が表示されます。

間髪を入れずに、近くのお店に行くための最短ルートを教えるコミュニケーションに突入するわけです。前回の調査にもあった通り、このモバイル時代において、人々は企業サービスが自分の時間を節約してくれることを願っています。バーガーキングは文字通り、時間節約のための最短のルートを示したわけです。
これは「人間らしさ」の機能分類における「思いやり」にあたると筆者は考えます。この体験をしたユーザーはきっと「バーガーキングは気の利く、丁寧なコミュニケーションを取るブランドだな」と感じることでしょう。
さて、ユーザーはバーガーキングに向けて移動をし始めました。そこからさらなる仕掛けが用意されています。
思いやりある訴求で、モバイルオーダー体験の壁も突破
お店への移動を始めたユーザーには、次の体験が待っています。そうです、メニューを選ぶという体験です。マクドナルドからバーガーキングに、マップを頼りに移動を開始したユーザーには、店舗に到着する前に「事前にメニューを選ぶと並ばずに受け取れますよ」と、モバイルオーダーを済ませるメリットが案内されます。

補足をすると、バーガーキングは「直火焼き」にこだわりを持っています。じっくり丁寧に調理をするこだわりがあるので、当然できあがるまでに時間がかかります。だからこそ「事前にオーダーしてね」という訴求が重要なのです。
また、「今後もモバイルオーダーを使うと便利」ということを、実際にユーザーに体験してもらうきっかけにもなります。O2Oにおける初回利用の壁をあっという間に突破させたわけです。ユーザーがメニューを選ぶと、下図のように、実際に1セントでモバイルオーダーが始まります。もちろんサイドオプションの追加もここでオススメされます。

モバイルオーダーの割合が増えることは、店頭のオーダー担当の人件費の削減につながります。バーガーキングはここまで狙って設計していたのです。
これも「人間らしさ」における「思いやり」の項目にあたるでしょう。都合の良いときに、自分に必要なモバイルオーダーが提案されたわけです。
リアルタイム性、パーソナライズ性にも注目
一連の施策にはハイライトするべきポイントが他にもあります。それはコミュニケーションが「いつ」行われたのかです。
ご存知の通り、マクドナルドはオーダーしてからできあがるまでがとても素早いサービスです。もしもクーポンのアンロックや、近くの店舗への案内開始、メニュー案内が遅れてしまったらどうでしょうか。目の前にマクドナルドがある状態のユーザーはそのままマクドナルドに入店してしまうでしょう。それはこのキャンペーンで最も起きてはいけない事態です。そのためバーガーキングは、「リアルタイム」で「パーソナライズ」なコミュニケーションを確実かつ柔軟に行える環境を探しており、結果としてBrazeのテクノロジーを採用いただきました。
「人間らしさ」において最も重要な項目は、感情属性です。その中でも最も高い位置づけを占めていたのは「インタラクティブ」と感じられることです。本施策はすべてリアルタイムなインタラクションで構成されています。そのため、ユーザーは戸惑うことなく、また不信感を抱くことなく、スムーズに次々とシナリオを進めていくことができたのでしょう。
では最後に、本施策に参加したユーザーには、その後どのようなコミュニケーションが待っているのでしょうか?